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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
12章 黒翼の紋章
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アリアの精霊ビシャス

 「なあアリア。お前についてる精霊ってお前の意思で外に呼び出せるんだよな?」

 「わからないです……試したことないから……」


 あてのない旅の道中、ハルトはふとした疑問をアリアに投げかけた。アリアが契約している精霊ビシャスはアリアの呼び声に応じて彼女の背中から出現した。つまりその気になれば彼女の呼び声一つで精霊が出せるはずであった。


 「それは興味深い。一度試してみてくれ」


 アリアの精霊についてはループスも興味津々であった。二人に詰め寄られたアリアは物は試しと上着を脱いで背中を露出させるとビシャスを呼び出そうと試みる。

 一行は小休止も兼ねてその場で足を止めた。


 「ビシャス、出ておいで」


 アリアがその名を呼ぶとビシャスはそれに応じるようにアリアの背中から抜け出してその姿を現した。ハルトの推測通り、ビシャスはアリアの意思一つで呼び出すことが可能であった。

 アリアに呼び出されたビシャスは契約者からの指示を待つようにその場でじっと待機する。ハルトとループスはそんなビシャスの姿をまじまじと観察した。

 待機しているビシャスからはわずかではあるが呼吸をする音がハルトの耳には聞こえた。一方で実体を持っていないせいか体臭などは皆無であり、ループスの嗅覚をもってしても認識することはできなかった。


 「動かないな」

 「アリアの指示を待っているのか?」


 ビシャスは独特な前傾姿勢を維持したまま微動だにしない。その様子はアリアからの指示がなければ絶対にここから動かないと言わんばかりであった。


 「ビシャス。そこにいる二人に手を振ってみて」


 アリアはビシャスに簡単な指示を送った。ビシャスは何も声を返さないものの、ハルトとループスの方へ振り向くと右手を振ってみせた。これによってビシャス自身に言語能力はないものの、人の言葉を理解し、意思の疎通は可能であった。


 「この二人は、私にとって大事な人……だから、私が命令しない限りは、絶対に攻撃しちゃダメ……わかった?」


 アリアがハルトとループスのことを紹介し、忠告するとビシャスは首を縦に振って頷いた。具体的な命令を理解できる知性も持ち合わせているようであった。


 「これぐらいならいうこと聞くんだな」

 「どこまでなら動かせるんだろう」

 「わ、私が指示すれば……たぶん、なんでもやってくれるけど……あまり長い時間外には……出せません」


 アリアはそう言うとビシャスを引っ込めて自分の背中へと戻した。過去の記憶を取り戻した今の彼女は自身の契約精霊であるビシャスのこともしっかりと把握できていた。


 「どうして?」

 「ビシャスは、背中にいるときは私の虚弱体質を肩代わりしてくれてるから……身体を離れるといつ私が気を失うかわからなくて……」


 アリアが健康体でいられるのはビシャスがその力で虚弱体質を抑制しているからであった。よって召喚によってビシャスが身体を離れるとアリアは昔の虚弱体質に戻ってしまうため、長時間ビシャスを外に出すことはアリアの命にもかかわるほどのリスクを負うのである。

 よってこれまでもよほどのことがない限りは外に呼び出すことはなかった。


 「じゃあ、もしビシャスが離れてるときにアリアが気を失ったら?」

 「わかりませんが……たぶん、自分から戻ってきてくれる……と、思います」


 過去に気を失った状態のアリアを発見した人々はハルトとループスも含めて一度もビシャスを目撃していない。アリアの推測通り、彼女が気を失うとビシャスは外に脅威がない限りは自分からアリアの背中に戻っていくからであった。


 「知れば知るほど面白いな」

 「どうして学校の先生たちは精霊のことを知らなかったんだろう」


 ハルトとループスは精霊に関する学問的認知が低い理由を知りたくなった。その意欲が魔法使いの血を滾らせ、その謎を解き明かしたくて仕方がなかった。

 そんなこんなでハルトたちは小休止を終えると再び歩みを進み始めた。

 

 「そういえばアリア、昔は魔法学校に行きたかったらしいな」

 「えっ。ああ、はい」

 「俺たちでよければ魔法のこと教えるぞ。これでもループスは名門校の卒業生だし、俺も卒業はしてないけど成績はよかったから教えられることはある」


 魔法学校に行って学問を学ぶことは奴隷になる前のアリアが夢見ていたことである。ハルトとループスは定住しない旅人である都合上、今はそれを実現してやることはできないが自分たちが教師の代わりとして魔法に関する学問を教えることはできた。


 

 「ほ、本当にいいんですか?」

 「まあ、それぐらいなら」

 「あ、ありがとうございます!」


 思いがけない形で願いが叶ったアリアは目を輝かせたのであった。

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