倒れた翌日の朝
「カレン、今起きてる?」
「起きてるよー。一晩寝たらだいぶ楽になったかなー」
朝方、ハルトがカレンの寝室を尋ねるとカレンもすでに起床していた。昨夜から体調はある程度回復し、立ち上がって歩くことができるようになっていた。しかし足取りはまだふらついていて危なっかしい。
「今日はまだゆっくりしてた方がいいかもな」
「かもねー。まだ歩いてる感覚があんまりないし」
ハルトに休息を促されたカレンはその言葉と自分の感覚に従い、休息を続けることにした。このまま冒険者として復帰してもまともにクエストができそうになかった。
「おはようみんな」
「おはようございます」
「カレン姉ちゃんおはよう。もうすぐ朝ごはんできるよ」
カレンが台所に足を運ぶと、そこにはアーサーとアリアの姿があった。ロレントは洗濯をするために兄妹の洗濯物をかき集めている。
「ノエルはどうしてる?」
「ロレントの手伝いしてるよ。一人だけ何もしないのが嫌なんだって」
アーサーが語る通り、ノエルはロレントと一緒に洗濯物を集めて回っていた。兄妹が力を合わせて家事をこなす姿勢が継続していることにカレンは安堵する。
「食事は俺たちと一緒で大丈夫か?」
「たぶん大丈夫」
「それなら。皆さん一緒に……」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
ハルトたちは全員で一緒に食卓を囲んで朝食を取った。カレンが寝間着姿のまま食卓にいるのは実に久々のことであった。
「今日はカレン姉ちゃんどうするの?」
「今日はお休み。それからもうちょっとの間は身体を休めるために力を蓄える時間にしようかなーって」
「その……お金は大丈夫なの?」
「心配すんなし。こんなこともあろうかと少しぐらいならお金貯めてたんだから」
カレンは万一のことに備え、自身の冒険者としての収入から貯金を積み立てていた。その万一が来るのが想定外に早かったものの、少しの間は自分の収入が無くなろうと両親からの仕送りだけで生活を賄って休息に集中することができるようになっていたのである。
「じゃあ今日は一日家にいるってこと?」
「そーいうこと」
カレンが一日家にいるとわかるや否やアーサーたちは大喜びであった。カレンが冒険者になってからというもの、四姉弟が揃うのは基本的に早朝と夜だけであり、昼間に揃うことはまずなかった。
「俺たちはクエストに行ってくる。何か欲しいものあったら買ってくるぞ」
「大丈夫。その時はアーサーたちに行かせるから」
カレンはニヤニヤしながらアーサーたちの方に目を向けた。今日ばかりは長女として弟たちを扱き使う気満々であった。事情が事情なだけにアーサーたちも特に反発する様子もない。
「じゃ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
朝、カレンはクエストに赴くハルトとループスを弟たちやアリアと一緒に見送ったのであった。




