第七章 危機一髪
ここからは、2008年5月27日以降に書いた『SEASON2』です。『SEASON1』が2008年の4月23日~5月17日らしく、10日後に始まったみたいです。全然憶えてないけど……。というか、よくこんな日付が綺麗に残ってたなぁ。当時の自分がまとめていたようです。
早一年が経った。マックス・ヴィルソン探偵は、助手のカリス・ハドレット・ディロ、ジャック・ディロの2人と先程、依頼者のリック・モーブルの所へ訪れた。依頼内容は、迷宮入りした事件を解決してほしいとの事だった。それを解決したばかりである。今から、家の方へ帰ろうと、リニアモーターカーを快適に乗っている。これから、とんでもないことが起こるとも知らずに。
一番に気付いたのは、マックスだった。
「事件の予感がする。しかし、それに伴いすごく悪い予感がする」
ここでもマックスの観察力が異変に気付いた。
「速度が上がってる」
確かにスピードがどんどん上がっている。その証拠に、まわりの風景が飛ぶように流れていく。そして、時速560キロを超えた。
それから、どれくらい経っただろうか。どのテレビ局も、この暴走中のリニアモーターカーを生中継している。
そして、"リニアモーターカー管理施設全線管理塔"に、マーク・バロット警部とポリスン・ハード刑事、ニック・スクエブル鑑識らが来た。ニック鑑識は、精密機械に詳しく、コンピータを得意とする。
「暴走したリニアモーターカーについてお話をお願いします」
入った途端に訊く。
「暴走しているのは、R-305のリニアモーターカー」
管長か指示者か誰か分からないが、確かにそう言った。
「どこを走っているか教えてくれ。乗客乗員の人数も報告してくれ」
とマーク警部が言うと、
「困るなぁ、こんな所に警察が来るなんて……」
誰かは分からないが、この口調だと、十中八九ここの最高責任者だろう。
「あなたが……」
「ティック・ランスーンだ。それ以上知る必要はない。さっさと帰れ。ここは警察が探索するような場所ではない」
協力するつもりは、なさそうだ。
「しかし、警察に協力することは義務だ」
「どこの国のことを言ってんだよ。そんなの知るか」
「万国共通だ」
マーク警部が説得するが、
「さっさと帰れ!」
そのとき、マーク警部の携帯が鳴った。
「もしもし」
『マーク警部! ─今、どこに───か?』
ノイズで聞こえづらい。
「今か? リニアモーターカーの管理塔だ」
『それは、好都合──。強制停止プログラムを転送してください』
「ちょっと待て! 今どこにいるんだ? 何のことやらさっぱり分からんぞ」
『R-305リニアモーターカーの一両目です』
「何!? R-305の一両目だと!?」
周りが響めく。
「何をやっているんだ!?」
『それは、後ほど。誰か、機械に強い人───』
マーク警部が受話器を押さえ、
「ニック、メインコンピータから強制停止プログラムを探してくれ」
ニックが、メイン画面の方に行き、検索する。しかし、
「強制停止プログラムが、削除されています! それに、あまりにも現実離れした技術力で、至るところにロックがかかり、容易には無理です!」
『削除済みですか!?』
マックスが受話器から言う。
「じゃぁ、この事件はハッキングということですね!」
お待たせした。ポリスンがそう言った。
『じゃぁ、ハッカーは誰が──』
また、マックスが受話器から言う。
「こら! 勝手にさわるな!!」
ティックが怒る。
ハッカーは一体誰か…。
「皆さん、できる限り後ろの車両に移動してください」
マックスが乗客乗員に言う。
「マックスさん!」
助手のジャックとカリスが来た。ちなみに、この兄弟が"おじさん"から"マックスさん"に直したのは、半年前にマックスから「その呼び方はやめてくれ」と言われたからである。
「ジャック、カリス。私の助手なら、私の言うとおりに動いてくれ」
「でも……」
「信じてくれ」
マックスは再び先頭車両の所に来た。
「警部。リニアの連結器を外しても大丈夫か、調べてもらえませんか!?」
『連結器を外すって、正気か!?』
その会話を聞いたニックは、すぐに計算し始めた。
「警部、計算上では確率は低いですが、連結器が外れば、緊急停止するかもしれません」
と、ニックが言った。
「山勘は、やめておく。二年前の事件や四年前のような事態を招くかもしれん」
と、マーク警部が言う。
「先頭車両のコンピュータは占領されていますが、後部車両は占領……、ハッキングがされていない模様です! 後部車両を無理矢理、磁気の変化で止めることは、かろうじてできると思われます」
ニックが掴んだ事実、マークはすぐにマックスに知らせる。
「マックス、後部車両はなんとかなるようだが、先頭車両はどうする気だ?」
『回線……、コードを切断します』
「……切断できるのか?」
『時間がかかりそうですが……』
「……今の私には何もできない。……任したぞ。絶対に生きて帰ってこい」
電話が切れた。おそらく、妨害電波だろう。
マックスは、連結器のボルトをゆるめた。簡単にはいかなかったが、努力の末、連結器が外れた。
「後部車両減速!」
指示が飛ぶ。
乗客乗員の無事はテレビで報道された。その直後、
「警部、このままだと終着駅を通り越します!」
と、ニックが言う。
「おい、ポリスン……」
警部が呼んだが、その場にポリスンはいなかった。
「指示を出す前に終着駅に行ったのか……。無断で行動するとは、怪しからんヤツだな」
"先に終着駅に行ってきます"と手紙が残っていた。
