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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
13章 アリア・クエスト
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一緒にクエスト

 アリアがカレン家の家事に奮闘している頃、ハルトとループスはカレンと共にクエストを探して冒険者ギルドの掲示板とにらみ合っていた……はずであった。


 「可愛い~!」

 「髪もサラサラ、肌も綺麗で羨まし~」

 「うあぁ……」


 ハルトはカレンの友人の女冒険者二人にもみくちゃにされていた。彼女たちは皆ハルトのことを愛玩動物のように撫でまわして可愛がる。そんな中、当のハルトは多人数に集られてとても息苦しい思いをしており、そんな様子をループスはもどかしい様子で眺めていた。


 「はいはいここまでー」

 

 友人にハルトを存分に堪能させたカレンはハルトの両脇を抱えて物同然に没収した。


 「はい。というわけで今日はこの子たちも一緒にクエストに行くから」

 「マジ!?ハルトちゃんどこ行きたい?」

 「お姉さんたちがどこでも連れてったげるかんね~」


 カレンの友人たちはハルトのことを完全に子ども扱いしていた。そんな状況を見かねたループスはカレンの友人たちに接近し、わざとらしく咳き込んで存在をアピールした。


 「コイツは俺のパートナーなんだが?」

 「えっ?あぁ、なんかゴメン……」


 ループスはあからさまに独占欲をむき出しにしながらハルトの前に出た。そのあまりにもわかりやすい主張と圧力にカレンの友人たちは気圧されて思わず詫びを入れた。


 「で、今日はどのクエストに行くんだ?」

 「そうだなー……あっ、これとかよさそう」


 ハルトがクエストの催促をかけるとカレンは掲示板を眺めながらとあるクエストを選んだ。その内容とは街の農耕地帯を荒らす害獣の退治であった。


 「えー!?カレンマジでそれやるの?」

 「やるし。ハルトちゃんとループスさんもいいよね?」

 「俺たちは別に構わないぞ」

 「むしろどんとこいだ」


 カレンの友人たちは害獣退治に対して引き気味だったがカレンの意思は揺らがず、ハルトとループスもクエストの同行に進んで協力する姿勢を見せた。害獣退治はハルトとループス両名の得意分野であり、むしろ望むところであった。

 三人の反応を見たカレンの友人たちはそれに折れる形でクエストに同行することにした。


 かくしてクエストを受けたハルトたちはまず依頼人から話を聞くことにした。ハルトとループスはギルドの受付から聞いた情報を頼りに街の農耕地帯へとすっ飛んでいく。カレンとその友人たちは二人の足の速さに愕然とし、開いた口が塞がらなかった。


 「あの二人って本当に人間なん?」

 「さぁ……?」


 カレンたちを差し置いて先に依頼主の元へとたどり着いたハルトたちは早速話を伺うことにした。


 「俺たち害獣退治のクエストを受けたものなんだけど。害獣について知りたくて」

 「へぇー、お嬢ちゃんたちが?」


 依頼主の男はハルトとループスの容姿を見て首を傾げた。普通害獣退治のクエストを受けるのは力自慢の屈強な男たちがほとんどであり、二人はそこからかなりかけ離れていたためである。

 しかし彼女たちがクエストを受けた事実には変わりはないため、依頼主は害獣について持ちうる情報を提供した。


 「害獣……タテイノシシは夜に活発に動くやつでね。夜になると木から落ちた果樹を貪りに来るし、木の根っこをかじってダメにしてくるんだ」

 「じゃあ夜になればそいつは来るんだな?」

 「味を占めたやつはずっと来るようになるよ。ほったらかしにすると家族や仲間を連れてくるから早急に手を打ってほしい」


 依頼主の男は切実にハルトたちに頼み込んだ。聞く限りでは害獣タテイノシシは農家にとっては深刻な被害をもたらす存在とみて間違いはなさそうであった。


 「荒された跡ってまだ残ってるか?」

 「一応残してあるよ。なにか参考になるのなら見ていって」


 ハルトとループスは依頼主に案内されて彼の持つ農園を訪れ、タテイノシシが荒した痕跡を確認した。そこそこ大きな足跡が各地に確認でき、木の根元は皮がはがされたり土が掘り返されているのが目に見えてわかった。ハルトはそれを見てタテイノシシ退治のための作戦を思いつき、その内容をループスに耳打ちした。作戦を理解したループスは依頼主に一つ断りを入れた。


 「えぇ!?タテイノシシの血を周囲に撒く!?」

 

 依頼主はループスの頼みに耳を疑った。彼女とハルトは作戦を実行した後に倒したタテイノシシの血を農園に撒こうとしていたのである。それには彼女たちなりのちゃんとした理屈があった。


 「血の匂いがすれば少なくとも同族は寄ってこなくなる。野生動物なら仲間の血の匂いを嗅げば近くに天敵がいると思うはずだからな」


 血の匂いを漂わせるのは同族を寄せ付けないための『見せしめ』のためである。周囲の見た目は悪くなるが害獣によってもたらされる被害に比べればそんな問題は微々たるものであった。


 「わかった。許可するよ」


 依頼主は少し悩んだ末にハルトとループスに駆除後の追加対応を許可した。許可を取り付けたハルトとループスは農園の全体を見ながら次にタテイノシシが荒しそうな果樹を探した。


 「おーい!ハルトちゃーん!ループスさーん!」


 現場の下見を始めてから十数分、遅れてカレンたちがハルトとループスに合流してきた。先に作戦を決めていたハルトとループスはカレンたちに今回のクエストの段取りを説明した。  

 


 「えぇ……」

 「ハルトちゃんたちってなんていうか」

 「かなり大胆ってカンジ……?」


 ハルトとループスから作戦内容を説明されたカレンと友人たちは二人のワイルドな発想に戦慄させられたのであった。

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