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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
6章 ケモミミ少女、冒険者になる
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緊急クエスト:暴走ゴーレムを止めろ

 その日、ギルドには朝から緊急を要するクエストが発生していた。


 「暴走したゴーレムをなんとかしてくれだぁ!?」


 ハルトはそのクエストの内容に目を疑った。どうやら魔法使いが実験で錬成したゴーレムの制御に失敗して暴走を始めたというのだ。このままではクラフテアの街に進行してしまう。だから足を踏み入れる前にどうにかして破壊してほしいということであった。


 「行くぞループス」

 「ああ」


 二人はやる気満々でクエストに名乗りを上げた。魔法使いの作ったものが相手であれば同じ魔法使いの自分たちが最も対処に向いていると考えたのだ。

 武装を整え、ハルトとループスはゴーレムの破壊クエストへと出発した。

 

 「……デカくない?」

 「思ってたのよりかなりデカいな」


 ゴーレムが進行しているという地に赴いたハルトとループスは遠目に見えたそれに今度は目の錯覚を疑った。

 彼女たちの眼前には明らかに自分たちが錬成で作るような人間大のものをはるかに上回る巨躯のゴーレムが地鳴りのような音を立てながらゆっくりと前進する光景が広がっていた。

 挙動に攻撃の意思は見られないものの、その巨体はもはやただ移動するだけで脅威であった。


 「やれそうか」

 「やれるだけやるさ」


 ハルトは銃に高出力の弾を最大数装填した。普段は対人間用では過剰防衛になりがちな威力の弾であっても相手がゴーレムなら使用に躊躇はない。


 「コイツが届く距離まで近づくぞ」


 ハルトは銃の射程距離に入るためにゴーレムに接近した。それと同時にループスも己の得物を機能させるためにハルトと共にゴーレムとの距離を詰める。


 「仕掛けるぞ!」


 ゴーレムの全体がくっきりと見える距離まで接近したハルトは銃を構えて引き金を引いた。銃口から放たれたビーム状の魔力がゴーレムの体表とぶつかり激しく火花を散らす。ゴーレムの体表は破砕し、土塊となって周囲に降り注ぐ。


 「なんて奴だ……」

 

 ゴーレムのすさまじいまでの頑強さにループスは驚愕させられた。魔弾の一撃で体表を破砕することはできたが損傷したのは直撃した部分のみであり、貫通には至らなかった。

 それを見て最も驚いたのは引き金を引いたハルト自身であった。魔法使いが錬成した存在ということもあって一筋縄ではいかないことは予見していたがまさかここまでの耐久力を持つとは予想できなかった。


 「ループス、お前の剣でゴーレムの足を切断できるか?」

 「やってみる。肉薄するから援護しろ」


 ハルトはループスの剣でゴーレムの足を切断して動きを止めることを提案した。自分の魔弾でダメージを与えることができるならループスの剣でゴーレムを切断することは可能なはずであった。

 ループスは剣を鞘から抜いて刀身を露出させるとゴーレムの足元へと大回りで接近していった。ハルトはその後ろから魔弾をゴーレムの右足に集中して打ち込み、脛を覆っていた土塊の装甲を破砕させていく。装甲が砕けたゴーレムの右足からは柔らかい土がボロボロと崩れ落ちていく。


 「おい!デカすぎて断ち切れそうにないぞ!」


 ゴーレムと接触寸前まで近づいたループスは声を張り上げてハルトに報告した。そもそもゴーレムの足周りが太すぎて剣の刃渡りでは両断することは不可能であった。


 「なんとかして刃伸ばせ!」

 「無茶言うな!!」


 とんでもない無茶ぶりを要求されたループスは耳と尻尾をピンと立てて抗議した。

 しかしものは試しである。ループスがヤケクソ気味に剣に魔力と思念を込めると剣は真っ白に白熱化し、彼女の体躯を上回るほどの長大な光の刃を伸ばした。


 「なんかできたぞ!」

 「えぇ……」


 突如として無茶ぶりに応えるループスの剣を見たハルトは絶句しながらその様子を眺めていた。無茶なことを言った自覚はあったがまさか本当にそれに答えてくるとは予想だにしなかった。


 「ウオラァッ!!」

 

 ループスが荒々しく剣を大振りに一閃して切り抜けると光の刃はゴーレムの足をバターのように易々と切断してみせた。姿勢が崩れ、ゴーレムは前のめりになって地上へと雪崩れて自重で粉々に崩れ去ったのであった。

 地鳴りと紛うほどの轟音が周囲一帯に響き、ハルトはたまらず耳を塞いだ。


 振り返ってゴーレムが崩壊したのを確認したループスは魔力の放出を止めると剣の白熱化を治め、魔法によって生成された水に浸し刀身を冷却して鞘へと納めた。


 「なんでできたんだ?」

 「いや、俺に聞かれても……」


 ループスは呆然とした表情でハルトに説明を求めた。無我夢中の内に起きた今回の現象は自分には理解できないものであった。だがそれはハルトにも理解不能であった。


 「さて、こんなのを作った馬鹿に物申してやらんとな」

 「だな」

 

 こうして、二人は不可解な現象を起こしつつも暴走するゴーレムを撃破する緊急クエストを成し遂げた。そしてクエストの内容に文句をつけるべく依頼人である魔法使いの元へと赴くのであった。


 

 「何考えてあんなバカデカいもの作ったんだよ」

 「申し訳ない。魔法使い単独で制御できるゴーレムの大きさを計測していたんだけど、限界を超えちゃったみたいで」

 「お前のせいで周囲の街全体が大迷惑を被ったんだがそこのところ分かってるのか?」


 ループスは反省の色があまり見えない依頼主の魔法使いの襟首を掴んで鬼の形相で睨みつけた。魔法使いは猛獣に睨まれたかの如く委縮して気が小さくなる。



 「す、すみませんでした……」

 「最初からそう言っとけ馬鹿野郎が」


 ループスは魔法使いから反省と謝罪の言葉を引きだすとぶっきらぼうに突き飛ばしてその場を後にした。ハルトは依頼主がループスから受けた暴力的な仕打ちに多少の同情をしつつもそれを差し引いて余りある所業に対し、軽蔑の意を込めて一瞥してループスの後を追うのであった。

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