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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
1章 ケモミミTS魔法少女
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機械いじりと覚醒

 寮の自室へと戻ったハルトはなぜ自分がこんな姿になってしまったのかを考えることにした。しかし自分の方に思い当たる節は全くない。だとすれば原因は外部にあった。誰かが魔法を使って自分をこの姿に変えてしまったのである。

 じゃあ誰がそれを実行したのだろうか。犯人を特定するための要素は二つあった。まずはハルトに対して何らかの悪感情を抱いている人間であること。もう一つは夜中に寮内を行き来し、変化の魔法を実行できる人間である。


 「そういえばいたな。こんなことをしそうな奴……」


 ハルトの脳裏に一人の人物が思い浮かんだ。それは自分の同期のループスだった。

 彼は常に学年次席であり、主席だったハルトに対して日頃から憤りを感じていた。顔を合わせれば口から飛び出すのはまず嫌味であり、直接つっかかられたことも何度かあった。彼であれば自分に対して変化の魔法をかけることもやりかねない。

 そしてループスもハルトと同じく学生寮で生活している。つまり今回の嫌がらせを実行できるだけの要素は十分に揃っていた。


 しかしまだそうと決まったわけではない。ハルトはループスの様子を探ることにした。

 だが今は授業中、こちらも迂闊な行動はできない。授業が終わるまでハルトは息を潜めることにした。現在時刻は午前十時、自由に行動できるようになるのは昼休みに入る十三時。それまでこちらは退屈であった。

 ハルトはふと自分の机の上に置かれた作りかけの機械に視線を移した。引き金を引くことで小型の弾丸を高速で射出する機構、二年以上前から構想し、なんども改良を重ねて完成まであと一歩まで進めた代物であった。きっと自分の技量があれば昼休みまでに完成させることができるだろう。そう踏んだハルトは机に向き合い、作業中に欠けるゴーグルをかけて機械に着手し始めた。

 機械いじりはハルトの昔からの趣味であった。放課後や休日に時間を忘れて没頭することも多い。


 「手が小さくて道具が上手く持てねえな……」


 ハルトは作業をしながら独り言を零した。

 体格が小さくなったことで工具が手に馴染まない。これまで当然のように使えていた工具が何度も手元から零れ落ちそうになった。しかしそんなことでハルトの機械いじりが止まることはない。

 気が付けばあっという間に数時間が経過していた。

 

 「よし、できた!」


 ハルトは工具を机の上に置き、かけていたゴーグルを上にずらすととついに完成したそれを高々と掲げた。世界に一つしかない、すべて自分の手で作り上げたオリジナルの機構である。それは片手で取り回せる銃と言ってもよかった。

 気づけば時刻は午後十三時二十分、すでに昼休みも半分近くが経過しようとしていた。


 「早速試してみるか!」

 

 ループスを観察する最初のチャンスを一度後回しにし、ハルトは実験へと飛び出した。


 ハルトは昼休みの校舎裏、人気がないところまで足を運んだ。そこは人通りがほとんどなく、ハルトにとっては実験の穴場となっていた。

 早速機構を二つに折りたたみ、中に弾薬を込めた。それもただの弾丸ではなく、中にハルトがあらかじめ発動した魔法を封じ込めた特製の弾薬である。

 『あらかじめ発動しておいた魔法を弾薬にストックし、それを開放することで詠唱などを省略して発動できるようにする』というのがこの機構の設計思想であった。

 弾薬を装填したハルトは遮光ゴーグルを装着し、銃口を頭上へと向けた。そしてゆっくりとその引き金を引いた。


 次の瞬間、爆音と共にハルトを中心にして赤色の閃光が走った。爆音に驚いたハルトの全身の毛が逆立ち、弾丸から解放された衝撃波が彼女の尻尾を激しくなびかせた。

 数秒ほどの放心の後、ふと我に返ったハルトは銃を懐に隠すと大慌てで逃げ出すようにその場を後にした。こんな音がしようものならすぐに教師や生徒たちが野次馬としてすっ飛んでくる。もしこんな姿を見られようものなら終わりであった。


 (足が速くなった?)


 逃げる中でハルトは自分の足が変身する前よりも速くなっていることに気が付いた。足取りが軽い、自分の身体が宙に浮いているような感覚すら覚え、さながら自分が野を駆ける獣になったかのようであった。


 「ハァ……ハァ……」

 

 慌てて自室に駆け戻ったハルトは激しく息を切らすと同時に激しく興奮していた。

 数年の歳月を経てついに自分の開発した機構が完成した喜びと自分の身体能力の変化への気づきで胸が高鳴り、耳と尻尾を激しく上下に揺らした。

 

 「ヤバい……なんか楽しくなってきたかも……!」


 己の身が変化したことによる影響は決して悪いものばかりではなかった。そうと分かった途端にハルトは途端に気分が高揚してきた。

 生まれ持った自力で機械をいじれる手先の器用さ、魔法の才覚、学問をすぐに吸収できる頭脳。そして元の姿を失った代償に得た野生動物のごとき身体能力、客観的にみれば美少女と思わしき風貌。それらをすべて自覚した彼女はもう自惚れずにはいられなかった。


 「そうか、俺は天才だったんだ!」

 

 自分は生まれつきの天才であり、今回の肉体の変異はそれを自覚させるためのものである。

 そう考えた瞬間にハルトの中にあったプライドが音を立ててはじけ飛んだ。

 それは、過去をかなぐり捨てた彼女の新たな一面の誕生の瞬間だった。



 『この素晴らしい能力を見せつけてやりたい』

 

 もはや自分を変身させた犯人が誰かなどどうでもよかった。

 その衝動がハルトをループスへの報復へと駆り立てたのであった。

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