ケモミミ少女の二人風呂
「先にお風呂貰ったよー。ありがとー」
「お先いただきました……」
入浴を終えたカレンとアリアが薄着で風呂場から戻ってきた。次はいよいよハルトとループスの番である。
「んじゃ、行ってくるわ」
ハルトはそう言うとループスと共に風呂場へと消えていった。
「こうやって二人で風呂に入るのも久しぶりな気がするなぁ」
「そうだな」
ハルトとループスは二人で同時に湯に浸かるこの光景にノスタルジーを感じていた。アリアが加わ手からループスはアリアと入浴することが増え、さらに最近は旅を続けていたこともあって沐浴で済ませることも多かったのである。
「なあループス。前から思ってたことをしゃべるんだけどさ」
「なんだいきなり」
「俺たちさ、『女』でいることに慣れすぎた気がしないか?」
ハルトの疑問にループスはドキッとさせられた。ハルトからの疑問に対して少なからず思い当たるところがあったためである。
「確かに……風でスカートを煽られたときに咄嗟に前を抑えるようになったな」
ループスは強い風が吹くと手でスカートを抑えるようになっていた。元々彼女はパンツが見えてしまうのを防ぐためにスカートの下にショートパンツを併せて着用している。にも関わらず隠すようになったのである。
「まあ俺が仕込んだことだしなぁ。やっとお前も女らしくなったっていうのかねぇ」
ハルトは感慨深そうに頷く。元々ループスの仕草は彼女の女としての無神経さを憂いたハルトが仕込んだものであった。
「そういうお前は俺と再会する前から女に染まりきっていたようだが?」
「まあいろいろあってさ……男としての尊厳がなくなったっていうか……」
ハルトはソルシエールでループスに再開する以前の出来事を思い出していた。そこでの体験はループスに語ったことは一度たりともない。
「何があったのかは知らんし聞くつもりもないが、どうせお前のことだから可愛い可愛いって持て囃されてその気になっちゃったんだろ」
「うっ……」
ループスの指摘はハルトの図星を突いていた。何も言っていないにも関わらずこの鋭さである。
「まあでも俺の見た目が可愛いのは事実じゃん?最初はそう言われるのに抵抗あったけどさ、あんまり言われすぎると感覚が麻痺してくるっていうか……」
ハルトの思考は単純であった。褒められたり甘やかされたりするとすぐに絆されてしまうのである。
「最近なんか特にヤバくてさ。女同士ならともかく、男から『可愛い』って思われたくなっちゃって……」
「うわぁ……」
ハルトは精神が肉体に引っ張られて無意識だと完全に女子のそれになってしまっており、それを聞いたループスは思わずドン引きしてしまった。
「俺、たぶん男に戻ったとしても一生今の仕草を引きずってると思う」
「なんかそういう想像できるな……」
ハルトは自分の人格が外見に引っ張られて完全に変異してしまったことを嘆く。なんなら彼女は自分の本来の姿が思い出せなくなっているほどであった。
「そういうループスはあんまり変わらないよな」
「外見が外見だからな。お前ぐらい幼い見た目だったら今頃お前みたいなことをしていたかもしれんが……想像すると恐ろしいな」
ループスは外見は『大人の女性』であるため、ハルトのような思い切ったことはできない。が、もし自分もハルトと同じぐらいの外見に退行していたらきっと彼女と同じようなことをしていたことは容易に想像できてしまった。
「でもさ、なんだかんだこの姿になってよかったよな」
「それはそうだ」
外見が変化したことに対して結果的に満更でもなく、むしろ好意的に捉えられているのはハルトもループスも同じであった。
こうして、ハルトとループスは湯にのぼせるまでこれまでのことを思い出して感傷に浸ったのであった。




