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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
最終章 これまで見てきたもの
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ハルト・ルナールブラン

 アリアはエリアル魔法学院の校門前でハルトの到着を待っていた。今日はエリアル魔法学院の入学式の日である。

 新しい制服に身を包み、そわそわしながらアリアは今か今かと待ち続ける。


 「よう!お待たせ!」


 アリアが先に待つこと十数分、エリアルの制服に身を包んだハルトが手を振って存在をアピールしながら合流してきた。

 制服を着た彼女の姿は瞬く間にエリアルの生徒たちの注目が集まる。


 「おはようございます。あれ?ハルトさん、それ……」

 「ああ、これか?おばさんとループスが付けていけってうるさくてさぁ」


 アリアはハルトの装いがいつもと違うことに気づいた。ハルトの尻尾の根元には赤いリボンがあしらわれていたのである。どうやら彼女が居候している家の主ことフィリアとループスから何度も迫られた結果渋々それを受け入れた形になっていたようであった。

 ハルトが尻尾を揺らすたびに根本の赤いリボンと白い毛、先端の黒い毛がコントラストを主張する。


 「可愛らしくていいと思いますよ」

 「そうか?ならいいんだけどさ……」


 ハルトはリボンを煩わしく思いつつも、可愛いと言われることについてはまんざらでもない様子であった。長らく女の子として過ごしている内に可愛いと言われることに喜びを感じられるようになっていたのである。


 「ハルトちゃん似合ってるわよー」

 「そうだ。可愛いぞ」

 

 後ろからフィリアとループスが口々にハルトを煽てるように声をかけた。二人が付いてきていることを知らなかったハルトは驚いて全身を伸び上がらせた。それに連動するように耳と尻尾の毛が一気に膨張して毛並みを乱す。


 「おばさん!来るなら来るって言ってくれよ!っていうかお店は?」

 「今日はお休みにしたの。せっかくだから内緒で驚かせようってループスちゃんが言うものだからつい」

 

 フィリアはループスの誘いに乗り、二人はハルトが知らないところでサプライズを示し合わせていた。それに伴い、フィリアの喫茶店は前もって今日を休日にする旨の告知を済ませていた。

 自分に隠し事をしていたことを知ったハルトはループスを睨みつける。


 「いやあ、こっちの方が面白いと思ってな。とりあえず手に持ったそれを下ろせ」


 ループスはサプライズに対する弁明をしつつ両手を上げて無抵抗を示した。彼女は今ハルトに銃口を突き付けられていたのである。


 「じゃあ今すぐにこれ直せ。お前のせいでせっかく整えたのが台無しだ」


 ハルトは銃を下ろすと尻尾を手前に回して毛繕いを要求した。せっかく早起きして整えたところを先の挙動で膨れさせてしまったためにボサボサの状態に戻ってしまっていた。

 ハルトから毛繕い用のブラシを手渡されたループスはその場でハルトの尻尾の毛繕いを始めた。


 「どうだ。俺も慣れたものだろう」

 「まあまあだな」


 ループスから毛繕いを受けながらハルトはその出来を評価した。かつては不慣れで繊細さに乏しかったループスの毛繕いも今では見違えるほどの腕になった。流石にハルトには劣るものの、それでも彼女が曲りなりに認めるほどにはなっていたのである。


 「おーい!」


 毛並みを整え直し、改めて教室に向かおうかというその時であった。また誰かがこちらを呼び止める声が聞こえた。

 ハルトとループスはその声にかなり聞き覚えがあった。


 「母さん!それに父さんまで!」


 声の主、それはハルトの両親ことレオナ・アイムとセシル・アイムであった。こちらもまた事前の連絡なしのサプライズである。

 さらにセシルとレオナの登場によってハルト以上に驚かされていたのがアリアとフィリアであった。


 「女の子の制服よく似合ってるわ。流石我が子」


 レオナはハルトを抱き寄せた。レオナたちも姿こそ変われど中身は同じと言わんばかりに我が子の扱いは心得ており、それに対してハルトは尻尾を左右に振って喜びを表現した。


 「仕事はどうしたんだ?わざわざプリモからこっちに出向いてきたんだろ?」

 「下請けだけ任せてきたわ。仕事よりも我が子の方が大事に決まってるんだから」


 ハルトは仕事のことを尋ねるとレオナはあっさりと言い放った。ハルトの両親は魔力で動く人形の制作や修理をする人形師である。先の人形祭のコンテストでの優勝という実績を得たことでその人気は故郷プリモの内外を問わないものとなっており、かなり多忙な日々を過ごしていた中でそれを押してのエリアルへの来訪であった。


