第五章 怪盗ゼロの正体(前編)
マックスらが事件の調査をしている時も尚、刻一刻と犯行時刻に近づいていた。ようやく、ルーズらがホテルに着いた。
「なんだか騒がしいな……」
ルーズは、少し気にしたがまずみんなに
「取り敢えず、ビルやチャルロット警部には気付かれないようにな」
と言った。だけど、騒がしいのが気になって、
「何かあったんですか?」
と、観光客に訊く。
「何でも、殺人事件があったとかさ」
それを聞き、ルーズは少し心配になり、皆には
「部屋で休んでいてくれ。俺は、事件のあったところに行ってみる」
と言って、ルーズは現場に急いだ。残された人達は、部屋に行った。
「君ら、先生の友人、マックスさんの助手だろ?」
研修生の一人がマックスの助手と話ししようと、きっかけを作ろうとしている。
「それが?」
助手の少年は、本当は少し性格が悪いのか。
「マックスさんはどうなんだ?」
「マックスさんねぇ……、あの人、3年前の事件でなんかあったの?」
「先生が言うに、3年前、このホテルに偶然居たマックスさん、当時のビル名探偵が……
3年前
偶然そのホテルに泊まった、ビル。そこで殺人事件が起こった。その事件現場に駆けつけたビルは、現場を検証し、推理をした。その時、通報で来たチャルロット刑事達は、この時も協力し合った。そして、犯人が分かったのだが、決定的な証拠が無く困っていた。ビルは、何となく地下の駐車場を歩いていると、巡査がこんなものを見つけたと渡した。しかし、その巡査はこの事件に全く関係ないものを渡したんだとか。その偽りの証拠で犯人が変わり、チャルロット刑事が逮捕した。しかし、真犯人はビルの予想していた犯人だった。その真犯人が、その後殺人事件を起こした。
……その犯人の名前がブロダイク・タブース。そして……」
研修生は気付いた。
「あれ、あの子は?」
話し相手の少年が居ない。
「あぁ、あの子ならトイレに行ったわ」
と、二番秘書が言った。
助手の少年は迷子になっていた。
(あれ? ここはさっき通ったような……。
このホテルは、3回に分けてリフォームをした事があるため、複雑に入り組んでいるところがある。しかも、廊下が坂になっているところがあり、1階にいると思っていたら、いつの間にか3階にいたという事がよくあり、迷子になる客が多い。ちなみに、マーク警部とマックスも3年前、現在地が分からなくなった事もある。
本人は知らないが逆に部屋から離れている。
「あれれ?」
また、ここのホテルは3分の1が何号室と書いてあるが、残りの3分の2は号室名が無く、宿泊者の代表者名が書いてあるだけである。つまり、余計に現在地が分からなくなる。
右往左往していくうちに、扉に"宿泊者名 ポリスン・ハード様"と書かれた扉を見つけた。
「ポリスン・ハード? あっ、確か……」
少年は、マックスがマークとの電話の最後で「ポリスンは?」と訊いていたことを思い出した。
「……僕が訪れたときに電話で言ってた人かな?」
ノックする。だが、返事はない。
(一か八か、入ってみよう……)
戸を開けると、
「だっ、誰だ!?」
なぜか、そこに怪盗ゼロがいた。
ついにゼロの犯行予告時間になってしまった。
「チッ、犯行時間じゃないか!」
マーク警部は、苛立っていた。
「ニックさん、この花瓶から指紋は採取できましたか?」
「いえ、まだ……。現場写真を撮り終えていないので」
「警部!」
マックスは、マーク警部を呼ぶ。
「なんだ?」
「この花瓶から、もしかすると指紋が出るかもしれません」
「しかし、手袋をはめているだろ。普通は」
「そうですが、バラバラになり、血が付着することを……」
マックスも焦っていて、何が何だか。そこへ、救世主(?)ルーズが来た。
「なにやってんだ。ほらよ」
差し出したのは、花瓶の破片や血の付着した手袋。
「これをどこで? あと、どうしてここへ?」
マックスがそう訊くと、
「ここへ来る途中、怪しげな行動をしていたヤツを見た。跡をつけたらゴミ箱にこれが。犯人かどうかは、その時点では分からなかったから手放したけど……」
どこで手に入れたかは言ったが、どうしてここにいるのかは言わなかった。
「そうか……。ニックさん、すぐに調べてください」
ニックが調べた後、
「この手袋をはめていた人物が分かりました」
「さて、この事件の犯人は誰だ?」
マークはそう言った。
ニックが袋に入った手袋を出し、こう言った。
「持ち主は、ブロダイク・タブースだと判明しました」
「何!?」
驚くのも無理はない。ブロダイク・タブースは、3年前の事件の真犯人だ。行方をくらまし、指名手配しても捕まらなかった犯人である。
「こいつ……」
マーク警部がさらに苛立つ。
「あっ!?」
マックスが急に叫んだ。
「一体、どうしたんだ!?」
「警部、被害者のローム・クロクシンは、3年前の事件の時、ブロダイクを庇っていた人では!?」
「じゃぁ、動機はおそらく口封じか……、何てことだ……」
点と点が新たな点へと結ばれていく。
あれ? そう言えばポリスンはどこへ?
To be continued…
まとめて後書きを書くと、どの話に対する後書きかこんがらがって、よく分からなくなる。他の作品でもまとめて投稿するときに、同じようなことがあるけれど。さて、これは第五章だから、何書こうか。
『メイズ・ラビリンス』って、感嘆符が多いですよね。この後の作品では、感嘆符はあまり使ってないですね。寧ろ、三点リーダーが増えた気がします。