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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
3章 ブルームバレー
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活動の終着点

 暗殺者を味方に引き入れた翌日の昼前、ハルトたちはブルームバレーから少し外れた場所にある小屋へと足を運んでいた。そこは屋敷をハルトによってめちゃくちゃに荒らされ、命の危機を覚えたベロニカの潜伏先であった。

 ベロニカ陣営の残存戦力、潜伏先の構造などはすべて暗殺者から事前に聞き出すことができたため、ハルトたちレジスタンス勢力も万全の準備を整えていた。


 「では打ち合わせ通り」


 暗殺者はレジスタンスたちの中に潜伏して身を隠した。ハルトたちが突撃するのに乗じて小屋の中に入り込み、中にいるベロニカを引きずり出す算段であった。

 ハルトは耳をピンと立て、レジスタンスの旗印を高く掲げた。それはブルームバレーで続いていた戦いを終わらせるための決戦の始まりを告げる合図であった。


 「我ら市民の手によってブルームバレーの町に巣食う巨悪ベロニカに引導を渡す時が来た!ヤグルマの意思を継ぐ同志たちよ、この旗に続けぇ!」


 ハルトの号令によってレジスタンスたちは一気に士気を高揚させ、雄叫びと共にベロニカの潜伏先へと突撃していった。

 すぐにベロニカの用心棒たちが飛び出し、迎撃と鎮圧にかかってきた。しかしレジスタンスはもはやそれに動じるようなことはなかった。


 「なんだコイツら。何しても向かってきやがる!」

 「死ぬのが怖くねえのか」


 レジスタンスたちは用心棒からどんな攻撃を受けてもすぐに起き上がって向かってきた。その間に一人また一人と別のレジスタンスが加勢に現れる。

 戦闘経験の豊富な用心棒にとって一般市民から成るレジスタンスは素人も同然である。しかしそれゆえに経験則からくるセオリーが一切通用しなかった。

 最初は経験値の差から圧倒されていたレジスタンスたちは次第にその数の利を活かした人海戦術で用心棒たちを押し始め、やがては制圧を押しのけるまでに勢いを増した。そしてついに用心棒たちを全員倒してしまったのであった。


 暗殺者も一人ベロニカに接近するとその背後を取って首筋に刃を突き立て、殺生に王手をかけた。


 「貴様……私を裏切るのか」

 「報酬を前払いにしていればこんなことにはならなかったんですがね」


 ベロニカが暗殺者に圧をかけると、暗殺者は不遜な態度を返した。彼はまだ報酬を受け取っていない。たとえ仕事の最中であろうとよりよい条件を提示されればそちらに鞍替えするのは当然のことであった。

 時を同じくして外にいた用心棒たちを蹂躙したハルトたちがそこに合流する。レジスタンスがベロニカを包囲すると暗殺者はその手を解いてハルトの隣に並び立った。


 「雇った奴が金で動くことを理解できたなかったみたいだな、ベロニカ」


 ハルトは皮肉交じりの言葉をベロニカへ送った。それと同時にハルトはゴーグルを装着し、銃口をベロニカの額へと突き付ける。


 「私を殺せばどうなるかわかっているんだろうな?」

 「何も殺すつもりはねえよ。俺はただこれにお前のサインが欲しいだけだ」


 ハルトは懐から一枚の紙とペンを取り出した。広げられた紙に記された文を読んだベロニカは目を血走らせた。

 それは『今後一切の収益を剥奪する』旨が記されてた同意書であった。


 「ここにサインしてくれたらお前のこれまでの悪行は水に流してやってもいいって市民たちも言ってる」

 「サインを拒めばどうなる」


 ベロニカが悪態をついた。そこにサインをするということは花畑を庶民に開放するということ。これまで花畑から暴利を貪っていた彼の上流階級としての威厳を捨てるも同然であった。権威の象徴たる屋敷もハルトによって粉砕された今、それを失えばもう這い上がることはできない。それを承知の上でそれに同意することなどできるはずがなかった。


 「見たいか?」


 ハルトはすかさずベロニカの額に突きつけた銃口を上にずらして引き金を引いた。銃口から放たれた青色のビームが空を切り裂く音と同時に小屋の天井を円形に貫き、その頭上に青空を広げる。


 「今度はあれがお前をぶち抜くことになる。直撃したら今際の言葉も残せないだろうなぁ」


 金と権力にものを言わせられたベロニカも脳裏に鮮烈に焼き付けられた死のビジョンの前にはなす術がなかった。


 「どうだ?お前がヤグルマを殺した罪もここにサインするだけで今後は不問にするんだぞ?」

 「殺したのは俺じゃない。お前の隣にいる男だ」

 「でもそう仕向けたのはお前だろう」

 

 ハルトがそれを指摘するとレジスタンスたちはじりじりと距離を詰めた。これではハルトが引き金を引く前にレジスタンスたちがベロニカに手を出してしまうのも時間の問題であった。


 「……本当に書けばいいんだな?」

 「もちろん」


 ベロニカは断腸の思いであった。それはこれまで庶民に苦渋をなめさせてきた報いであった。

 ハルトたちはベロニカがサインをする瞬間を固唾を飲んで見守った。


 「ぬぅ……ふうううううう……ッ!」


 ベロニカのペンを持つ手は震えていた。よりにもよって市民に敗北した。それは生まれながらの上流階級の彼にとっては最上級の屈辱であった。

 サインを終えるとベロニカは同意書をハルトへと手渡した。それを確認したハルトは銃を懐に納め、レジスタンスたちに見えるように背伸びをしながら高々とその同意書を掲げた。


 「見よ!これが同意書という名の、我々の正義の証明である!」


 ハルトは高らかにそう宣言するとレジスタンスたちは勝利の余韻に酔いしれるように歓喜の声を上げた。



 「ヤグルマ……アンタの志、確かに俺たちが成し遂げてみせたぞ」


 その夜、ヤグルマの屋敷にてハルトは悲願の成就を今は亡きヤグルマへと報告するのであった。

 こうして、長きにわたったレジスタンスの戦いがついに終わりを迎えたのであった。

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