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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
8章 プリモへの里帰り
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ループスと子供たちと剣術と

 ある日のこと。その日は朝から子供たちがアイム家を訪ねてきていた。以前ハルトたちが声をかけた子供たちである。


 「おはよう。今日は何の用かな?」

 「今、人狼のお姉さんはいますか?」


 玄関を開けてセシルが応答すると子供たちの中の一人の少年が要件を伝えた。どうやらループスに用事があるようだった。


 「ちょっと待ってね」


 セシルは一言を残して玄関を締めると階段を登っていった。ループスは特別な用事がない限りは起床時刻に関してはルーズである。今朝もハルトのベッドで泥のように眠っていた。

 

 「ふわぁ……」


 セシルが玄関を締めてから数分後、寝間着姿のループスが如何にも寝起きな様子で寝ぼけ眼を擦り欠伸をしながら子供たちの前に姿を現した。普段はピンと立っている耳はべったりと下がり、尻尾の毛並みも整わずにボサボサ、おまけに髪も寝癖で方々が跳ねていてとても人前に出るとは思えないほどの身だしなみであった。

 

 「お前たちか。俺に何の用だ?」

 「俺たちに剣を教えてほしいんです」


 子供たちはループスに剣術の稽古を懇願した。人狼は剣術を使っていたという大人たちの噂を信じ、それにあやかろうとしたのである。話を聞いた瞬間、ループスは寝ぼけていた目を見開いた。剣術はループスの得意分野である。それを子供たちに教えるとなれば目を輝かせないはずがなかった。


 「待ってろ。すぐに用意する」


 態度を豹変させたループスは急いで支度を始めた。ものの数分後、身支度を完璧に整えたループスが愛用の剣を携えて戻ってきた。


 「待たせたな。では始めようか」


 ループスはやる気満々で子供たちに剣術を教えるべく外へと飛び出していった。彼女のあまりにも対極的な二面性を見た子供たちは本当に同一人物なのかと疑わずにはいられなかった。


 「まず剣を持ったことはあるか」

 「ありません」

 「そうか。ならまずはそこからだな」


 子供たちに剣を持った経験を尋ねたループスは手ごろな大きさの木の枝を拾い集めると魔法で剣の形に再錬成し、それを子供たちに手渡した。


 「剣は大きさや形によってどう持つか、どう扱うかが変わる。今回は両手で持つ形にした」


 ループスは剣の性質からレクチャーを始めた。元々ウォルフェアの軍人の子として生まれた彼女はそういった武器に関して深い造詣があった。


 「両手剣は初心者でも扱いやすい剣だ。扱うにあたって特別な技能が必要ないし、威力も出しやすい」


 両手剣の特徴を簡潔に語ったループスたちは子供たちに剣の握り方を指導しはじめた。腰に帯びた剣を鞘から抜き、赤色の魔法石でできた刃を覗かせる。剣が放つ輝きに子供たちは一瞬で目を奪われた。


 「利き手を鍔の方に近く、もう片方の手は少し間隔を開けて持つんだ。こんな風にな」


 ループスは魔法剣を用いて自ら手本を示した。子供たちはそれを真似して剣を握る。ループスは一人一人の持ち方を観察し、問題がないことを確かめる。


 「そう、それが基本の持ち方だ。次は剣の振り方を教えよう」


 最初に必要なものをマスターさせたループスは自分の剣術の振り方の解説へと移った。


 「まずは基本の振り方だ。片足を前に半歩ずらし、両腕を頭上まで上げてまっすぐ下へ振り下ろす」

 

 ループスは動きを実演しながら子供たちに剣術を教える。今教えている動きは彼女が幼少期に父から教わった最初の剣の振り方、すなわち彼女の始まりの動きであった。


 「ここで大事になるのは振った剣をぐっと空中で止めるようにすることだ。なぜかわかるか?」

 「どうして?」

 「実際に見てもらった方がわかりやすいだろう。まずこれが全力で振り下ろした場合だ」


 子供たちに語った理由を教えるべく、ループスは剣を全力で振り下ろしてみせた。剣戟は子供たちの目には見えず、赤い残光で軌道を追えるのみであった。


 「で、次が途中で止める場合だ」


 ループスは今度は剣戟を己の正面でぴたりと制止してみせた。


 「さっきと何が違うか、それは次の行動ができるまでにかかる時間だ。もう一度やってみるから見比べてみるといい」


 答え合わせをしたループスはそれを確認させるべくもう一度同じ動きを実演した。一度答えを知れば後隙の違いは子供たちの目にも明白になった。


 「振る時は最初に軽く勢いをつけてそれに任せる形で、止めるときは腕の力を使ってぐっと」

  

 ループスは剣の振り方を子供たちに実践させ、動きが固い、或いは大振りになっている子たちの腕に直接触れて改善するように直接指導を施していった。

 その時、子供たちはとあることに意識が集中してしまっていた。


 (大きい……)

 (見えそう……)


 子供たちはループスの胸が気になって仕方がなかった。直接振り方を教えられる度、背にループスの大きな胸が押し当てられる感覚がくっきりと焼き付いて離れない。動きやすさを重視した服装の彼女が視線を合わせるために腰を落とすと豊満な谷間が露になって視線を集める。

 それらに対してループスはまったくの無自覚であった。 

 

 

 無防備なループスに対しドキドキが止まらないまま子供たちは剣術を学ぶのであった。

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