番外編 第一章R 予告状
今回は、2008年4月に書いた第1章をもとに、ルーズを登場させた特別編として2011年2月にブログ掲載したストーリーです。作者も存在を忘れていた特別編です。
"マーク警部、惜しくもゼロを捕まえられず…… 先日、またもや大胆に予告状を出した怪盗ゼロは、大金持ちのアシトス家からアメジストを盗んだ。しかし、アシトス家の長男ケイド・アシトスさん(26)は、「こんな気持ちになったのは初めてだ。今度は、サファイアを盗んでくれ!!」と話していた。何故なら、ケイドさん曰くこの事件をキッカケに何よりも大切なモノを見つけたことで……”
そこまで新聞を読んだとき、一通の手紙が届いた。その内容は……
"マックス・ヴィルソン探偵へ 私はジェネリー・ディロといいます。私達のところに怪盗ゼロから予告状が届きました。「先祖代々受け継いでいるもの宝をいただく」と。助けてください。"と書かれていた。
マックスは、珈琲を飲み干し、ディロ家へ車で向かう……。
ディロ家の大富豪邸
マックス・ヴィルソン探偵は現場に着いた。しかし、そこは騒がしくなっていた。門の前に3台のパトカーが停まっていた……。
インターホンを押し、少しすると、男性が出てきた。
「誰でしょうか?」
「私、ここのジェネリー・ディロさんという方に依頼されて来ました、探偵のマックス・ヴィルソンといいます」
男性は、ここの三男でバイオレント・ディロという。バイオレントの話によると、2時間程前に、次男のリーク・ディロが書斎で殺されていたのを警察に通報し、今、警察の人達が捜査をしているのだという。
一方、警部はというと……
「すると、凶器は調理場の包丁で、長男と長女のあなたが帰ってきた時には、リークさんは亡くなっていたと……」
と、マーク・バロット警部が言った。
「第一発見者は……」
「バイオレントです」
答えたのは、ジェネリー・ディロ。
バイオレントが、マックスを応対室に案内して、警部の元へ。
夜、3階の突き当たりの部屋でマックスとジェネリーが予告状の件で話をしていた。
「私は、予告状の件について来ましたが……、どう致しましょうか?」
「いえ、マックスさんは予告状のみ、お願いします。リークの事は警部さんに任せますから」
「そうですか」
と、マックス。
「……予告状には"15日の深夜12時に、先祖代々受け継いでいる宝をいただきに参上する。"と、書かれていたんですが……」
「これは、また大胆ですね」
「でも、この家には先祖代々受け継いでいる宝なんて無いんですけど……」
「無い……といいますと?」
「受け継いでいるものなど無いんです」
と、ジェネリー。
事件の方は進展があったらしく、ジェネリーとバイオレントがマーク警部に呼ばれた。
「リークさんを殺害した犯人が分かりました」
「本当ですか!?」
「はい。それと、今、私の部下がリークさんの友人を連れて、こちらに向かっています」
と、マーク。
数分後、マーク警部の部下、ポリスン・ハード刑事がある人物を連れてきた。
「こちらは、リークさんの友人で、ナーブ・オレイゴンという方です」
と、ポリスン。
「話してください」
「……リークはなぁ、多額の借金を抱えていて、破産寸前だったんだぜ。俺が保証人になってやったが、ヤクザが関わっていたりして……、何度もリークの代わりにやられていたんだ! 確かに、リークには関わりたくはないと思っていたが、俺は殺しちゃいないぜ」
と語った、ナーブ。
「警部さん……」
「私は、犯人が分かったと答え、ナーブさんを呼んだとしか言っていません。この事件の犯人は、リーク本人なのですから……」
「何だって!?」
バイオレント、吃驚!!
