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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
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真っ白な雪道

 グラーシャを目指して歩き続けること十数日、ハルトとループスの視線の先にある道が白くなってきていた。噂に聞く雪原地帯がすぐそこにあったのである。


 「すっご……どこまで見ても雪じゃん!」

 「そりゃあ雪原っていうぐらいだからな」


 ハルトは初めて見る一面の雪景色に興奮を隠せなかった。雪を見ること自体は別に初めてではない。しかし彼女が生まれ育ったプリモも、在籍していた魔法学校があった地域もこれほどまでに雪が積もることはなかったのである。

 

 ハルトは好奇心のままに雪原地帯に向かって駆けた。ループスも慌ててハルトの後ろを追いかける。真っ白な毛に覆われたハルトを雪道で見失おうものなら本当に発見が困難になりかねないためであった。

 

 間近で見る雪道は人が通るであろう一本道だけは雪掻きされているものの、そこ以外はハルトの膝丈ほどまで雪が積もっていた。そんな雪の中にハルトは興味本位で足を踏み入れる。軟らかい雪の中に足が沈んでいく感覚にハルトはすっかり夢中になり、何度も雪の上で足踏みを繰り返した。

 耳をピコピコと上下させているハルトの楽しげな姿をループスは保護者気分で見守る。


 雪を踏みしめている内にハルトの中に何とも言えない欲求が沸き上がってきた。この雪の中に頭から飛び込んでみたくなったのである。しかしそれを実践するのは雪の深さが足りない。このままでは雪に突っ込むと同時に地面に頭をぶつけることになりかねなかった。


 「もっと奥に進もう」

 

 ハルトは目を輝かせ、欲求のままに雪掻きされた道を進みながらより深く雪が積もっている場所を探した。ループスには彼女の行動理由がさっぱりわからなかったが、目的に向かっているだけこんなところで寄り道をされるよりはマシだろうと考えてその後ろをついて歩いた。


 奥へ奥へと進むほどに寒さはより厳しいものになっていく。だがハルトはそれをものともせずに進んでいった。寒さ対策を万全にしているのもあったが、それを差し引いても寒さに対して強くなっていたのである。

 ループスも同様に寒さに対して強くなっていることを実感していた。


 いくらか進んだところでハルトは急に足を止めた。何かあったのかと不安を煽られたループスはハルトに声をかける。


 「どうかしたのか」

 「ここなら……いけそうだな」


 ハルトは尻尾を大きく振りながら目を輝かせていた。膝を折って身を屈め、大きく跳躍すると深く積もった雪の中へ頭から飛び込んでいった。上半身がすっぽりと雪の中に埋まり、逆立ち状態で足と尻尾だけが見える状態になっていた。

 彼女のあまりに唐突な奇行にループスは目を疑った。

 

 「何やってんだお前は」

 「めっちゃ楽しいぞこれ!お前もやってみろ」

 「いいや、遠慮しとく」


 自らの奇行の成果に満足したのか、ループスに雪の中から引き抜かれたハルトは大はしゃぎであった。

 

 「そもそもなんであんなことを」

 「わかんねえけど……雪を見てたらウズウズしてきてさ、なんか無性にやってみたくなったんだ」


 ハルトは首を振って顔についた雪を跳ね飛ばすと動機を語った。そもそもハルトは思いつき重視で行動する人間だが今回は特にその傾向が強かった。


 「雪の中の音もちゃんと聴き取れるんだぞ!やっぱこの身体すごいな!」


 雪に顔を突っ込んだ時、ハルトはその中の音を聴き取ることができた。優れた聴覚はここでも健在であった。

 嬉々としながらループスに自身の体験を語るハルトだったが唐突に耳を立てて周囲の音を探るような仕草を見せた。また衝動的なものかと最初ループスは呆れ気味に見ていたが、どうやらそういうものではないようであるとわかってくるとすぐに考えを改める。


 「何が聞こえたんだ」

 「足音だ。人の足音が聞こえる」


 ハルトに耳には人が雪を踏みしめる足音が聞こえていた。その音は少しずつ大きくなっているものの、それと同時にペースが徐々に落ちていた。

 そこからハルトはとある事態を推測する。



 「足音の主が衰弱してる。このままじゃヤバいかも」 


 姿も形もわからぬ足音の主が衰弱している可能性がハルトの脳裏を過った。もしそうだとすれば足音の主の命に危険が及ぶ可能性が高い。

 雪が降りしきる曇り空の下、ハルトとループスはわずかな手掛かりを頼りに足音の主を探すのであった。

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