 「いやあ、手紙が届いたときからこっちに行くんだって母さん聞かなくて」

 

 セシルが自分たちがプリモを離れてエリアルまでやって来た経緯を語った。やはり発端はレオナの思い付きであった。

 そうこうしている内にレオナはアリア、ループス、フィリアのところへ歩みを寄せる。


 「初めまして。ハルトの母のレオナ・アイムです」


 レオナはフィリアに挨拶をすると彼女に手製の名刺を手渡した。人形祭で優勝して以来、名が売れるようになったレオナは商売道具として名刺を用意するようになっていた。

 名刺を見たフィリアはレオナが有名な人形師であることを知る。


 「貴方がフィリアさん?」

 「はい。ハルトちゃんが卒業するまでの間ハルトちゃんとループスちゃんを預からせてもらってます」


 レオナはフィリアと初めて顔を合わせて会話を交わした。初対面であるにもかかわらず、ハルトが選んだ人なら大丈夫だろうと根拠のない信頼を寄せて在学中の我が子の面倒をフィリアに一任した。


 「これ、よかったらお店の置物にどうぞ」


 レオナはプリモから持ってきたものをフィリアに手渡した。それはハルトとループスを模した人形であった。


 「貰ってもいいんですか?」

 「もちろん。お近づきの印に」


 レオナとフィリアが話している間にセシルはアリアに声をかけていた。


 「君はハルトのお友達?」

 「は、はい。昔ハルトさんに助けてもらって、それからずっとお友達に……」

 「あの子は賢くて強い子だけど、どこか危なっかしくて放っておくとどこへ行くかわからないような子だから、できるだけ傍にいてあげてね」

 「はい。それは私もよく知ってますよ」


 セシルがアリアにハルトのことを頼むとアリアは冗談めかしてクスクスと笑う。アリアはすでにそれなりの時間をハルトと共に過ごしており、彼女の人間性については熟知していた。


 「もうすぐ入学式が始まりますよ。教室に行きましょう」


 アリアは大時計を見てハルトに催促をかけた。談合している間にそこそこの時間が過ぎており、入学式の時間がすぐに迫っていた。


 「ハルト!」

 

 教室に向かおうとするハルトをレオナが呼び止めた。ハルトは足を止め、レオナの方を振り返る。


 「自分の好きなことを精一杯やっていきなさい。でも、やるからには本気で、中途半端はダメだからね」


 レオナはハルトにメッセージ送った。レオナにメッセージを一任するかのようにセシル、ループス、フィリアは何も言わず静かに頷く。


 「ああ、じゃあ行ってくる」


 ハルトはレオナの言葉を胸に刻み、踵を返してアリアと手をつないで教室へと向かっていった。


 「初めまして。これから君たち今期生の担任を務めるカーラです。担当教科は詠唱学なのでこれから一年は必修科目として授業で顔を合わせることになります」


 ハルトたちの担任教師にはカーラが選ばれた。彼は研修期間を経て生徒たちを受け持つようになったのである。そんなカーラの姿はハルトとアリアには初めて彼の模擬授業を受けたときよりも幾分か教師っぽくなったように見えた。


 「これから共に学び高め合う生徒同士、皆さんに自己紹介をしてもらいましょう」


 カーラは生徒たちに自己紹介を求めた。これから受け持っていく生徒の名前と顔を一致させて覚えるための彼の策であった。

 生徒たちは思い思いに自己紹介をし、ハルトの番が回ってきた。



 「皆さん初めまして。ハルト・ルナールブランです。俺はみんなとはちょっと見た目が違うかもしれないけど、仲良くしてくれると嬉しいな」


 ハルトは耳と尻尾をピコピコと動かして愛嬌を振りまきながら新しいクラスメイトに自分をアピールした。そこにはアルバス・アイムの面影はどこにもなく、新入生ハルト・ルナールブランの姿があったのであった。

今回でこの物語は完結となります。

約一年半の連載になりましたがここまで読んでくださった読者の皆様、ブックマークしてくださった皆様、評価を入れてくれた皆様方、本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結お疲れ様です、今まで楽しいお話をありがとう御座いました! 全体を通して読み直すと、適度にアッサリしていて読みやすかったですし、キャラクター達の魅力も凄く伝わってきました。 是非、書籍化…
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