「リーク氏は、多額の借金を背負い、現実逃避したのでしょう……」
と、マーク警部が推理するのを……
「違うな……」
「何!?」
「ルーズ」
ジェネリーに夫であり、マックスの親友でもある、ルーズ・ハドレット名探偵登場。
「違うとは、どういうことだ!?」
マークが問うと、
「リークはそんな人ではない。いくらなんでも、自殺を図るような人ではなく、どちらかというと、祖父の財産目当てだった」
と、ルーズ。
全員が集まるリビングの近くを偶然歩いた、マックス。ルーズの声が聞こえたので、扉を少し開けると、ルーズがマークに推理を説明していた。
「リークは、誰かを殺害して財産を手に入れようとしたが、逆に殺されてしまった。偶然、もしくは、計画的にリークを殺害した。そうだろ?バイオレント」
「!?」
「本当なの!?」
ジェネリーが問うと、
「あれは事故なんだ。リークに呼ばれたから書斎に行ったら、急に包丁を突き付けられ、反射的に包丁を掴んで、リークから奪い取ろうとしたら、包丁が飛んで、リークに刺さって……」
「……署までご同行を願う」
「はい……」
「……ルーズ、お前の身内だろ」
とマークが言う。
「探偵は辛いよ……。身内までも疑わなければならないからね……」
と、ルーズが答えた。
マックスが扉から何歩が下がってすぐ、ポリスンが扉を開けた。
「警部、お疲れ様です」
と、マックスが言うと、
「お前に言われる筋合いはない」
マークがそう答えた……。
ルーズは、怪盗ゼロからの予告状の件で帰って来た。
マックスとルーズの2人は、ジェネリーから予告状の現物を見せてもらった。
「細工は無いな……」
と、ルーズ。
「字体も一般的なものだ……」
と、マックス。
それから、犯行予告前日までディロ邸のあちこちを探ったが、空振りだった……。
「一体、何処に……」
「ディロ邸に地下室とかはないんですか?」
マックスが問うと、
「それは……」
ジェネリーが否定しようとした時、ルーズが
「いや、あるかもしれない。裏庭に倉庫があって、その倉庫が怪しいんだ」
倉庫。いたって普通の倉庫のようだが……
「中を見てくれ」
ルーズが扉を開けると、
「何も無いじゃないか……。倉庫なのにものがひとつたりとも……」
と、マックス。
「あぁ……。調べてみる価値はあるだろ」
ルーズとマックスが倉庫を調べること、1時間……
「ルーズ。この床はっきりとは分からないが、境目がある……」
「じゃぁ……、この辺りにスイッチが……、ん? この壁……」
「ルーズ?」
「四面の壁のうち、この壁だけ飛び抜けて硬く頑丈だ……。この壁の何処かに……」
ルーズが手探りでスイッチを探す。そして……
ガボッ!
暗くて分からなかったが、壁の模様の一部分が奥に凹み、スイッチになっていた。
マックスの予想通りの所が開き、地下への階段が……
一本道を進むこと、20分……。広い部屋に出た。
「!」
「タイムオーバーですよ。もう15日の午前12時30分ですから」
「ゼロ!?」
「確かに、先祖代々受け継いでいる宝、ティーラ帝王の王冠を頂戴しました」
と、怪盗ゼロ。
ティーラ帝王とは、ここクリスタルシティから周囲から、かなり広大な領土を手にした帝王である。その王冠は、今から30年以上前にアム・ヌーンが発掘し、フィン国際美術博物館に寄付することなく、ネットオークションにかけ、落札価格があり得ない金額にまではね上がり、それを落札したのが、サースティー・ディロだった。ディロ家は、元々、世界で7番目の大金持ちだったらしい。ちなみに、何故そんなに超がいくつもつくほど大金持ちだったのかというと……、先祖にアリャナ・ディロという、天才画家を始め、彫刻家などがいたらしい。また、我が儘娘が彼氏に高価なものを買ってと頼み続けたため、彼氏側から何度もフラれ、買ってもらったものを死ぬ間際に全てをオークションで売り払ったということもあったらしいが……。
で、ティーラ帝王の王冠を持ったゼロが奥の方へ逃げる!!
「待て!!」
マックスてルーズが追う!
しかし……、怪盗ゼロの姿はなかった……
「逃げられたか!」
広い部屋に戻って来ると、ジェネリーがティーラ帝王の王冠の入っていた宝箱のようなものを探っていた……。
「すみません……」
マックスが謝罪すると、
「いえ、お金には代えられないものを見つけました」
と、ジェネリー。
広い部屋にある蝋燭に火を点けると、その理由が分かった……。
「凄い……」
壁一面に描かれた絵画と、サースティー・ディロを始め、先祖代々の肖像画が……
翌日の新聞には、あまり詳細には載っていなかったが、この事が書かれていた……。
「いいのか?ルーズ……」
「……王冠のことか?」
「あぁ……。結構な価値があるんだろ?」
「別にいいんじゃないか?」
と、ルーズ。
「嫁が喜んでるからか?」
と、マックスが言った……。
To be continued…
『メイズ・ラビリンス』を書いたのはいつだろう、って調べたら2008年4月23日でした。ということは、次のSEASON2は4月とかそのくらいに……?(来年の予定はまだ計画してないです。各小説の12月分が終わりきってないので……)いずれどこかのタイミングで、残りのストーリーも更新します。
マックス探偵は『路地裏の圏外 ~MOMENT・STARLIGHT~』に出ているので、そちらもよろしくお願いします。