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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
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平和な大雪原で

 雪空の会との戦いが一端の決着を迎え、ようやくグラーシャで平和に過ごせるようになったハルトとループスは改めてこの街に来た目的である大雪原の観光を満喫していた。以前ここに足を運んだ時は生きるか死ぬかの極限状態まで追い込まれていたため観光の余裕などなかったが、いろいろと余裕のある今はじっくりとそれを楽しむことができた。


 野生動物も野放しになっている大雪原においては万一の事態を想定して冒険者を護衛につけるのが通例らしいが自身が冒険者であるハルトとループスにはそれが必要なかった。護衛いらずなのをいいことに二人は気ままに大雪原を歩き回った。

 特にハルトは一面に広がる白銀の世界にかなり気分を高揚させていた。というのも単にそれが絶景だからというだけでなく、その雪の中に飛び込みたいという衝動的欲求を抱えていたからである。ハルトが雪に飛び込むことに対して並々ならぬ熱意を持っていることを知っているループスは隣の彼女がいつ雪の中に消えないかと警戒せずにはいられなかった。


 「父さんと母さんはこの大雪原を二人で見たのか」

 「幻想的だな」


 自然のみが作り上げたとは思えない幻想的な景色にハルトとループスは目を奪われた。夕刻、沈みゆく太陽に照らされて茜色にキラキラと輝く大雪原はデートで見るには十分すぎるほどの絶景であった。


 「前はここで血眼になって熊を狩り倒してたんだよな」

 「余韻を壊すようなことを言うな」


 ハルトは初めて大雪原に足を運んだ時のことを思い出した。その時は飢餓に陥っており、すぐにでも栄養を取らなければそのまま外で飢えて凍死してもおかしくない状態であった。武器を持っていなければそれこそこの雪原で他の野生動物の餌になっていた可能性だってあったのである。 


 「話してたらもう一回食べたくなった」

 「奇遇だな。俺もだ」


 語らっている内に二人は熊肉の味を思い出した。癖はあるが旨味に溢れていたあ独特な味を今度は自分たち素人の大味な調理ではなく、ちゃんとした料理人によって調理された状態で味わってみたくなった。 

 そうとなれば二人の行動は早かった。ループスが自慢の嗅覚を頼りに熊の居場所を探り当て、ハルトが銃を使って遠距離から安全に仕留める。ものの一時間程度で大型の熊が一頭仕留められた。以前仕留めたものより小柄ではあったがそれでも可食部は十分に確保できる個体であった。



 「さて、これを適当な料理人のところに届けに行くか」

 

 丁寧に血抜きをした熊の亡骸をズルズルと引きずりながらハルトとループスは料理人を探してグラーシャの街へと戻っていった。街を練り歩くその姿は街の人々から、そして同業者の冒険者たちからも異様に見えたのであった。

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