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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
6章 ケモミミ少女、冒険者になる
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大型銃の素材集め

 翌朝、ループスが目を覚ますと隣のベッドにハルトの姿はなかった。もしやと思い昨夜ハルトが向かっていた机の方を見ると、そこには机に伏せたまま眠りに落ちているハルトの姿があった。

 ループスは眠るハルトの身体を抱きかかえると、彼女の身体をベッドの上に横たわらせた。ついでに昨夜彼女が手掛けていた設計図を覗き込むと、そこには綿密に書き込まれた新型の銃のシルエットがあった。きっと限界を迎えるまで没頭していたのだろう。


 ベッドですやすやと寝息を立てるハルトを尻目にループスは朝の支度を始めた。髪を整え、耳と尻尾の毛づくろいをし、寝間着から外着へと着替える。

 あとは朝食を取るだけだったが寝ているハルトを置いて一人で取るわけにもいかない。ループスはハルトが目を覚ますまで待つことにした。


 待つこと数時間、ハルトがようやく目を覚ましたのは日が昇り切った頃であった。


 「ふわぁ……!」


 ハルトは大きく欠伸をすると上半身を起こし、寝ぼけ眼を擦るとしばらくぼんやりしていた。机に向かったまま寝落ちしたことを覚えていたらしく、そんな自分がなぜベッドで眠っていたのか理解ができていないようであった。


 「んあ?おはようループス。今何時?」


 視界にループスが映ったハルトは寝ぼけたままループスに尋ねた。 


 「もうすでに十二時回ってるんだが……」


 ループスは宿の壁にかけられた時計を指さすと、時計の針はすでに頂点を過ぎていた。それを指摘されたハルトはようやく自分がかなり寝ていたことを自覚した。


 「マジか!?悪い悪い、すぐ着替えるわ」

 「身だしなみ整えるの手伝おうか?」

 「お前のブラシは痛いからやだ」


 ハルトはループスの補助を遠慮のない物言いで拒否すると一人で身だしなみを整え始めた。ループスの行うブラッシングは力加減がハルトに対して合わせられておらず、心地の良いものではなかった。


 「お待たせー。じゃあ今日の活動始めっかー」

 「ならまず飯を食わせろ。お前が起きるの待っててこっちは何も食ってないんだからな」

 「あ、はい」


 ループスはハルトの首根っこを後ろから掴んで持ち上げると脅迫じみた言い回しで昼食を迫った。結局ループスはハルトが目を覚ますまで何も口にしておらず、空腹状態であった。

 この状態のループスを闇雲に刺激してはいけないことを野性的な直感で察知したハルトは素直に要求に従うことにした。


 「で、これから何するって?」

 「昨夜書き上げたアレの素材を集めに行く」

 

 ハルトは大型銃を作るための素材を集めるつもりであった。リリアン・マーキスの行方を追うのは今の彼女にとっては二の次である。

 

 「素材を集めるって、何を使うつもりなんだ?」

 「ありったけの金属、あと魔法石」

 「マジかよ」


 ループスは一瞬耳を疑ったがハルトは大真面目に魔法石を銃の開発素材にするつもりであった。すでに携行している銃の素材に使用している金属をベースにし、そこに魔法石を混ぜることでより高度な魔法の行使に耐えられるようにするのが狙いである。

 ループスの最大魔力に耐えられる魔法石なら自身の魔力にも十分に耐えられるだろうというのがハルトの発想であった。


 「お前魔法石が高価なものだってことはわかってるんだよな?」

 「もちろん。買うためのお金ならある」

 

 ハルトは先のクエストで得た報酬を魔法石の購入に注ぎ込むつもりであった。彼女はいざ機械のこととなると金遣いがループス以上に荒くなる。

 ループスは呆れてものが言えなかった。


 「まさかそんな調子で金属まで買い集めるつもりじゃないだろうな」

 「そこは安心しろ。策がある」


 ループスが釘を刺すように尋ねるとハルトは心配無用と言わんばかりに答えた。


 「機械が壊れて困ってる人はいませんかー?いたら修理させていただきまーす!不要であれば有償での引き取りもできまーす」


 ハルトはいつぞやに作った看板を掲げて機械修理の売り込みをしながらクラフテアの街を練り歩いた。修理で稼いだ金は魔法石購入の足しに、あわよくば不要な機械を格安で買い叩き、魔法で再錬成して銃の素材にするつもりであった。

 

 売り込みは思いのほか反響がよく、ハルトの修理を依頼する人たちがちらほらとあった。中には有償での引き取りにも応じてくれる人物もいた。


 「いやぁ悪いね。こんなガラクタ引き取ってもらっちゃって」

 「いやいや。コイツには俺の役に立ってもらうんでむしろこっちが感謝したいぐらいだ」


 ハルトは壊れた機械を回収して目を輝かせた。市民にとって不要になったものでもハルトにとっては極上のお宝である。クラフテアの街には廃品回収がないらしく、機械を持っている住人にとっては不要になったそれの廃棄が課題となっているようであった。

 こうして日が暮れるころにはハルトはそこそこの稼ぎと金属部品を手に入れることに成功していた。残るは魔法石を手に入れるのみである。

 


 「魔法石は明日でいっか。今日はこんなもんだな」


 金属を集めたハルトは上機嫌にガラクタ機械を抱えて宿へと戻った。ループスはハルトが持ちきれなくなったガラクタの残りを抱えてため息をつきながらハルトの後を追うのであった。

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