アリアは知っている
「昼間は二人でどこに行ってたんですか?」
「んー。ちょっとしたお出かけってやつかな」
夜、アーサーたちが寝静まった頃にアリアはハルトに昼間のことを尋ねていた。ハルト的には特にこれといって目的もない、遊び歩きのつもりであった。
「なあアリア。アリア的にはアーサーはどんなことをするのが向いてると思う?」
「アーサーさんですか」
「そう。あの子、冒険者になりたいらしくてさ。だからどんなことが得意なのか見つけてやりたくて」
ハルトは質問の意図をアリアに伝えた。出会ってからここ数日の間にアーサーのことを一番近くで見ているのはアリアである。彼女なら自分には見つけられなかった一面を知っているかもしれないとハルトは考えたのだ。
アリアは上を向いてこれまでのアーサーの姿を思い出した。
「そうですね……アーサーさんは『人を動かす』のが得意なんだと思います」
アリアはこれまで見てきたアーサーの姿から彼の得意分野を推測した。ただのあてずっぽうではなく、判断材料となる根拠がアリアの中にはしっかりとあった。
「というと?」
「アーサーさん、私がここでお手伝いをしているといつもロレントさんやノエルさんを動かしてくれるんです。ただ動かすだけじゃなくて、何をしてほしいのかちゃんと伝えてくれてますし、それができたらロレントさんとノエルさんを褒めてあげてるんです」
アリアはハルトたちがクエストに行っている間、アーサーたち三兄妹の面倒を見ている。だがアリアの仕事はアーサーたちではやりきれないような炊事洗濯がほとんどであり、それ以外の兄妹のことはすべてアーサーが仕切っているような状態であった。
「周りをちゃんと見て、自分にできる手助けをしてくれて、それでもダメなら他の人に素直に助けを求められる。それがアーサーさんの得意なこと……だと思います」
『常に周囲に気を配り、その場に応じた最善の行動ができる』
それがアリアの視点から見出したアーサーの長所であった。つまるところ彼は単独で活躍するようなタイプではなく、仲間を集めることでその真価を発揮するタイプなのである。
昼間の一件からアーサーの人間性を見ていたこともあり、ハルトはアリアからの評価にも納得ができた。
「ロレントさんとノエルさんのもいいところ、あるんですよ。ロレントさんは兄妹で一番体力があってよく動いてくれますし、ノエルさんがいると場の空気が和みます」
アリアはアーサーだけでなく、ロレントとノエルの長所も語った。次男のロレントは疲れ知らずの体力自慢、末っ子のノエルはその場にいるだけで場の空気を和ませる癒し役である。昼間は冒険者ギルドにいることが多いハルトには見えなかったところであった。
「カレンはいい弟たちを持ったな」
「はい。このまま成長してくれたらきっと……心強い家族になってくれます」
アーサーたち三兄妹の長所を知ったハルトはそれを本人に伝えることなく眠りについたのであった。