その後、リニアモーターカーは終着駅を通過し、壁に激突した。マックスは間に合わなかったのである…
リニアモーターカーの路線の近くの病院は、どこも混雑していた。マックスは、壁に激突する前に外に脱出したため、奇跡的に命に別状はなかった。そして、終着駅にいち早く着いたポリスンにより、近くのスティル中央病院に搬送された。
マックスの病室に、ジャックやカリス、マーク、ポリスン、ニック、マックスの親友のルーズ・ハドレットらがいた。肝心のマックスは、まるでミイラのようにベッドに横になっているのである。しかし、ミイラと言ってはマックスがかわいそうなので、包帯でグルグル巻かれているという表現にする。あまり変わらないというツッコミは不要である。
医師が部屋に入ってきた。
「診断結果が出ました。命に別状はありませんが、全身打撲及び複雑骨折でしばらく入院が必要ですので、安静にさせてあげてください。それでは、次の患者が待っているので失礼します」
扉が閉まった。
「忙しそうだな」
と、ルーズが言う。
「警部、私はハッカーを割り出してみますので、失礼します」
ニックが退室した。
「俺もこのまま居てやりたいけど、依頼があるからこれで」
ルーズも退室した。
「私も警部のおっしゃる、あの人に任意で事情聴取をかけてみます」
ポリスンも退室した。
「そういや、マークさんってマックスさんとどんな関係なんですか?」
ジャックが軽く聞いてみた。しかし、返答はとても重かった…
「マックス……いや、ビルはわしの孫だ。だいぶん前に、わしの子、つまりビルの父親が私の妻、つまりビルの祖母を殺害したんじゃ。そのため、ビルの母親は離婚した。しかし、父親は探し出して、母親も殺してしまったんじゃ。挙げ句の果てに父親は自殺をして、私とビルを残して去った。その後、ビルはこんなことが他の家庭にもあってはならないと、私に会いに来て、"警察関連の仕事につく"と言ったが、私は反対した。そして、ビルは親友のルーズの所に行き、相談すると、"俺、探偵やろうと思うんだ。だから、お前も一緒にやろうぜ"と言われたらしい。初めは、うまくはいかなかったが、私やルーズとコンビを組むことで、成長し今に至る。……子供に話すような内容じゃないな。すまない」
マーク警部はそう言った。
「いえ、訊いたのは僕ですから」
と、ジャックは言った。
「そう言えば、何で反対したんですか?」
寝ているはずのマックスが訊いた。
「狸寝入りしていたのか!?」
「それより、僕の質問に答えてください」
「……簡単に言うと、事件で私より早く死んで欲しくなかっただけだ」
そのころ、あるバラエティー番組がこんな企画をしていた。それは、
「さぁ、今回より"真実を暴け!"のコーナーの新シリーズが始まります。今回は、あの四年前に起こった、ビル&チ
ャルロットらの謎の事件にせまります。尚、この事件を当番組では、"名誉に関わる事件"と呼びます。12、13日に起こったこの事件。まずは、当時の貴重な映像をご覧ください」
司会者がそう言って、CMに入った。
2分ほどのCMが開け、映像が流れた。
その映像は、左上のLiveという文字がモザイクで消され、"Keep out"と書かれたテープが貼られたホテルの玄関前で、報道陣らが必死に撮影しているなか、1人のアナウンサーがカメラに向かって、
「今、このホテルで殺人事件が起き、犯人はホテル内を未だ逃走中です」
そのとき、一発の銃声がした。
「今、銃声が響き渡りました。時刻は午前10時半過ぎをまわったところです。繰り返します。今、一発の銃声が聞こえました。誰が打ったかは断定できませんが、銃声が響き渡りました」
映像が変わり、ホテルから無事に出てくる観光客をとらえている。報道陣は出てきた人から事情を聞くべく、インタビューに入った。しかし、このカメラマンはホテルに突入したところで映像が終わった。
バラエティー番組のスタジオに戻り、
「映像はここで終わってしまっています。しかし、我々は、先月ビル名探偵、現マックス探偵に話を聞きました」
またCMに入った。CMが開けるとマックスとのインタビュー映像になった。
「4年前の事件について、いろいろと教えてください」
アナウンサーがそう言うと、マックスは
「4年前ですか……。月日が流れるのは早いですね。私も、実を言うとあの事件の真相は知らないんです。ただ、一年前にルーズが企画した汚名返上事件で犯人のブロダイク・タブースは逮捕しましたが、ゼロにはやられるばかりですね。そして、トブリックさんには申し訳ないことをしてしまいました。お詫び申し上げます」
トブリックは冤罪になった人。
再びスタジオに戻り、
「次回も引き続き、"名誉に関わる事件"についてお送りします。お楽しみに!」
エンディングが流れた。
その番組は高視聴率をとったらしい。再放送があった。ちなみに、この番組が放送した始めた直後に、ルーズから多くの人に"おもしろいものが放送されている"というメールの送信があったらしい。それが原因なのかは知らないが、入院中のマックスはもちろん、マーク警部なども少し見入ってしまったらしい。本人達は、収録はしたが、放映日については、聞かされていなかったのだ。
マックスは長期にわたる入院が必要である。また、このとき、責任を負い、仕事を辞めようとしている人物がいた。それは……
To be continued…
あったなぁこんな話。って終始思いつつ、あまりにも酷いところだけ数行修正したものの、2011年2月ごろにブログに掲載した当時のままです。初稿から3年後にブログに載せて、12年後に小説家になろうに載せることになるとは……