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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
7章 ループス親子の決別
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再会、クリム・マグナレイド

 マグナレイド家の使用人をループスが顎で動かし、食事を提供してもらうなどして時を過ごすこと数時間。屋敷内が何やら慌ただしくなった。使用人たちが一斉に玄関前へと集合し始めていた。 

 ハルトはその様子を音伝手で観察している一方でループスは何が起こっているのかを理解しているようであった。


 「来たぞ。父上だ」


 使用人たちが慌ただしく動いているのは屋敷の主人であるクリムを玄関先で出迎えるためであった。まだ見ぬループスの因縁の相手に想像を働かせ、ハルトは緊張で息を飲んだ。


 「こちらから動く必要はない。その時が来れば使用人が迎えに来る」


 ループスがそう言ったのも束の間、使用人の一人がループスの部屋の扉をノックした。どうやら彼女の言う『その時』はもうすぐらしい。

 

 「クリム様がお戻りになられました。クリム様は支度が整い次第其方との面会を許可なさりました。ご準備を」


 使用人は簡潔に状況を伝えてきた。クリムとの再会の時はもう目前まで迫っていたのである。そこからさらに十数分後、ハルトとループスは迎えに来た別の使用人に客間へと案内された。

 そこには如何にも高級なソファにどっしりと腰を下ろして眉間に皺をよせ、こちらを待つ厳格な雰囲気の男性の姿があった。彼こそがループスの実父、クリム・マグナレイドその人であった。


 「父上。お望み通り、戻って参りました」


 ループスからの一声を受けたクリムは眉間に寄せた皺をわずかに減らした。ループスを追い出した張本人とはいえ、我が子の健在な姿を見るのには多少なりとも喜びを感じているようである。


 「ループスか……そこの子狐は誰だ」

 「我が友です。今は身寄りが彼女しかおりませぬ故、同伴させております」 

 「ほう。見たところ『お前が姿を変えさせた庶民の魔法使い』のように思えるが」


 クリムにはハルトの正体はすでにお見通しであった。いきなりの流れ弾にハルトは面食らい、客間に気まずい空気が流れる。 


 「それはともかく、先日の貴方からの手紙への返事をこの場でしたいと思っております」

 

 ハルトに対する話題を逸らし、ループスはクリムに本命の話題を持ち出した。手紙の返事ではなくわざわざ直接会いに戻ってきたことに対してよい答えは得られないだろうと予見したクリムは再び眉間に皺を深く刻んだ。


 「あまりよい返事は期待できそうにないと見てもいいな?」 

 「ええ。父上にとってはよいものではないでしょう」


 マグナレイドの血を引く二人の間に一気に嫌悪な雰囲気が漂い始めた。いつ殴り合いになってもおかしくはないような空気を感じ取ったハルトは己の気配を殺して傍観に徹することにした。


 「ではあえて聞こうか。お前の答えはなんだ」 

 「俺はこの家に戻るつもりはありません。これまで背負ってきたマグナレイド家の名を捨て、独立したい所存です」


 ループスは自分の意思をクリムへとぶつけた。それは身分など関係ない純粋な親子のやり取りであった。ループスからの答えを聞いたクリムはたちまち頭に血を登らせた。


 「貴様、誰がこれまで貴様を養ったと思っている!お前に高い金をかけて学問を仕込み、魔法を仕込み、魔法の名門校に入学させてやった私のこれまでの行いが無駄だったとでも言いたいのか!?」

 「そういう体たらくをこれで終わりにしようと言っているのです」


 クリムは激昂して怒鳴り声をあげるがループスは怯むことなく食い下がる。ハルトはクリムの怒声に思わず耳を伏せた。


 「ほざけ!表に出ろ、そんな生意気な口を利けぬようにしてやる!」

 「では、ここで俺が勝てば独立を認めると。そうおっしゃるわけですね?」


 ループスはやり取りの中でクリムから言質を引き出そうと試みた。頭に血が上っているクリムはループスの誘いにあっさりと乗った。


 「ああいいだろう!どこにでも好きに行けばいい。俺に勝てればな!」


 クリムは客間の壁に飾られていた軍刀を手に取ると、そのまま鞘を投げ捨てて刀身をむき出しにし、ループスへと斬りかかった。

 対するループスはクリムの手癖をある程度理解していたため、鞘に手をかける予備動作を見た瞬間に回避行動をとることで紙一重で一撃を躱すことができた。剣撃は空を斬り、その軌跡には鉄色の残影が走っていた。


 「上等だ!決着をつけてやる!」


 先制攻撃を仕掛けられたループスは臨戦態勢に入り、耳を絞って魔法剣を抜いた。両者は剣を手にしたままにらみ合い、そのまま屋敷の外へと飛び出してしまった。



 「おいおい冗談じゃねえよ……」


 親子の修羅場に巻き込まれ、そして置き去りにされたハルトは慌ててループスの行方を追いかけるのであった。

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