ハルトとアーサー
「ねえ、ハルト姉ちゃん」
とある日、ハルトがオフの日を作ってカレンの家でくつろいでいるとアーサーが声をかけてきた。彼はハルトと話したいことがあった。
「ん?どうした?」
「ハルト姉ちゃんはどうして冒険者になったの?」
アーサーはハルトが冒険者になった理由を知りたかった。外見年齢が近いこともあり、アーサーはハルトに興味津々であった。
「どうして……か。俺は旅人だからさ、道中でお金を稼ぐために冒険者になった……っていえばいいのかな」
ハルトは自分が冒険者になった経緯を簡潔にアーサーに語った。旅人をしながら収入を得る手段として冒険者になったのは事実だがそれ以外にも理由はあった。
「それともう一つ。俺と一緒に旅してるループスっているだろ。アイツがお金を稼ぐ手段が冒険者になるしかなかったからその付き添いだな。それに冒険者になれば旅先の宿を割引で利用できる特典もあるから費用が少し浮くし」
ハルトが冒険者になった他の理由、それは冒険者稼業に手を出すループスの付き添いや特典の利用など様々であった。一応ハルトは機械修理や作成の技能があるため、冒険者をしなくても稼ぐ手段はあったが他の稼ぎ口は持つに越したことはない。
「ハルト姉ちゃん。俺も冒険者になりたい」
アーサーは冒険者になることを志していることをハルトに打ち明けた。
「冒険者になって、カレン姉ちゃんの助けになりたいんだ」
冒険者として自分で稼げるようになることで家族の助けになりたいというのがアーサーが冒険者を志す理由である。自分にできることがないかと模索した結果でもあった。
「アーサー。冒険者はお金を稼ぐことできるのは事実だがどんなクエストに出られる?」
「んー……わかんない」
「だろうな」
アーサーは冒険者を志しているものの、自分がどんなクエストに適性があるのかは見出せていなかった。ハルトはそこに危うさを覚える。
「冒険者ってのは自分の得意なものをいかに早く見つけられるかが大事だ。俺だったら機械の修理や人探し、ループスなら野草探しや動物狩りが得意だからそういうクエストを狙えばちゃんと稼げる。だから自分の得意なことを見つけられないなら冒険者になっても辛い思いをすることになるぞ」
ハルトは自らの経験を交えた忠告をアーサーに与えた。彼女の言葉は自分の得意なことがわからないアーサーに重くのしかかる。
「じゃあ、俺には向いてないってこと?」
「向いてないってわけじゃない。自分の得意なものを見つけられるまでは無理してならない方がいいってことだ」
意気消沈するアーサーにハルトはフォローを入れた。アーサーが姉の負担を軽減しようとしている姉弟想いな性格であることは十分なぐらいに伝わっている。しかしその気概が逸るあまりに空回りしそうなのが危険に思えてならないのである。
「お金を稼げなくてもカレンの役に立つこともきっとできるはずだ。それにアーサーは周りから見たらまだまだ小さいんだから、今はまだ焦らなくてもいいんだぞ」
「そうなのかな」
「そうとも。だから今のうちに自分が得意なことをじっくり探していけ」
ハルトはアーサーを励ますように軽く肩を叩いた。それと同時に何かを思い立ったハルトは耳をピンと立てた。
「そうだ。どうせなら今からアーサーの適性を見つけに行くか」
「今から?」
「おう」
ハルトはそう言うとアーサーの手を引いてどこかへと連れだすのであった。




