特待生の称号
入学試験から数日後、合格発表の日がやってきた。ハルトはアリアと共に合格者の名前と受験番号が記された立て看板を眺める。エリアルの入学試験の合格者の一覧は成績上位者から順に左上から記載される仕組みになっている。ハルトは迷うことなく左上の頂点に視線を移す。そこには『七十一番 ハルト・ルナールブラン』と堂々と記載されていた。
「やりましたよハルトさん!合格です!」
「ふふんっ。まあ当然の結果だな」
ハルトは小さな胸を高々と張って自身の能力を誇示した。合格者の一覧はその隣に筆記と実技それぞれの獲得点数が記載されている。ハルトは筆記、実技どちらも文句なしの満点であった。特待生となれるのは成績優秀者の上位三名、ハルトはその中でも非の打ち所のない完璧な成績を修めた文句なしの頂点。彼女にとって特待生の称号は欲しいがままであった。
ハルトは以前に受け取った受験番号を手に学院長の元を訪れた。
「受験番号七十一番、ハルト・ルナールブランです」
「あの時の君か。また会うことになりましたね」
学院長はハルトの顔を見て驚いた。あのときに堂々と試験で特待生になることを宣言してきた狐の子がまさか本当に特待生の視覚を得てここにやってくるとは思いもしなかったのである。
「約束通り。自分の力で特待生になってやったぜ」
「素晴らしい。では、特待生として入学するための手続きをしましょう」
学院長はハルトの成績をありのままに評価すると入学の手続きを進めた。これでハルトは入学金と在学中の授業料を全額免除されるようになる。金銭面の問題はすべて解消されるのである。
「ふふん。実にいい気分だ」
入学手続きを終えたハルトは上機嫌に尻尾を揺らしながら道を歩いた。彼女の行き先はフィリアの喫茶店、そこで働くフィリアとループスに合格の一報を入れに行くのである。
「あの……どこに行くんですか?」
後をついてきていたアリアがハルトに尋ねる。ハルトがフィリアと再会したのはアリアをエリアルに送り届けてからのことであるため、彼女はまだフィリアのことを知らなかったのである。
「俺が昔世話になった人のところ。で、これから世話になるところかな」
ハルトは行き先をざっくりとアリアに説明した。フィリアはハルトが旅に出て最初に世話になった人物であり、初めて彼女の正体を知った人物である。そしてハルトがこれからエリアル魔法学院を卒業するまで下宿させてもらう人物でもあった。
「ここがハルトさんがお世話になった人がいるところですか?」
「その通り」
ハルトはアリアと共に喫茶店へと訪れた。そしてハルトは合格証明書を手に喫茶店の入り口の扉を開く。
「いらっしゃーい、ハルトちゃん」
「やったぞおばさん。これを見てくれ」
喫茶店に入るなりハルトはフィリアに合格証明書を両手で広げて見せた。フィリアはそれに目を凝らす。
「これが合格証明書というの名の、特待生になった証だ!」
ハルトは証明書を手に高々と宣言した。以前ハルトを激励した常連客たちは一斉に立ち上がり、ハルトに拍手を送る。
「すごいすごい!やったねハルトちゃん!」
「へへっ……まあな」
フィリアはハルトの頭を撫でながら労いの言葉をかけた。ハルトはまんざらでもないように耳を伏せ、フィリアの手を受け入れて甘える仕草を取る。
「貴方は?」
「俺の友達。アリアってんだ」
「あ、初めまして」
フィリアがアリアの存在に気付くとアリアはフィリアに初対面の自己紹介をした。こうして二人は初めて出会った。
「明日から、またここで世話になる」
「うんうん。いつでも来ていいからね」
ハルトがフィリアの元に行くことを伝えると、フィリアは満面の笑みでそれを受け入れるのであった。
あと三話で完結になります。




