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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
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フラムとの接触

 雪空の会の教会を離れ、フラムは一人グラーシャの街中に赴いていた。普段つけている仮面を外して庶民の姿を装い、言葉遣いを不自然なところなく使い分けることができたために通りすがる人の誰もが彼女を雪空の会の司教だと見破ることはできなかった。


 「狐の女の子を探しているのですが、どこにいるか知りませんか」

 「狐の女の子だら冒険者ギルドにいるのを見だ人がいるって聞いだぞ」

 「ありがとうございます」


 フラムは通りすがりの男に頭を下げ、彼の言葉に従ってグラーシャの冒険者ギルドへと向かった。そこはハルトとループスがグラーシャでの活動拠点としている場所であった。グラーシャの街はフラムの支配下であり、その地理情報すべてが彼女の中に完全に記憶されている。誰かの助力なしでも迷わずたどり着くことができた。


 冒険者ギルドの施設を訪れた時、そこには誰もいなかった。きっと間が悪かったのだろうと考えたフラムは冒険者ギルドの中を回りながらハルトが戻ってくるのを待つことにした。

 今の冒険者ギルドの中はハルトとループスが居住空間にしているため、廃墟も同然だった状態からある程度は改善されて清潔な状態になっていた。床には二人が寝るときに使っている毛布が無雑作に置かれている。浴室にも少しばかりの水が滴っており、最近使用された形跡もあった。


 冒険者ギルドの中を見ながら待つこと数十分、ハルトが軽やかな足取りと共に冒険者ギルドへと戻ってきた。フラムは備え付けられた椅子に腰かけてハルトがこちらに気づくのを待った。するとハルトはすぐにこちらを待つように佇むフラムの存在に気付いた。


 「あら?どちら様?」

 「初めまして。私はフラム。貴方を探していました」


 フラムは初めて見るハルトの姿や挙動を注意深く観察した。彼女に生えた狐の耳と尻尾は紛れもない本物であった。


 「そうか。俺はハルト・ルナールブランっていうんだ」


 ハルトは素性を隠して接触するフランに対して何の疑いもなく自己紹介を返した。


 「いつも狼も一緒にいると聞いたのですが」

 「アイツか?アイツならちょっと野暮用で出かけてるからもうちょっと遅くなるぞ。だから今は俺一人だ」


 それはフラムにとっては好機であった。多くの時間をループスと二人一組になって行動しているハルトと一対一で会話ができるまたとないチャンスであった、

 

 「そうですか。ハルトさんに聞いてみたいことがあります」

 「俺に?」

 「はい。貴方はなぜ雪空の会と戦っているのですか?」


 フラムはハルトが雪空の会を敵視している理由について探りを入れた。フラムにとって最大の脅威足りうる存在は今まさに目の前にいるその少女であり、彼女がなぜ反抗的な態度を見せるのかが知りたかった。敵対する理由を知ればそれに応じた対応策を講じることも可能であった。


 「そりゃあ自分の見た目に文句をつけられれば腹が立つってもんだろう。耳も尻尾もちゃんと身体から生えてるのに奴らは贅沢な飾りだっていうんだからさ」


 ハルトは憤りながらその動機を語った。他にも稼ぎを許してくれないから旅費を溜められない、信徒たちが冷遇するせいでまともな食事を振舞ってもらえないなど他にも理由はあったが最大の理由は自分の外見というどうしようもない要素に文句をつけられたことであった。


 (なるほど。彼女はずいぶんと自分の容姿に自信を持っている)


 フラムはハルトの語りから彼女がプライドの高い自信家であり、それを傷つけられるのを嫌う性格であることを推測した。彼女が雪空の会を目の敵にしているのも信徒たちに自分のプライドを傷つけられたことへの報復の一環に過ぎないことまでは想像することができた。


 「ずいぶんとひどいことを言う方がいるものですね」

 「そう思うだろ?」


 フラムが同情するような反応を見せるとハルトはすぐにそれに乗っかった。それを見たフラムはハルトが単純で直情的な性格であるということを確信した。


 「道は険しいかもしれませんが、報われるといいですね」


 そう言い残すとフラムは魔法を無詠唱で発動すると冒険者ギルドの中から姿を消してしまった。雪空の会の最高責任者であるフラムからこれ以上自らの率いる組織を貶めるような言葉は口にできず、かといってハルトの神経を逆撫ですることもしたくない。よってフラムに取れる最善の行動は下手なことを言わずにその場を去ることであった。

 唐突かつ一瞬の出来事に目を疑ったハルトは慌てて外に飛び出すがフラムの姿はない、彼女の足音が聞こえないどころか雪の中に足跡一つも残っていなかった。



 「まさかアイツが……」


 フラムが転移の魔法を使ったことを理解したハルトはさっきまで目の前にいた女性が雪空の会の司教であったことに衝撃を受けたのであった。

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