花の町ブルームバレー
お待たせしました!
今回からブルームバレー編が始まります!
「おぉー!ここがブルームバレーか!」
フィリアがいた町を出て数日、目的地を示す看板を発見したハルトは歓喜の声を上げた。ここがフィリアの言っていた花の町ブルームバレー、一年中鮮やかな彩りが尽きることのない巨大な花畑のある観光地である。
ハルトは意気揚々と看板の下をくぐり、ブルームバレーへと足を踏み入れた。
初めて踏み入れる町並みは花を前面に押し出した装いでとても華やかであった。道沿いには色とりどりの花が植えられ、民家の玄関には花をあしらったリースが飾られていた。
町中は仄かに甘い香りが漂い、そこは誰であっても『花の町』であることを感じられる場所であった。
「よっしゃ!まずは宿探しだな」
ハルトは滞在拠点とするための宿を探し始めた。その道中もやはり狐の耳と尻尾がついた彼女の姿は町の人々の注目を集めた。もうそんな目線など意にも介さずハルトは町中を歩きながら散策するのであった。
観光客が訪れることを見越しているのか、通りには飲食店や土産屋が多く見受けられた。もちろん宿もあっさりと見つけることができた。むしろ何件も宿が並んでいてどの宿を取るか迷うぐらいであった。
こうなれば日替わりで宿を変えてみるのも悪くないだろう。そう考えたハルトはとりあえず最初に視界に入った宿屋を取ることにした。
「とりあえず一泊で」
「ご利用ありがとうございます」
ハルトはあっさりと宿を取ることができた。宿を営む者同士で客の取り合いに躍起になっているからか、宿泊費はかなり良心的であった。寝床を確保したならやることは一つ、ハルトは日が暮れるまでブルームバレーの町を散策することにした。
時刻は午後二時、花畑を見に行くには時間が足りないような気がしたハルトは後日に回すことにして観光客向けの店を見て回った。遠くでは人々が張り上げる声が聞こえる。どんな言葉を発しているのかまでは聞き取れなかったがきっとなにか催し事をしているのだろうとハルトは思うことにした。
土産屋には押し花や香水、茶葉などの名産品が多数並んでいた。中でも特にハルトが興味を示したのが香水であった。
「なあなあ、これって何の香りなんだ?」
「この町の花畑に咲いてる花の香りです。香りによって液の色も違うんですよ。試しに嗅いでみますか?」
土産屋の売り子に話を聞きながらハルトは様々な香水を試した。香りには気分を変える不思議な効力があった。気分が高揚したり、逆に落ち着いたり、中でも特に気に入ったのは気分を落ち着かせる香りを放つ青い色をした香水であった。
「これ、なんだか気分が落ち着いていいな」
「お目が高いですね。これはここにしかない青い花を使った香水で特に人気なんですよ。夜寝る前に付けるのがおすすめですよ」
青い香水はこの町の特産品らしかった。魔法と機械に精通したハルトであったが自然科学には疎く、香水の香りで気分が変わるのはとても興味深かった。
「他の香水にはどんな効果があるんだ?」
ハルトは興味の赴くままに売り子に質問攻めをした。売り子は嫌な顔一つせずハルトに香水の効力を説明しつつも販促を進めた。それもあってかハルトは香水を購入することに決めた。
「じゃあこの青い奴一本買うよ。いくらなんだ?」
「四千マナになります」
値段を聞いたハルトは驚いて耳をピンと立てた。さっき取った宿泊予定の宿の費用が一泊千マナ、その四倍はどう考えても破格であった。とても庶民が気軽に手を出せるものではない。
そんなハルトの姿を見てその耳と尻尾が飾りではないことを確信した売り子もまた驚いて目を見開いていた。
「……やっぱり買う!」
少しためらったものの、結局ハルトは香水の購入を決断した。彼女は値が張ろうともいいと思ったものは手に入れたかった。その香水にそれだけの価値を見出していた。
「ありがとうございました」
ハルトは購入した香水の使い方、使うタイミングを売り子から教わるとそれが入った小瓶をバッグに詰め込み、次なる見どころを探してブルームバレーの町を練り歩くのであった。
ブルームバレーで起こる出来事。そこでハルトは何を思い、どう行動するのか……
お楽しみに!