表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
200/383

強敵の登場

 「ダメだ。匂いも全く残っていない」


 フラムの足取りを追跡しようと試みたハルトだったがループスの嗅覚をもってしても全くそれを探れなかった。フラムの転移魔法は完璧な精度を誇り、視覚以外の情報から追跡することは不可能であった。


 「なんて奴だ」


 自分と対等以上の能力を持った強敵の登場にハルトとループスは戦慄した。今回の黒幕はこれまでのような能力に物を言わせた力押しが通用する相手ではなかったのである。さらに向こうはこちらの拠点を知っている上に転移魔法を使用できるということ以外に手の内がわからない。下手にこちらから仕掛けても返り討ちに遭うリスクの方が高かった。


 「どうすればいいんだ?」

 

 ハルトとループスは焦らされた。情報戦では向こうが一歩リードしている状態である。このままいくとこちらが負ける可能性が高い。単純な手数で負けている上に情報戦でも負けているとなると勝ち目はなかった。

 

 「でも向こうは俺のこと知らないんだろう?」

 

 ループスは確認するようにハルトに尋ねた。彼女は偶然のおかげかフラムと顔を合わせてはいない。


 「顔とかは見られてないけどお前の存在は知ってるみたいだぞ」

 「じゃあゆくゆくは……」

 「お前にも接触してくるかもな」


 ハルトがフラムと出会ったとき、フラムは狼という単語を口にしていた。つまりループスの存在自体は知っているのである。


 「どうやら向こうも俺たちのことを邪魔だと思ってるみたいだな」

 「お互いさまってことか」


 ハルトたちが雪空の会に敵意を向けているのと同じように、雪空の会のトップであるフラムもハルトたちのことを煙たがっていた。

 対立構造はもはや個人対組織ではなく、個人対個人の域にまで到達していた。


 そんな中、突如としてハルトたちの前に再びフラムがその姿を現した。何の前触れもなく転移してきたのに驚いたハルトとループスは驚いて全身の毛を逆立たせる。


 「やあ。驚かせてしまったかな」


 フラムは意気揚々と二人に挨拶した。ハルトと初めて会ったときとは口調が違う、むしろこちらがフラムの本来の口調である。

 ループスは初めて見るフラムに対して警戒して剣の柄に手をかけた。


 「狼よ、あまり気を立てるな。私は戦いに来たのではない」


 初対面から敵意を向けるループスに対してフラムは両手を上げて戦意がない意思表示を見せた。それ自体に偽りはなく、それを汲んだループスは疑いつつも剣から手を離した。


 「今度は何をしに来たんだ?」

 「私の居場所を教えに来た。私だけが一方的に君たちの拠点を知っているのも不公平だと思ってな」


 フラムは挑戦的な行動に出た。自分が優位になっているところにわざわざ情報を与えることで均衡を取ろうとしてきたのである。わざわざ赴くことで余裕と力の差を見せに来たのである。


 「私はグラーシャの真ん中にある雪空の会の教会にいる。気が向いたらいつでも来るといい」

 「おい、ちょっと待て!……消えやがった」


 フラムは自分の居場所をハルトとループスに伝えると再び姿を消してしまった。ループスはわずかな時間の間で覚えたフラムの匂いを辿ろうとするものの外にはまったく匂いが残っておらず、やはり追いかけようがなかった。


 

 「私の街で好きなようにはさせぬぞ」


 誰もいない夜の教会の中でフラムはハルトとループスに敵意を燃やした。片や街の中の自分の優位を守るため、片や個人の報復のため。こうして二人のケモミミ少女と雪空の会の司教との本気のつぶし合いが幕を開けるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