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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
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フラムとの決戦

 レジスタンスと雪空の会の信徒たちが表で競り合っている裏でハルトは先日発見した狙撃ポイントに位置取っていた。屋根の上に登り、その上に寝そべって積もった雪の中に身を隠すと大型銃を構えて教会にその照準を向けた。黒い大型銃の銃身には白い布をかぶせ、外から見えにくくなるように簡易的な迷彩を施した。雲に覆われて日光が遮られた空模様の下で雪に隠れたハルトを目視で発見することは常人には不可能であった。その誰にも気づかれない絶好の状態を維持しながらハルトは銃のスコープを覗き込み、狙撃のタイミングを待った。


 その頃、時を同じくしてループスは単身教会へと乗り込んでいた。フラムとの戦闘を担い、ハルトが教会の外壁を稼ぐまでの時間を稼ぐためである。ハルトが一人で勝てない相手に自分一人で勝てるとは到底思っておらず、限界を感じたら命を優先して撤退するつもりであった。

 ループスは教会の入り口を開き、奥へ奥へと踏み入る。来訪者に気づいたフラムは仮面で顔の上半分を隠すと腰を上げてゆっくりと歩みを進めてループスの正面から向かい合う。


 「今日は狼一人であるか。狐はどうした」

 「用事で席を外している。用が済んだらこっちに来るそうだ」


 フラムが語り掛けるとループスはそれっぽいことを口走ってその場を取り繕った。ハルトが用事でこの場に来ていないのは事実だがその用事が教会の破壊工作であるとは言えるはずがなかった。


 「まあよい。私はちょうどお前に興味がある」


 フラムは長柄の槍を構えるとその切っ先をループスの足元に向けた。フラムの槍の構えは堂に入っており、それがその場数日で拵えた付け焼刃でないことはループスの目にははっきりとわかった。


 「ほう。面白い」

 「そちらも剣術の心得があるのだろう。手合わせ願おうぞ」


 フラムが魔法一辺倒かと思いきや武術にも精通していたことはループスにとっては予想外だったがそれが逆に彼女の闘志を燃え上がらせた。

 ループスは剣を鞘から抜き、刀身を赤白く発光させて臨戦態勢に入った。フラムの構えは大きく見得を切ったスタイルなのに対し、ループスの構えはすぐに動きに転じられるように軍人仕込みの実戦重視スタイルである。

 

 両者は武器を構えたまま間合いを図りながらにらみ合い、ループスの履くブーツの踵に付いたスパイクとフラムのヒールが床を叩く音が静かな教会に響く。得物のリーチの関係でこの状態ですでにフラムが一歩リードした状態である。だが今のループスの本命はハルトのためにフラムの気を引いて時間を稼ぐことであり、フラムを倒すことではない。目いっぱい時間を使い倒すつもりであった。


 「どうした。なぜ来ない」


 ループスが能動的に仕掛ける素振りを見せないことを訝しんだフラムは何か裏がある可能性を勘繰ってハッタリをかけた。狙いがバレるとマズいループスはすぐにそれをフォローできる理由を見繕う。


 「槍を相手に正面切って踏み込めるはずがないだろう」


 ループスはそれらしい理由をつけてその場を取り繕った。こちらは剣なのに対してあちらは長槍、こちらの間合いに持ち込むには慎重にならざるを得なかった。それに加えて相手は経験者、そう簡単に間合いに踏み込ませてはくれない。


 独特なステップを踏みながらループスは接近のタイミングを計った。すぐにステップの癖を見抜いたのか、フラムはループスの進行方向に向かって置くように槍の切っ先をぶつけて牽制を仕掛ける。フラムの打点の低い槍捌きは地を這うように低い軌道で移動するループスの動きにとって非常に相性が悪く、ループスは何度もその場で足踏みをさせられた。


 「踊りにしてはずいぶんと滑稽ではないか」

 「これが踊りに見えているなら一度本物を見た方がいい」


 攻めあぐねて足踏みを繰り返すループスをフラムが挑発するとそれに対してループスも負けじと悪態をつく。そう簡単に間合いに踏み込まれないと理解したフラムは槍を振るい、ループスの機動力を封じるように足元を手中して狙いはじめた。

 槍の切っ先が床を掠めると切り付けられた面が青白く発光する。どうやらフラムの槍はただの槍ではなく、その切っ先に魔力が込められているようであった。当たれば一撃必殺というのはお互いに同じであることを察知したループスはより慎重に立ち回ることを強いられた。


 

 「ッ!?」


 フラムが優勢のまま戦闘を進めていたその時であった。突如として教会の天井付近の壁が音を立てて崩壊し、その壁面が床へと落下してきた。教会の外で破壊工作を行っていたハルトがついに引き金を引いたのだ。

 突然吹き抜けてきた冷たい雪風にフラムは動揺し、狙いが果たされたループスは口元にわずかな笑みを浮かべたのであった。

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