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プロローグ

 



  ――リオレイル・アルム・フィムリウォールはアルム帝国の大宰相である。



 稀代の天才である兄と比べられながらも、血の滲むような努力の果てに、弱冠15歳にしてアルム帝国最強『十二戴天』の末席に辿り着いた、努力の天才。



 民からの信頼も厚く、人徳者であるリオレイル。

 アルム帝国の歴史上、彼ほど王の器に相応しい者はいなかった。

 もしも生まれてくる時代が違っていたのなら、彼は間違いなく、最高の王として君臨していたであろう。



 ――そう、稀代の天才である兄。

 第一皇子ライゼン・アルム・フィムリウォールというイレギュラーさえいなければ。


 兄であるライゼンは天才だった。

 底の知れない巨大な魔力に、圧倒的な戦闘能力。

 民を引き付けるカリスマ性は弟のそれを軽く上回り、絶対的な存在として他国からも畏怖されるほどであった。

 特に戦においては百戦錬磨の戦績を誇り、『戦鬼』という異名を知らない者はいない。



 十二戴天の長となった兄は破竹の勢いで偉業を重ねていき、第八代皇帝に就任し、リオレイルが大宰相として動き出してからは、アルム帝国は絶対的な支配者として周辺諸国を侵略していった。

 武のライゼン、知のリオレイルとしてその名を轟かせ、アルム帝国は黄金期を迎えた。



 ――だから、リオレイルは目の前の光景を呆然と見つめることしかできなかった。



 血塗られた純白のローブに、銀色の仮面から覗く黄金の双眸と白銀の髪。

 その体は小柄でまだ少年の面影を残しているが、纏う覇気が底知れない恐怖を体の奥深くから溢れさせる。

 リオレイルは小刻みに震える体に鞭を打ち、仮面の男が握りしめているそれに視線を向けた。



 それは人であったもの。

 黄色の髪は血で染まり、威厳のあった顔立ちは恐怖に染められている。

 そしてその《生首》をリオレイルは見覚えがあった。

 いや、それは紛れもなく兄であるライゼン・アルム・フィムリウォールだった。



「……貴様、何者だ? どこの国の差し金だ」



 恐怖で震える声を振り絞り、リオレイルは訪ねた。



「……終わらせに来たんだ」



 男はリオレイルの話に応えず、ただその淀んだ黄金の瞳をリオレイルに向ける。



「リオレイル・アルム・フィムリウォール。お前は合格だ。お前にはこの国を滅ぼしてもらおう。兄ライゼン・アルム・フィムリウォールはただ力にしか興味のない木偶だったが、お前には内に秘めた≪悪≫が存在する。……まあその悪も兄の力の前に屈して、霞んでしまっているがな」



 意味不明な言葉を並べながら、男は一歩ずつ近づいてくる。

 リオレイルは男の瞳の中に、ある既視感を抱いていた。

 全てを見下したような、淀んだ瞳。

 その瞳はいつだったか、昔何度も見た記憶がある。



「あなたは……一体……?」



 男は不気味に、笑って答えた。



 ――俺は救いに来たんだ。



 ――内に秘める≪悪≫を持て余している存在を。



 ――さあ、一緒に悪を振りかざそう。







 ***






 アルテミアの歴史を紐解けば、世界は幾度も変革を迎えてきたことが分かるだろう。


 栄華を極めた(いにしえ)の大国は一夜で滅び。


 闇に堕ちた天使が人の世を闊歩する。


 封印されし破滅の王は深い眠りに落ち。


 邪なる神々が暗躍し、世界が滅亡の危機を迎えた時もあった。


 だけど、人は滅びなかった。


 世界が危機に瀕したとき、いつもそこには英雄がいた。


 それは、神々によって選ばれた異世界の戦士。


 彼らは世界の節目に現れる。


 この世界では彼らを、――≪転生者≫と呼ぶ。





 ――この物語は、世界(アルテミア)の最後の転生者達の物語。


 


 


 


 

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