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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
5章 プル・ソルシエール
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魔力と白熱化

 ループスの手にした魔法剣は自身の魔力を込めることにより岩をも容易く溶断するほどの熱を帯びることが判明した。しかしそこにもまだ不可解な要素があった。


 「あれ?何にも反応しねえな」


 ハルトが魔法剣を手にして自身の魔力を込めても剣は何も反応を示さなかったのである。どういうわけか剣はループスの魔力にしか反応を見せなかった。


 「なぜだ。俺がやればこんなに簡単に反応するのに」


 ループスが剣を手に取って魔力を込めると剣はやはり刃から白い輝きを放った。ハルトにだけ反応しないのか、それともループスにしか反応しないのか、いずれにせよハルトには魔法剣の真価を発揮することはできなかった。


 「むむむ……」


 ハルトは唸らずにはいられなかった。これまで『自分にできてループスにできないこと』はいくつかあったがその逆とは出くわしたことがなかった。初めてのシチュエーションである。

 この時ハルトはループスが自分にどんな感情を抱いていたのかをそれとなく理解したのであった。


 「なるほど。お前は俺に対してこういう風に考えてたんだな」

 「もしかして『嫉妬』してるのか?」

 「かもしれんな」


 一方のループスは剣に関して一つの悩みを抱えていた。刃が帯びた熱が冷めるまでの間、納刀ができなかったのである。白熱化を解除しても刃の余熱は簡単には冷めない。岩をも容易く溶断するほどの熱を持つ刃に直に触れればどうなるかなどは考えるまでもない。

 これでは取り回しが不便であった。


 「何かこう、手っ取り早く熱を冷ます方法はないだろうか」

 「水に浸けるのが一番手っ取り早いんじゃないか?湯気とかすごそうだけど」


 ハルトは水による冷却を提案した。彼女とループスの二人にとっては魔力による水の生成は容易である。しかし剣を浸せる量の水を湛えられる器がなかった。はじめはそれを採用しようとしたものの、すぐにその問題に気づいたループスは再び頭を抱えた。


 「いっそのこと地面にぶっ刺して熱を吸わせるとか?」

 「試してみるか」


 ループスは試しに熱を帯びている剣を地面に突き刺した。剣はパンケーキにフォークを通すがごとく深々と地面を貫いた。刃の余熱を吸収して突き刺した周囲の地面は橙色に発光する。

 

 「もういいだろうか」


 待つこと十数秒。頃合いを見計らってループスは剣を引き抜こうと試みた。

 しかしここでさらなる問題が浮上した。


 「抜けん……」

 「マジで!?」


 地面に突き刺さった剣が抜けなくなってしまったのである。あまりに深々と刺さってしまったせいでループスたちの筋力ではどうにもならなくなってしまった。

 冷却手段としては上々であったものの、それを回収できないのでは本末転倒であった。


 「じゃあここに水注いで泥にするか」


 ハルトはその場の思い付きで剣を刺したところへ水を注いだ。

 熱を帯びた地面は水を吸って泥となり、ぬかるんだそこからはあっさりと剣を引き抜くことができた。

 剣を振るい、わずかにこびりついた泥をすべて洗い流したループスはその刃に付いた水滴を払って鞘へと納めたのであった。現状『剣を地面に突き刺し、そこへ水を注ぐ』ことが白熱化した剣を冷却するための最適解のように思われた。


 「ここまでやらないと後始末ができないのは不便だな」

 「まったくだ」



 「手合わせを願う!」


 ハルトとループスが剣の取り扱いに悩んでいるところへ、突如として何者かが威勢の良い声を張り上げながらハルトたちへと近づいてきたのであった。

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