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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
13章 アリア・クエスト
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少し豪華な夕食

 「到着ー!ここが今日みんなが夕食を取るお店だ!」


 ハルトとループスに案内されて歩くこと十数分、ハルトが足を止めて紹介したのは小綺麗な外装をしたレストランであった。そこはハルトたちが昼間にギルドの冒険者から紹介を受けた店である。


 「ん?入らないのか?」


 なぜか店の入り口の前で足を止めてしまったカレンたち四姉弟を見たハルト、ループス、アリアの三人は頭に疑問符を浮かべた。


 「いやぁ、こういう店来るの初めてでさ……」

 「あー、そういうこと」


 カレンたち四姉弟はこれまで一度こういったレストランを訪れた経験がなかった。両親が傍にいたころから貧しい生活をしていたことが垣間見え、ハルトたちはなんともいたたまれない気分になった。


 「ほら。入った入った」

 「皆さんもどうぞ」


 ハルトが先行し、ループスとアリアがカレンたちの背を押して店の中へと足を進めた。


 「お待ちしておりました。あちらの席へどうぞ」


 レストランのウエイターはハルトたちを奥の席に案内した。ハルトたちが昼間に前もって七人で座れる席を予約していたのである。

 ウエイターに案内され、席についたカレンたちをエスコートするようにハルトは品書きを差し出した。


 「遠慮せずに好きなもの頼んでくれよ。これは俺たちからのほんのお礼だ」

 「俺のオススメはタテイノシシのステーキだ。想像しただけでもう……」


 ハルトがカレンたちが気負いしないようにフォローを入れる隣でループスはこれからテーブルに届くものを想像して目を爛々と輝かせている。椅子の隙間から尻尾が揺れているあたり相当楽しみにしているようであった。

 

 「じゃあ俺はループス姉ちゃんと同じのにする」

 「俺もー!」

 「私もー!」


 ループスはすっかりアーサーたちに懐かれていた。アーサー、ロレント、ノエルはループスが注文しようとしているものと同じものを選んだ。そんな中、カレンは唸りながら未だにメニューとにらみ合っている。


 「お店側のオススメを頼んでみるのは……どうですか?」


 注文に悩むカレンにアリアはアドバイスを送った。レストランであればオススメの一品は万人に好まれるものが出てくるはずであるため、まず外れることはない。自分で決められそうにないと判断したカレンは店側に注文を委ねることにした。

 全員分の注文が決まったところでループスは呼び鈴を鳴らしてウエイターを呼びつけた。ウエイターは注文を受けると、それを奥のコックたちに伝えるべく厨房へと消えていった。


 注文から十数分後、ウエイターが何度もテーブルと厨房を往復してハルトたちの前に料理を運んできた。テーブルは貴族の食事にも引けを取らないほどに鮮やかに彩られ、肉と香草が入り混じった香りがハルトたちの鼻に届く。

 ハルトたちは


 「なんか悪いねー。家のことやってもらって、さらにクエスト手伝ってもらった上にご飯まで奢ってもらっちゃってさ」

 「いいってことよ。こっちも宿代タダで泊めてもらってるようなもんだし、これぐらいはお返ししないと」

 

 食事中、ハルトたちが気兼ねなく談笑しているとハルトの耳にこちらの席を揶揄して茶化すような会話が入り込んできた。

 声のする方を見ると近くの席にいる小綺麗な格好をした若い男女がカレンたちを見て陰湿な笑みを浮かべている。どうもそれなりにいい身分の出身である彼らは庶民の中でも底辺寄りでみすぼらしい恰好をしているカレンたちをドレスコードに見合わないとみなしているようである。その小物臭い上流階級特有の仕草はハルトの怒りの琴線に触れた。


 「悪い。ちょっと席外すわ」


 せっかくの会食の場に水を差されたようで腹を立てたハルトは同席していた皆にそう言い残すと手にしていたナイフとフォークを皿の脇に乗せると席を立った。席を離れたハルトは懐から小銃を抜いて空砲用の弾を一発込めると男女の傍におもむろに近づいて耳を伏せ、銃口を彼らの足元に向けて空砲を打ち放った。空砲は戦場と紛うほどの爆音を響かせ、暴圧で周囲を沈黙させる。


 「今度こっち見て笑うようなことしてみろ。次はこんなもんじゃ済ませないからな」


 ハルトは耳を絞って怒りの意を示しながら男女を睨みつけ、見せしめにするかのように忠告した。男女は予想外の反撃に硬直し、思考が停止した真顔で首を縦に振って忠告に従う意を示した。


 「ただいま」

 

 用を済ませたハルトは銃を懐にしまうと何事もなかったかのように席に戻ってきた。アーサー、ロレント、ノエルの三人は初めて目にするハルトの一面に圧倒されるばかりであった。


 「いやー、出禁食らっちゃったなぁ」

 「あんなことすれば当り前だろう」


 会食後、会計を済ませたハルトたちは店の意向によって発端となった男女ともども今後の店への出入り禁止をを言い渡されてしまった。

 しかし味と寮には大満足であり、禍根を残すようなこともなかったのでハルトたちは何一つ後悔するようなことはないどころかむしろ清々しさすら感じていた。そもそもハルトとループスはそもそも一回きりの利用のつもりであり、カレンたちもこれが最初で最後だろうと考えていたため出禁を食らったこと自体大した問題ではない。


 

 「それはそれとして、また稼ぎ直しだな」

 「思ったよりも派手に消費してしまった……」


 ハルトとループスはたった一夜でクエストで稼いだ報酬金のほとんどを使い果たしていたのであった。

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