温暖な道中で
今回から第十一章が始まります。
陰気な雰囲気の話が直近で続いてたので今回は明るい話になる……はずです。
グラーシャを後にし、次の街を目指して歩くこと数日。ハルトとループスは比較的穏やかな気候の地域に足を踏み入れた。
「ふぃー……なんか暑くないか?」
「ずっとグラーシャにいたからなぁ」
ハルトは暑さを感じていた。今彼女がいる周囲の気温は決して高いわけではないがこれまで寒冷地であるグラーシャに滞在していた影響で身体がそれに適応してしまい、熱に対して敏感になっていたのである。
それはループスも同様であり、道中で小休止を取ることにした。
「流石にもう脱いでもいいだろこれ」
ハルトはタイツを脱ぐことを考えていた。元々寒さ対策として着用していたものだが温暖な気候の地では必要がない。それどころか下半身が必要以上に保温されて暑さを感じる要員となっていた。
寒さには強いハルトだが暑さには特別強くはない。少しでも熱を逃がすために着用していたタイツをその場で脱ぎ始めた。
「これが人前でスカートの中を見せるなと言っていた奴のやることか?」
「うるせぇ。今は俺たち以外誰もいないからいいんだよ」
「人が通ったらどうする」
「その時は通り過ぎるまでお前が隠しとけ」
ループスに対していろいろと理不尽を押し付けながらハルトはタイツとスカートを脱ぎ去り、これまでのようなショートパンツに履き替えた。ついでに上の服も着替え、生地の薄い軽装へと衣替えした。するとこれまでのような暑苦しさはなくなり、いくらか快適になった。
「お前がそれやるなら俺も衣替えしたいんだが」
「別にそれぐらいなら構わんぞ」
ループスからの申し出をハルトは承諾した。ループスが着替えている間、ハルトは人が通らないように見張りを買って出た。
見張りをしている間、人がまったく通らないことを察したハルトはループスの姿をまじまじと観察していた。
「でっか……」
ループスの脱衣中、彼女の豊満な胸を目の当たりにしたハルトの口からは思わず感嘆の声が漏れた。今まで厚着をしていて忘れかけていたがループスの胸はかなり大きい。彼女は着痩せするタイプだということが今になって発覚したのである。
「俺だって好きで大きいんじゃないんだからな」
ループスはハルトに小言を挟んだ。普段は女性的な恥じらいに欠けている彼女も自身の体形については思うところがあるようであった。
数分程度でループスは髪を後ろに束ねてまとめ上げ、ハルトと同等の軽装に衣替えをした。ハルトとのショートパンツの上にスカートを履いているか否か程度であった。
「今回はお前とお揃いにした……はず」
衣替えをしたループスはそう主張した。どこをお揃いにしたのかというとこれまでのようにスカートの中から尻尾を通すのではなく尻尾を上に乗せる形でスカートを着用し、以前ハルトから受けた指摘を反映する形になった。
「ループス。お前律儀だなぁ」
「お前の言うことならな」
こうして道中で衣替えを完了した二人は街を目指して旅を再開するのであった。




