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人形祭の歴史

 マスカールの資料館なる場所に訪れたハルトたち一行はそこで人形祭についていろいろと調べていた。調べていくうちに人形祭、ひいてはマスカールの街自体の歴史が紐解かれていった。


 「その昔、この街は嵐や干ばつ、疫病に苦しめられており、災いをもたらす何かがこの地に住み着いていると考えられていた……」

 「その何かを鎮めるため、年に一度生贄として人の子を捧げていた……と」


 今でこそそんな面影は感じないものの、昔のマスカールには物騒な風習があったことが資料館の書物には記されていた。そこにはさらに続きがあった。


 「街の子が生贄として減っていくことに心を痛めた一人の男が人の子を模した人形を作り、それをその年の生贄として捧げた。すると翌年は嵐が訪れず、同じように人形を捧げるとさらに翌年には干ばつが解消し、そのさらに翌年は疫病が収束し、マスカールは平和な場所になっていった」

 「そしてその人形を作った男の功績と人形への感謝を込めてこの街では年に一度、生贄を捧げていたとされているこの時期になると祭りを催し、盛大に祝うようになった……」

 「なるほど、それが人形祭の起源ってわけか」

 

 人形を生贄とすることで災いを鎮め、街の子供たちを救った人物を称えるために祭りが催されるようになった。それがマスカールに伝わる伝承であり、人形祭の起源であった。


 「はじめは人形を一つ家の窓に飾り、それを生贄の代わりとすることで災いを避けるという意味合いで行われていたのが次第に盛大に祝うようになり、今の形になっていった……と」


 人形祭は最初から今の姿をしていたのではない。はじめは生贄代わりに家に人形を飾るだけの粛々としたものだったらしいが、次第に人形を目立つように煌びやかに仕立てるようになったことが発端となって人形師が人形製作の腕を競うコンテストへと発展し、人形に紛れることで災いをもたらす何かから子供を守るという目的で煌びやかな仮装をさせたことをきっかけとして人形に扮した子供たちの仮装の出来栄えを大人たちが評価する仮装大会へと変化していった。そして祭りを見物しに観光客が訪れるようになり、名産として人形が売られるようになった。

 マスカールは文字通りの『人形祭と共に発展してきた街』だったのである。街を支えてきた祭りがそれだけ盛大になるのも納得できた。


 「見てみろよ、ここに歴代コンテストの優勝者の名前が載ってるぞ」

 

 ハルトは資料館の一角に人形祭のコンテストで優勝を納めた人形師の名が年号別に刻まれているのを発見した。それによるとコンテストが開かれるようになったのは今から約三十年前のことらしく、祭りの歴史としてはまだ浅かった。

 コンテストの優勝者の名を眺めてみるが知っている名は皆無であった。そんな中、ハルトたちの知っている名が下段に刻まれていた。


 「ユリエス・ストラウス、ユリエス・ストラウス……」


 直近二年の優勝者としてユリエスの名が二度に渡って刻まれていた。彼はこのコンテストを二連覇しており、今年は前人未到の三連覇がかかっていたのである。

 ハルトたちはユリエスの三連覇に期待がかかる一方でレオナの名がここに刻まれるのも見てみたかった。



 「どっちにも勝ってもらいたいなぁ」

 「父さんは流石に母さんを応援するかな」

 「母さんがいい結果を残せますように」


 人形際の前日、ハルトたち一家はレオナのコンテスト優勝を祈願したのであった。

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