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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
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幕間:風のいたずらから

今回は第十章の物語の本筋とは関係ない幕間の話になります。

 ハルトとループスがグラーシャに滞在中のとある日。その日は風が強く吹いており、グラーシャの寒気にも平然と耐えられる二人でも肌寒さを感じるほどであった。


 二人がグラーシャの街中を歩いている時のことであった。急に吹いてきた風が不意にハルトとループスのスカートを捲り上げた。ハルトは咄嗟にスカートを抑えて中を隠す仕草を取ったのに対し、ループスはただ呆然とその様子を眺めていた。


 「お前スカートの中見せびらかして恥ずかしくないのかよ」

 「別に。俺が自分から見せたわけじゃないし、それに見えたところでタイツだから問題ないだろう」


 スカートの中を隠そうともしないループスにハルトが尋ねるとループスはさも当然のようにそう答えた。

 その発言でハルトは思い出した。スカートを初めて着用したときから下にパンツを隠す何かを併せて着用する習慣を持っているが故にスカートの中を見せることに一切抵抗がない。ループス・ノワールロアとはそういう人物だったのである。

 このままではいろいろと問題があると判断したハルトはループスの考えを矯正しようと試みた。


 「あのな。普通女の子ってのはスカートの中を見せることに抵抗ってのがあるんだよ」

 「そうなのか?」


 ハルトの講釈にループスは首を傾げた。抵抗感や羞恥心というものが欠けていることはそれとなく理解できたとして、自分と同じ元男のハルトがそこまで理解を持っていることが不思議でならなかった。

 

 「お前よくそんなことわかるな」

 「そりゃあお前よりも女の子として過ごした時間が長いからな。それに……」

 「それに?」

 「なんか恥ずかしいだろう!?」


 ハルトはスカートの裾を抑えながら声高に主張した。そもそもまともにスカートを履いた経験のなかった彼女がそういった感情を抱くのは当然のことであった。


 「なるほど。確かにお前の反応を見たら普通は恥ずかしいものだというのがなんとなくわかった」

 「そういうことだよ。だからスカートの中はそう見せるものじゃない」


 ハルトからの講釈を受け、ループスは自分の反応に多少なりとも問題があったということを理解した。しかしその一方でループスの中にある一つの疑問が生じた。


 「そもそもなんでパンツを見られたら恥ずかしいんだ?」

 「は?」


 ループスの中に生じた疑問、それは『なぜパンツを見られることが問題なのか』であった。ハルトはそれがさも当然のように語ったが、ループスにはその理由がわからなかった。

 あまりに哲学的な疑問をぶつけられたハルトも思わず硬直する。


 「なぜ……?」

 「なにか理由があるだろう。それを知りたい」


 ハルトは返答に困ってしまった。スカートの中を見せたくない理由は自分の中に存在してはいるものの、それを上手く言語化することができなかったのである。


 「いや、なんかこう……あるだろう。肌に一番近いところだからとか」

 「そんなこと言ったら俺たちすでに尻尾が丸出しだろう」

 「確かにそうだけどさぁ、尻尾は隠しようがないものだし肌を晒してるわけじゃないから」


 尻尾は身体の一部であり、隠しようがないものだが毛に覆われていて地肌は見えないのでいわば髪の毛のようなものであるというのがハルトの見解であった。

 ハルトとループスは互いに自分の尻尾に視線を向け、これは別に見せて恥ずかしいものではないということを感覚的に認識した。


 「よそう。これ以上はただ不毛な話になるだけだ」

 「そうだな。とりあえずスカートの中はできるだけ見せないようにする」

 

 ハルトは議論を切り上げた。このまま続けても『どこまでなら見せても大丈夫か』という不毛な話に発展するだけである。結局なぜパンツを見せてはいけないのかという疑問への答えはわからずじまいだったが理屈ではなく感覚で理解した方がいいということを察したループスはそれ以上踏み込まないことにした。



 「お前そういうところだぞ」


 ループスが自分の尻尾でスカートを捲り上げてタイツを露出させているのを見たハルトはすかさず突っ込みを入れながらループスの尻を叩いた。指摘を受けたループスは何とも言えない表情になりながらスカートの中を見せないことに意識を向けるのであった。

今回で第十章は完結になります。

次回からは第十一章を開始予定です。

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