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測定魔具

「これは?」


雷爆弾(ライトニング・ボム)


「これ」


電撃棒(スタンガン)


 ロドリグが次々と僕お手製の魔具を手にして訊いてくる。


「単発式魔素弾カード」


「魔素シールド」


土槍術式(アース・ランス)


「閃光石」


「封印魔具」


探索魔具(サーチャー)


 一通り僕が持っている魔具を見て聞いて満足した様子のロドリグは、僕の独特のコーディングに興味津々だった。

 もちろん、対厄災のコードや魔具は見せていない。あれは、あいつ等に釘を刺されたのもあって、迂闊に知られる事はできない。


「すごいなあ。こんな術式の組ませ方なんて思いつきもしなかった」


「まあ、でもお金にならないんだけどね」


 以前にトリア支部で買い取りを拒否された事を思い出す。


「ああー、だろうね。最近はビットハブで載っている様な汎用品(コモディティ)化した魔具じゃないとあまり買い取らなくなってきたし。それを抜きにしても君の魔具は、多分一般レベルじゃ買いたがらないと思う」


 ロドリグが興味深い事を言った。


「どういうこと?」


 お姉さんは理由を話してくれなかった。ただ、買取に基準があってこれは該当しないとしか言われなかった。

 オッサンに訊いてもそこら辺の事は疎いからと言って、本当に知らないのか濁したかったのか曖昧に思えるような格好で聞けずじまいとなっている。


「僕らもたまに使うんだけど、ギルドみたいな大きな公的機関では使われているモノがあるんだけど……、ちょっと待って」


 ガサゴソと荷物を漁り始めると、辺りがどんどん散らかり始める。

 大丈夫? 急いでないから、ゆっくりでいいんだけど。片付け大変だよ?


「あった!」


 と何やら見た事ない大きめの魔具を出してきた。


「これこれ。僕の持っているのはギルドのより簡易的なものなんだけど、まあミドルレンジまでなら余裕で測れる。ハイエンドも程度によってはいけなくもないね。これでも割と高価なんだよね~」


 とおもむろに雷爆弾(ライトニング・ボム)をその魔具に設置し始めた。


「これ、ミドルレンジって言ってたよね?」


「うん」


「オッケー。ちょっと外行こ」


 誘われるままに馬車の外に出て、少し離れたところで魔具を置いた。


「これは測定魔具なんだよ」


「へえ? そういうのがあるんだ」


「そう、でもまだ市場に出始めたばかりだから高価なんだ。魔具に書き込まれたコードを読み取って、仮想的に疑似発現させてエネルギー効率を測定できるんだ。攻撃魔具なら威力を表すことになるね」


 高価という割には結構雑だった気もしなくはないけども……。


「一応数値の単位はそれぞれ千単位で変わるんだけど、バイト、キロバイト、メガバイト、ギガバイト、テラバイトがあるんだけども、ミドルならメガクラスかな。ミドルなら高くても700メガは超えないくらい」


「単位もあるのか、知らなった」


「無理もないよ、本当に最近さ。と言っても測定魔具が市場に出るのは想像以上に早かったなあ。なんでもコーディング試験にも採用されているらしいよ。試験用の測定魔具がまだ少ないから、試験の会場の調整とか入ったみたいだね」


 おお! そういう事かあ! 思わぬところで僕がお預けを喰らった背景を知る事ができた。まあ、今は既にプラチナコードなんですけどね、ふふふ。


「え、なに、急に。……不気味な顔してるよ?」


「……あ、ごめん。ちょっと思い出し笑いしてた」


「へ、へえ……あ! 準備できたよ! 仮想的な発現だから魔具を損耗させないから安心してね」


 え、不気味な顔ってネタじゃなくて本気で言われたの?


「念の為にゴーグルをつけて」


 何も無かったかのようにゴーグルを装着して、ぎこちない笑顔を浮かべながら僕にも渡してくれた。

 ありがとうと言って顔を見た。気のせいだと良いけど、目を合わせてくれない。


「じゃあ、測定開始まで5秒前!」


 カウントが始まる。少し距離を置いたところで測定魔具を見据えた。

 測定魔具に埋め込まれた魔結晶が淡く発光した。それに合わせてロドリグの手にある魔具の一部にも光が灯った。


「2、1、スタート」


 光が強まる。


「……ん? これって」


「どうしたの?」


「まずいかも! ちょっと下が——」


 言うが否や、破裂音が聞こえた。ロドリグの「うわッ」と言う声と一緒に観測魔具に目線を戻すと、観測魔具が煙を上げて、電流を纏っている。


「下がろう!」


 改めてロドリグは言うが、僕は咄嗟に魔素シールドを展開する。

 実際駆け出したロドリグはほとんど距離をとる事もできていなかった。先ほどのものよりも大きな爆発音が響く。一応、魔素シールドの範囲に収まっているので、ロドリグも無事な筈。


