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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
6章 ケモミミ少女、冒険者になる
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マーキス邸の裏山にて

 ハルト、ループス、リリアン、レナの四人はマーキス邸の裏山を駆けまわっていた。そこはレナにとってお気に入りの遊び場であった。

 裏山には草木も、水場も、洞窟もあった。レナはそのいたるところに遊び方を見出していた。


 「ここにはなんでもあるのよ!すごいでしょ!」


 レナは誇らしげにハルトたちにアピールした。この裏山の存在はレナにとっては大切な誇りである。ハルトたち三人もレナの様子からそれがひしひしと感じることができた。


 そんな中、レナに率いられて洞窟へと足を踏み入れたハルトはそこで不審な音を聴き取った。何かの呼吸音である。息を潜め、警戒するようにじっと押し殺している。近づいたら攻撃を仕掛けるという警告をしているようであった。

 その音が警告音であると信じ、ハルトはゆっくりとその場に立ち止まった。


 「どうしたんだ?」

 「変な音が聞こえる。ここは奥に踏み込まない方がいい」


 ハルトは音を理由に踏み込むことに対する警告を発した。その音は今のところハルト以外には聞こえていなかった。

 ハルトとの付き合いの長いループスは警告を信じてすぐに足を止め、冒険者としての直感を信じたリリアンも動きを止めたがレナだけは信じ切れていないようだった。


 「まさか。こんなところに何もいないよ」

 

 警告を信じないレナに対してハルトとループスは黙って首を横に振った。人ならざる力を持った二人だからこその直感だったがレナは自分の好奇心を妨げるような二人の行動が気に食わなかった。


 「なにそれ!つまんない!」


 機嫌を損ねたレナは一人で奥へと進もうとした。次の瞬間、低く野太い唸り声が洞窟の奥から響いた。今度はハルトだけでなく、その場にいた全員に聞こえた。


 「レナ。これ以上は本当に危ない。すぐに引き返すんだ」


 唸り声に思わず足を止めたレナに対し、ハルトは最終警告を発した。同時に懐から銃を抜き、弾を一発装填する。


 「どうしてもここから先に行きたいならまず俺たちを行かせてくれ」


 ハルトはレナを下がらせるとループスと共に前へと出た。ループスは戦いになった場合を想定し、剣を抜き赤熱化させて待機する。

 その間にリリアンはそっとレナの肩に手を置き、いつでも庇えるような姿勢を取った。


 ゴーグルを下げ、銃を真正面に向けたハルトは引き金を引き、炸裂音を洞窟内に響かせた。魔力をほとんど込めていない空砲である。空砲の音が残響している内にハルトは薬莢を排出し、次の弾を込めた。

 ほどなくして硬いものがぶつかる音が入り混じった足音がこちらへ接近してきた。戦闘の気配を感じ取ったループスは赤熱化した剣を構え、それを松明代わりにして足音の主の気を引いた。


 ほどなくして鋭い双眸がループスの剣から放たれる光を受けて赤色の残光を走らせながら迫ってきた。それに対してループスは真正面から迎撃するように飛び出した。

 ループスの赤熱化した剣の一閃で獣は見事に両断され、断面から炎上して洞窟内を赤く照らしたのであった。レナがそれを目視できるようになった頃には獣は燃え上って原型をとどめない肉の塊と化していた。結局、その姿をはっきりと見たものはこの場には誰一人としていなかった。


 「な?危ないって言ったろ?」

 「う、うん」

 「お姉ちゃんたちの言うことは素直に聞かないとダメだぞ」

 「ごめんなさい……」


 一瞬ではあったが恐怖の感情を身をもって知ったレナはハルトとループスからの注意を素直に聞き入れた。リリアンがレナの身体を抱き寄せ、宥めるように背中を擦る。

 

 「君が無事でいてくれてよかった」

 「どうして……?まるでママみたいなことしてくれるね」

 「みたいも何も、私は君の母親なんだから当然じゃないか」


 その場の勢いに任せ、リリアンはレナに真実を打ち明けた。まさかまさかの予想外なタイミングでのカミングアウトにハルトとループスは目を丸くした。


 「リリアンが……レナのママ?」

 「そうとも。私が君の本当のママだ」



 獣だった肉塊が燃え尽き、明かりが消えて真っ暗になった洞窟の中でレナは母との再会を果たしたのであった。

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