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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
13章 アリア・クエスト
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休もうにも休めない

 ハルトとループスがクエストに赴き、カレン家にはカレンたち四姉弟とアリアが残った。

 

 「ロレントさん、洗濯物は干す前に脱水しないと……ああっ、ねじって絞っちゃダメです!」

 「ノエル、お皿についた汚れがなくなるまで水に浸けて洗うんだぞ」

 

 寝室で一人ゆっくりと羽を伸ばすつもりであったカレンだったがアリアを巻き込んだ三兄妹の声が気になって仕方がなかった。アリアがついていれば家事は問題ないだろうとは思っているものの、どうも落ち着かない。

 いてもたってもいられず、カレンは寝室を抜けて弟たちに様子を見に行った。


 「洗い物はできてる?」

 「まあね。ノエルもよくやってくれてるよ」

 「ほう。どれどれ……」


 カレンは洗い物の出来具合を見た。すると概ね問題はなかったものの、まだ油っぽさが微妙に残っているのがカレンにはわかった。


 「もうちょっと力入れて擦りな。油って簡単には堕ちないからさ」

 「う、うん。わかった」


 カレンはアーサーとノエルにアドバイスを送る。皿洗いはアーサーにとってはアリアに教わる前からできた数少ない家事の一つだったがまだまだ拙いところがあった。

 

 「ロレント、洗濯物は水を抜いたらちゃんと伸ばして干すの。アリアちゃんのやり方見てみなよ」


 カレンは作業中のロレントに割り込んで作業を中断させるとアリアのやり方を手本とさせた。アリアの干す洗濯物は袖のもつれや引っ掛かりをしっかり直されているのに対し、ロレントのは脱水させたときの形がそのまま残っており、乾いたときに皺になるのがカレンには容易に想像がついた。


 「『洗ったら終わり』じゃなくて『乾かして取り込む』までが洗濯なの。わかった?」

 「わかった!」


 ロレントは元気のよい返事をカレンに返した。ロレントが本当に理解できているかともかくとして、話を聞いていることだけはわかったカレンはとりあえず満足げに頷く。

 

 「あの……カレンさん……」

 「ん?どした?」

 「お休みしなくて……いいんですか?」

 「ゆっくりするつもりだったけどさ。こうも騒がしいと落ち着いていられなくて」


 カレンは弟たちの声がする環境ではどうも落ち着くことができなかった。家事に対して積極的に取り組んでくれるようになったことは喜ばしく思っており感謝しているものの、その出来栄えが不完全であることを考慮すると不安の方が大きかったのである。


 「お姉さんって大変ですね……」

 「これぐらいどうってことないし。それに何か動いてないといけないような気がしてさぁ」


 カレンはワーカホリック気味になっていた。弟たちの親代わりとして家でも外でも数多のやることに追われる生活を続けている内に何もしない時間を過ごすことへの耐性がなくなってしまっていたのである。


 「カレンさん……アーサーさんたちは私が見ていますので今はお休みしていてください」


 そんなカレンを見かねたアリアは語気を少し強めてカレンに訴えかけた。過労が祟って倒れたから静養するつもりで家にいるのにも関わらずそのカレン本人が家の中の雑務に追われていては元も子もないのである。



 「あー、うん。そうね、そうするわ……」


 アリアに念を押されたカレンは苦笑いすると少し肩を落として寝室へと戻っていった。その後ろ姿はどこか寂しそうに見えたのであった。

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