「……うわあ、……すごい……」


 ロドリグは煙をが上がる方を見てやや放心気味にそう言った。


「おいおいおいおい! なんの音だ!?」


「なんだ!」


 今の爆発で騒ぎを起こしてしまったみたいだ。オッサンやハナ、商隊の護衛の皆が駆け寄ってくる。


「あ、あははは、ごめん。ちょっと魔具の実験をしてたんだよね」


 ロドリグが困った様に笑って言った。


「人騒がせな。で、2人共無事か? ……無事そうだな。ったく。……みんな、すまねえ! ちょいと俺の連れが騒ぎを起こしちまった様だ。2人共無事だ、申し訳ない」


「無事ならいいんだ」


「気にすんな」


「子供は腕白なくらいで丁度いいしな」


 と口々に皆快く許してくれて、それぞれ戻っていった。……と言うか待って、子供って言わないで欲しいんだけど……。


「オッサンありがとう」


「まあ、無事で何よりだ」


「びっくりしたけど、まあいい」


 オッサンはいつも通り口角を少し上げて気さくに言い、ハナは腕を組みながら少し不愛想に、でも寛容に許してくれた。


「ごめん、ロドリグ。測定魔具を壊しちゃったね」


「……いや、全然そんな事は問題ないよ。大した損じゃないし、どちらにしても時期を見て上位の測定魔具を買おうとは思ってたから。そんな事よりも、これ」


 測定魔具の片割れを僕に見せた。


「一応、安全かつ一定の確度を保つ為にさっきの規格があるんだけども、一応僕も改良を加えて実際はギガクラスの前半までは測れるんだ。つまり、余程高度じゃなければハイエンドまでは測れる様にはしてあったんだ」


 言いながら見せてきた測定魔具には板状の結晶が埋め込まれていて、色んな単語や数字を並べていた。


「つまり?」


「トラブルはあったけど、ここまでの情報を見る限り測定魔具本体のトラブルではなかった。ちゃんと動作をしていた。つまり、この測定魔具で測れる規格じゃなかった」


「そ、そんな。僕のあれはミドルレンジだよ?」


「そう、それ。なんで観測魔具が出てきたか何だけど、グレードの采配が作成者基準になってしまう事なんだ。その人の腕前基準で決めてきたからムラが大きすぎる。オリジナル魔具だと実際に使ってみるまで分からないしね。特に世界基準になっている様な共通設計の魔具なんかは、同じ様に作ってもエネルギーや変換の効率に差が生じてしまって、使用者を悩ませることが多かった。まあ、主に後者の為にこの観測魔具が台頭してきたんだけど」


「じゃあ、僕のは実際はハイエンドクラスだったって事か……」


 全然知らなかった。確かに僕は作成できる魔具の中で順列を決めていた。まさしく作成者基準。


「これはギルドも断るよ。今じゃお手製魔具で買い取ってくれるのはミドルレンジまで。君が持ち込んだものは全部ハイエンドクラスだったんだと思う。後、多分これ、下手したらギルドが持っているグレードの測定魔具でも測りきれないかもしれないしね」


「そ、う、いうことか。合点は行ったけど、僕はそんな事も知らなったのか……」


 そうなると単純で魔具で出た結果だけが判断基準なら、純粋にギルドのお姉さんはあれ以上の話をしようがなかったんだな。


「アキ、すまん。俺は本当にそこら辺の話に疎くって知らなかった」


 オッサンはガチで知らなかっただけらしい。


「無理もないよ。最新魔具だし。知っている人の方が少ないよ。規格の部分なんかは最近急速に整備されてるから情報が十分に行き渡ってなかったりするし」


「それで、私もその辺の話は分からないんだけど、これからそういう事で問題は起こり得るのか?」


「うーん、個人で使う分なら良いだろうから……、ギルド職員で良かったねって感じ?」


「そうじゃなかったら、どうなってたんだ?」


 何故かハナが気になっている様だったが、僕も訊きたかったところなので助かる。


「少なくとも、商人にならなくて良かったんじゃないかな。汎用化された魔具を売っている内は大丈夫だろうけど。オリジナルを売り始めた時には良くも悪くも、トラブルは起こっていたとは思うけど」


「……良かったあ」


 思わず呟いてしまう。僕は最初、商人として生計を立てようとしていた。

 あの時、オッサンに手を差し伸べて貰ってなかったら、僕はもっと厳しい道筋を歩まなきゃいけなかったのかもしれない。


「まあ、なんにしても」


 とロドリグはまだ微かに煙を上げる壊れた測定魔具を見た。 

 そうですよね、冷静になって怒りが湧いてきたのかもしれない。……高価って言ってたし、弁償しなきゃ。というか弁償で許してくれるだろうか。


「君——」


「あの、弁償を」


「ほんっとうに! 最ッ高!」


「え」


「ハイエンドクラスをさり気無く作れるとか、最高かよ! マジで並じゃない!」


 彼は弾けんばかりの笑顔で、嬉々として僕の手を取り激しいハンドシェイクするのだけど、今度は動きを合わせていなす。

 雷爆弾(ライトニング・ボム)でこんな測定結果なら、対厄災魔具はどれくらいなのだろう……。


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