表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
5章 プル・ソルシエール
73/383

注目の的

 学校の見学許可を得たハルトとループスはここで教鞭を振るっているらしいクラインという人物を探すことにした。各教室を回り、授業風景を見て回ったがここで問題があった。


 「クラインって奴がどんな人物なのか全然わからん」

 

 ハルトたちはクラインという人物の情報をほとんど何も持っていなかった。二人が知っているのはその人物がこの学校で教鞭を振るっているということだけであり、受け持つ授業どころか外見などの情報すらも知らなかった。これでは探そうにも探しようがない。


 どうしようもなくなったハルトたちはひとまず授業が終わるのを待ちながら校内を散策することにした。長い廊下を渡りながら様々な場所を見て回るがどこも授業中であり、立ち入れるような状態ではなかった。


 「懐かしいなぁ。俺たちもこういう風に授業受けてたっけか」 

 「そうだなぁ……」


 ハルトとループスは授業風景にどこかノスタルジーを感じていた。ループスより先に学校を抜けたハルトには特にそれが強く感じられた。


 一方、窓の外からこちらを覗き見るハルトとループスに気づいた生徒たちは驚きのあまり絶句し、視線を完全に其方に奪われた。何の前触れもなく動物の耳が付いた女性が廊下に現れればそうなるのも当然であった。


 「めっちゃ見られてるな」

 「当然だろ。俺だって初日はこうなったからな」


 戸惑うループスにハルトはさも当然のように投げかけた。彼女にとってはすでに何度も通って来た道である、ループスも慣れるのは時間の問題だろう程度にしか考えていなかった。


 授業風景を眺めていると生徒たちが思い思いに席を立ち始めた。どうやら座学の時間が終わったようである。

 となれば生徒たちのやることは一つである。彼らは一斉にハルトたちのところへと押し寄せてきた。首に提げられた見学許可証を見るなり次々と質問攻めを開始する。


 「お姉さんどこから来たんですか?」

 「えっ。ああ、隣町からかな」


 ループスは素性を悟られないように質問に答えた。ハルトにフォローを求めるものの、ハルトもそれどころではなかった。


 「ちっちゃくて可愛いねー」

 「うちで飼ってる犬みたーい」

 「うえぇ……」


 ハルトは女子生徒たちから大人気であった。女子生徒たちは男子生徒以上に遠慮がなく、ハルトはあちこちからベタベタと触られて押しつぶされそうになっていた。

 あれでは助けようにも助けられない。そう判断したループスはやむを得ずハルトを見殺しにして情報を探ることにした。


 「この学校にいるクラインという人物を探している。知っているか?」

 「あー、クライン先生ですか」

 「あの人は今日は授業持ってないよ」


 生徒たちからクラインは今日は授業を行っていないらしいことを知らされたループスはやや意気消沈した様子を見せた。しかしそれだけではめげずにその足取りを追おうと試みた。


 「どうすれば会えるか知らないか?」

 「それはわからないですね……あの人ってどこにいるのかよくわからないところありますから」

 「どうしても会いたいのであれば窓口の人に話を通して面会の約束を取り付けるのがいいと思いますよ」

 「そうか。そうしてみることにする」


 どうやらクラインは日頃の行動を生徒たちからは認知されていないようであった。闇雲に探し回るよりも約束を取り付けて顔を合わせる方が合理的だと判断したループスはそちらの手法を取ることにした。


 「ところであの子はお姉さんとどういう関係なんですか?」

 

 生徒はハルトの方を見ながらループスに踏み込んだ質問をした。ハルトは女子生徒からもてはやされて人形のように扱われていた。


 「おっ。これがいいのかぁ?」

 「にゃぁ……」

 「めっちゃ耳動いてるじゃん。やっぱ嬉しいんだ」

 「違うんだって。勝手に動いちまうんだよぉ……」


 ハルトは頭を撫でまわされて弱気になっていた。彼女には耳の近くを触られると反射的に耳をクルクルと動かしてしまう癖があった。

 女性生徒が相手と言えども、純粋な力が弱いハルトが体格で負けている相手に抵抗できる道理はなく、されるがままであった。


 「あー……あれは腐れ縁だ」


 目の前に生徒に対してそう答えたところで生徒たちはどこかへと移動を始めた。様子から察するにそろそろ次の授業が開始するようであった。

 偶然にも開放されたループスは廊下で伸びあがっているハルトの元へ歩み寄った。


 「散々な目に遭ったな」

 「なんで助けてくれないんだよ……」

 「だってあれじゃ助けようがないだろ」


 ハルトは耳を伏せて意気消沈してしまっていた。注目されるのは慣れっことはいえ、過剰なほどのスキンシップは何度経験しても苦手意識が抜けない。

 彼女ほどでないにしろ、大勢に囲まれることを経験したループスはハルトに同情せずにはいられなかった。


 「今日はクラインはここにいないそうだ。出直すぞ」

 

 ループスはハルトの状態も慮り、撤収を促した。今日はこれ以上の成果を得られることはなさそうであった。

 それに加えてここにいる時間が延びるとハルトが精神的にもたないのが明白であった。



 ハルトとループスは見学許可証を返却し、ついでにクラインとの面会の約束を取り付けて魔法学校を後にするのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