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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
9章 狐の恋慕
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暖を取る発明

 廃材集めを行った日の翌日、ハルトは机に突っ伏した状態で目を覚ました。機械いじりに夢中になるあまりにすっかり時間を忘れていたようである。

 机の上には昨夜作った部品の数々がまばらに散乱している。それを見たハルトは作業をどこまで進めたのかを思い出した。あとは個として完成した部品を組み合わせていき機械として仕上げるのみである。


 ハルトは部品を設計図通りに組み合わせて機械いじりを進めた。部品が組み合わさり、徐々に円柱状の箱のようなものが出来上がっていく。

 内部機構が完成し、それを覆うようにガワを組み上げる。ハルトの特製『火を使わずに暖を取れる暖房装置』の完成であった。


 ハルトが完成した装置に仕込まれた仕掛けを作動させると、彼女の設計思想通りに動いた。しかし一つだけ欠けているものがあった。それはこの機械を動かすための『動力』である。これ単体で動かしても熱が発生することはない。

 だがそこはハルトの設計通りであり、ハルトはあらかじめ別で作っていたバッテリーを暖房へと挿入して再び仕掛けを作動させると装置は熱を発生させた。その熱量は高く、ガワの外からでも温かさが伝わるほどであった。

 ハルトは見事に発明を成功させたのである。


 「ほほっ。やっぱり俺は天才だったか」


 ハルトは自惚れずにはいられなかった。耳がピンと立ちあがり、尻尾が左右に激しく揺れる。特に尻尾の揺れ方たるや、周囲の埃を宙に巻き上げんばかりであった。

 そして彼女は自らの革新的な発明と技術を誰かに見せたくて仕方がなかった。


 「そういえばループスは……」


 ハルトは今朝からループスの姿を見ていないのを思い出した。ハルトの発明を最初に見る相手はだいたいループスである。これまでは自分が機械いじりをしてると、退屈そうにそれを眺めつつも待ってくれてたが今回はそうではなかった。

 どこに行ったのかと手掛かりを探すと、ハルトは機械の部品だらけの机の上に一枚の紙が紛れ込んでいるのを見つけた。どうやらループスが置手紙をしていたようである。


 『クエストに行ってくる。昼過ぎごろには戻れるはず』


 ループスは律儀だった。自分が席を外すときにハルトが起きているなら必ず行き先と戻るまでの時間を伝えるし、直接伝えられなければすぐ目に付くところに置手紙を残していく。今回とて例外ではなかった。

 手紙の内容を信じ、ハルトはループスが戻ってくるのを待った。


 

 「へぇー。面白いじゃん」


 時を経て戻ってきたループスにハルトが発明を披露すると珍しくループスは前向きな評価を下した。機械に疎いループスはハルトが普段トンチキな発明ばかりをしているのもあって少なからず偏見を持っていたが普通に実用的なものを作ったことを素直に評価することができた。

 ループスが何より評価しているのは装置の『大きさ』であった。そこそこの重さはあるものの、持ち手を付ければ片手で無理なく持ち運べる手ごろさに魅力を感じていた。


 「あれ?なんか冷えてきたな」

 「あー、動力切れだな」


 動力が切れて熱を発生させなくなった装置を見て首を傾げるループスにハルトは冷静に解説を入れた。そしてどこからともなく二本目のバッテリーを取り出すと暖房の中に入っていたバッテリーと交換して再び作動させた。


 「これは何で動いてるんだ?」

 「魔力……と、あと電気だ」


 暖房用のバッテリーの動力は二種類あった。一つは魔力、そしてもう一つは電気であった。魔力を使って動かすこともできるし、電気のみで動かすこともできる。暖房装置はハルトの目標でもあった『魔力に頼らずに動かせる機械』第一号だったのである。

 そしてそのバッテリーは使い捨てではなく、魔力か電気を補充すれば繰り返し使用することができるようになっていた。


 「俺が使ってる銃の弾を作る技術を応用すれば簡単に作れたぞ。それに動力を満たすだけならお前でも簡単にできる」


 そういうとハルトはループスにバッテリーの補充の仕方を教えた。魔力を中に注ぐだけというお手軽さは機械音痴なループスにもすぐに理解することができた。

 

 「一本でだいたい三時間か」

 「何の話だ?」

 「これが持つ時間だ。グラーシャに着くまでにはこれを倍ぐらいは持つようにしたいな」


 ハルトはバッテリー一本で動かせる時間の限界をしっかりと計測していた。使用を想定している環境である火を立てられないような寒冷地で一夜を凌げるようにするにはバッテリー交換抜きで稼働させられる時間をより伸ばす必要があった。


 

 「どうすればもっと長く動かせるようになると思う?」

 「そんなこと俺に聞くなよ……」


 ハルトの飽くなき探求心と向上意欲にループスは呆れつつも律儀に付き合うのであった。

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