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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
10章 辺境の街グラーシャ
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換毛期:冬毛

今回から第十章が始まります。

 「なッ……!?」


 空気がすっかり冷たくなってきたとある日の朝、ハルトは寝癖を直している最中に思わず絶句した。尻尾の毛がブラシに引っかかってごっそりと抜け落ちていたのである。

 毛が無くなってしまったのかとハルトは慌てて己の尻尾を見直すがそこから毛が無くなっているなとということはなく、むしろそこにはこれまで以上に長く立派な毛が生えそろっていた。彼女は寒冷地に適応するために耳と尻尾が夏毛から冬毛に入れ替わっていたのである。元々長く大きい彼女の尻尾は長い毛が膨張してさらに大きく見えた。


 「おぉ……!これが冬毛ってやつか」


 動物には夏毛と冬毛が存在することはハルトも知っていた。それがまさか自分にも適用されることにハルトはある種の感動すら感じていた。

 毛の手触りは夏毛よりもさらにふわふわで柔らかく、温かさを感じるものになっていた。ハルトはそれが自分のものだとはとても信じられなかった。


 「ということはループスも……」


 咄嗟に何かを勘繰ったハルトは毛布にくるまって眠ってるループスから毛布を剥ぎ取って彼女の耳と尻尾を確認した。


 「寒っ……」


 案の定、ループスの耳と尻尾も冬毛に生え変わって膨張していた。相変わらず手入れが下手なループスに代わってハルトはループスの耳と尻尾にブラシをかけることにした。

 おもむろにブラシを手に取り、ループスの尻尾を掴むと引っ張り伸ばして根元からブラシをかけ始めた。ループスもくすぐったく感じはしたものの嫌がりはせず、引っぺがされた毛布を再び手繰り寄せて上半身に羽織ると横になったまま膝を曲げて姿勢を変え、尻尾のブラッシングをハルトに委ねるような体勢を取った。


 ハルトがループスのブラッシングを始めること数分、ループスの尻尾からは夏毛がごっそりと抜け落ちて少し癖のあるふわふわの冬毛だけが残った。


 「終わったか?」

 「ああ、終わったけどさ……」


 ループスの尻尾から抜け落ちた毛の量を見たハルトは戦慄せずにはいられなかった。自分のものと比べて半分程度の長さしかないそれから自分と同等の量が抜け落ちていたのである。にも関わらず毛の量は全く減っていない、どころか増えているようにすら見えた。


 「どこからこんなに毛が出てくるんだよ」

 「俺の尻尾からじゃないのか?」

 「いやそれはわかってるんだけど」


 冬毛に生え変わった自分の尻尾を眺めながらすっとぼけた発言をするループスにハルトは突っ込みを入れた。出処は明白であったがそこから出てくる量が信じられないという意図がどうやら伝わっていなかったようである。


 「一生姿が変わらないもんだって思ってたけど、こういうところは変わるんだな」


 ハルトは感慨深くつぶやいた。魔法によって変異させられた身体は成長が止まり一生このままである。しかし毛が伸びたり生え変わったりする程度の変化はあるということがこれではっきりと分かったのである。


 

 「のんびりするのはこれぐらいにして、今日も歩くぞ」

 「はいはい」


 ループスに出発を催促されたハルトは野営用の設備を片付けてグラーシャへ向けて足を進めるのであった。

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