青色の魔法石
「あの……二人は外でどんな仕事を?」
カレンたちが両親の帰りを祝うための御馳走を用意している間、ハルトとループスはカレンの両親にいろいろ聞きこんでいた。特に気になっているのはなぜ一般人であるはずの彼らが魔法石を、それもこれまで確認されていない青単色のものを持っているのかであった。
「ソルシエールの鉱山で採掘の仕事をしててね。あの魔法石はそこで見つけたってわけ」
カレンの父は自分たちが出稼ぎでしていた仕事の内容をカレンたちの前で明かした。彼らは魔法石の採掘の仕事をしていたのである。遠方に出てまで稼げる仕事内容であることにも納得がいった。それに加え、ソルシエールという地名はハルトとループスにとってかなり思い入れがあった。忘れもしない、二人が今の姿で初めて顔を合せた場所である。
「その魔法石、ソルシエールに行けばまだありますか」
「どうだろうなぁ。たまたま欠片をいくつか見つけただけだし、残ってるかどうか」
カレンの両親も青色の魔法石を偶然欠片単位でいくつか発見しただけである。魔法石の塊は彼らが現地にいた時点ではまだ発見されておらず、それ以上のことはわからなかった。
ハルトとループスはこの青色の魔法石に俄然興味が沸いた。
「戻るか。ソルシエールに」
「ああ」
ハルトとループスは次の行き先を決定した。青色の魔法石の謎を追う、そのためにもう一度ソルシエールに赴くのである。それに加えてループスにはもう一つ、自分が所持する魔法剣の素材となっている赤色の魔法石との因果を調べるという題目があった。
「戻るって何?二人はソルシエールの人だったの?」
「違うけど、あそこは俺とコイツが出会った場所だ」
ハルトは懐かし気に語る。ハルトとループスの付き合いを知らないアリアは初めて二人の馴れ初めを知ったのであった。
「そうか。三人は旅人だったのか」
「ええ。ここにはカレンさんの好意で泊めてもらってました」
「けどもう行き先決まったし、ここに居続ける理由もなくなったかなー」
ハルトとループスはカレンの両親に己の身分とここに滞在していた理由を明かした。
「三人にはいろいろ助けられたんだよ。特にアリアちゃんはアーサーたちに家事まで教えてもらっちゃってさ」
台所からカレンの声が話に割り込んできた。それを聞いたカレンの両親は同時にアリアに視線を向けた。
「へぇー。まだ若いのに感心」
「あ、ありがとうございます……」
カレンの両親から感心されたアリアは思わず視線を逸らした。彼女がハルトとループス以外から褒められることに慣れていないのが顕著に表れた。
「せっかくだから今日までは泊っていきなよ」
「えぇ!?お二人はどこで寝るんですか?」
「今日はアーサーたちと一緒に寝るから心配しなさんな」
寝室を借用していた影響で滞在を遠慮するハルトたちに対してカレンの両親は正式に寝室の使用を認めた。ここまで好意を向けられてはそれに甘んじない方が失礼であった。
「それなら、お言葉に甘えて……」
家族ぐるみの好意に甘えてハルトたち三人は今日までここに滞在することにした。
「ハルトちゃんたちー。悪いんだけどちょっとこっち手伝ってくれない?」
カレンが台所からハルトたちの助力を求めてきた。それに応え、ハルト、ループス、アリアの三人は台所へと移動していくのであった。




