両親との再会
「みんな、今日は何の日かわかる?」
「お父さんたちが帰ってくる日!」
「その通り!」
カレンがウキウキでアーサーたちに尋ねると弟たちもウキウキでそれに答えた。今日は四姉弟の両親が数年ぶりに帰ってくる日であった。
「あのー……俺たちここにいていいのかな?」
「いいの。お父さんとお母さんにハルトちゃんたちのこと紹介したいから」
遠慮がちに接するハルトにカレンは両親と顔を合せることを勧めた。ハルトたちは元々カレンたちの両親の寝室を借りていたということもあり、三人は今日でここを去るつもりだった。そのために寝室周りは綺麗に片づけている。
カレンはそんな三人と両親を引き合わせたかったのである。
そんなやりとりを交わす中、ハルトは二人分の足音が家に近づいているのを察知した。聞き耳を立てて耳が動く様子をループスは見逃さなかった。
「来たぞ」
「マジで!?」
カレンは大急ぎで玄関の方へと向かっていった。それに続いてアーサーたちがカレンの後ろを追いかける。
「おかえり!」
「おかえりなさい!」
ハルトの耳に狂いはなかった。家に向かってきていた足音は確かにカレンの両親のものだったのである。カレンたちの両親を出迎える声が玄関の方から聞こえてきたことでループスとアリアもそれを確信する。
「ただいまー。みんな待たせてごめんねー」
「ノエルー、大きくなったなー」
カレンたちの両親の声は元気そうであった。ハルトたちは玄関先でのカレン一家の様子を覗き見る。
「寂しくなかったか?」
「お姉ちゃんたちがいたから大丈夫」
「カレン、家のこと任せっきりにしてごめんね」
「謝んないでよ。私が決めてやったことだからさ」
家のことを任せっきりにしていたことに負い目を感じていた母親に対してカレンは気丈に振舞う。余計な心配をさせぬよう、つい先日過労で倒れたばかりであることは隠し通すつもりであった。
「奥にいる人たちは……?」
カレンの父は家の奥からこちらを覗いているハルトたちの存在に気付いた。
「お父さんたちに紹介したかった人でね。ハルトちゃん、アリアちゃん、ループスさん」
「どうも、初めまして」
「お世話になってます」
初対面のカレンの両親に対し、ハルトとループスは社交辞令の挨拶を交えながらお辞儀をした。アリアもそれに合わせてぺこりと頭を下げる。
「初めまして。カレンの父です」
「同じく、母です」
カレンの両親とハルトたちは真正面から相対して挨拶を交わした。こうして三人とカレン一家は全員が顔見知りの関係となった。
「みんな、これを見てくれ」
カレンの父は肩にかけていた荷物の中身をカレンたちに見せた。ハルトたちも一緒になって中身を覗き込むと、そこには目を疑うようなものが詰まっていた。
「すごい大金です……」
「いくらあるんだ?」
荷物の中には帯でまとめられた紙幣がぎっしりと詰まっていた。ハルトとアリアは思わず目が眩みそうになった。
「ざっと五百万マナはある。これを少しずつ切り崩せばずっと一緒に暮らしていける」
「それとね、お土産も持ってきたんだから」
カレンの母はそう言うと小箱を取り出し、そこから何かを取り出した。
「綺麗じゃん。宝石?」
「綺麗でしょー。なんとそれはね……」
それは一見すると青色に輝く宝石のようであった。光に透かすと不思議な七色の煌きを放つ。その特徴からハルトとループスにはそれの正体が一瞬で分かった。
「それってもしかして魔法石ですか?」
「あら、何で分かったの!?」
カレンの母が明かす前にループスが石の正体を確認した。言おうとしていたことを先回りされたことにカレンの母は驚かされた。その反応通り、その宝石は青単色の魔法石だったのである。
こうして、ハルトとループスは二つ目の『単色の魔法石』と出会ったのであった。




