第一章 予告状
これを書いたは10年以上前で、懐かしく思いつつも、慣れてないところがあります。2010年のブログ掲載時に、そこそこ改訂をしてたので、誤字脱字ぐらいの軽微な修正で掲載します。『黒雲の剱』や『紅頭巾』よりも前で、かつ初めて小説にチャレンジしたオリジナル作品がこれでした。ブログ終了に伴い、小説家になろうへ移します。よろしくお願いします。
”マーク警部、惜しくもゼロを捕まえられず……。先日、予告状を出すという大胆なところがあったが、怪盗ゼロは大金持ちのアシトス家からアメジストを盗んだ”
そこまで新聞を読んだとき、一通の手紙が届いた。新聞を机の上に置き、手紙を開封すると、その手紙には
”マックス・ヴィルソン、私は大富豪の長女ジェネリー・ディロと申します。実は、私達のところに怪盗ゼロから予告状が届きました。先祖代々受け継いでいるもの宝をいただく"と。御話ししたいことが御座いますので、こちらまでお越しください。 ジェネリー・ディロ”と書かれていた。
大富豪邸着
マックス・ヴィルソン探偵は依頼主の家に着いた。
(ここか──。"城"みたいだな)
そんなことを思いながら呼び鈴を鳴らして扉を開ける。中は豪華なシャンデリアや赤いカーペットがある。正面、サイドに階段、その間に古時計がある。しかし、玄関には誰もいない。それどころか騒がしい声がする。
「誰かいませんか~?」
後ろからパトカーのサイレン音がする。玄関の外は庭になっていて、円形の道路の真ん中には噴水がある。一般道路からパトカーが三台ほど庭の舗装道路をものすごいスピードで走ってくる。そして、華麗にドリフトを決める。
「ここだ」
パトカーから警部と思われる人、1人と部下か鑑識の人かは分からない5人が出てきて、同時に"城"の奥の部屋から女性が出てきた。
「刑事さんですか?」
マックスを一瞬見たが気にせず、警部と話しする女性。女性が警察の人たちを奥へと案内する。マックスは玄関に1人ぼっちだ。ちょっとしたあと、奥から男性が出てきた。
「何かあったんですか?」
マックスが訊く。
「誰ですか?」
「あぁ、申し遅れました。私、ここのジェネリー・ディロさんという方に依頼されて来た、探偵のマックス・ヴィルソンと申します」
男性はここの三男でバイオレントという。バイオレントの話によると、先程、次男のリークが風呂場で射殺されていたのを警察に通報し、警察の人を現場に案内したのだという。
一方、警部の方はというと……
「現場の物には触れていませんね」
「はい」
「私は、警部のマーク・バロットといいます。あなたは?」
「私は、この家の長女ジェネリー・ディロといいます」
「リークさんとはどういった関係で?」
マーク警部が質問を始めた。
「リークは、ここの次男です」
「第一発見者は?」
「バイオレントです」
「その方は、今どちらに?」
「バイオレント! どこにいるの?」
ジェネリーの声に気づいたバイオレントは
「すみません、姉が呼んでるので……」
「あっ、分かりました。では私は、一度出直します」
「いえ、姉に一言も言わずに帰してしまうと、流石に……」
バイオレントは、頭を掻いた。
「では、こちらで待たせて頂いても宜しいでしょうか?」
「はい、そうして頂くと有り難いです。では、ちょっと待ってくださいね」
マックスを応対室に残してバイオレントは応対室を出た。
その夜、3階突き当たりの部屋でマックスはジェネリーと話をしていた。
「申し上げにくいのですが、私は予告状の件について来たのですが、どう致しましょうか?」
「15日の深夜12時に先祖代々受け継いでいる宝をいただきに参上する。という予告状で、こちらになります」
ジェネリーは予告状をマックスに見せた。
「これは、また大胆ですね」
「でも、この家には先祖代々受け継いでいる宝なんて無いんです」
「無いといいますと?」
マックスは予告状を机上に置いた。
「受け継いでいるものなど無いんです」
廊下に、ドアに耳を当ててマックスとジェネリーの会話を盗み聞きしている人物がいた……
翌日
マーク警部がみんなを呼び集めた。
「皆さんに改めて事件時について聞かせてもらいたいと思います」
その中にマックスは居なかった。
「それでは、現時点では分からないところがありますが、事件の行程を考えてみました」
マーク警部が言うに、犯人は次男のリークを浴室に呼び寄せた。そして、リークが振り向いた後、射撃。その証拠に、前から撃たれていた。銃が見つからないのは、犯人がまだ所持しているということ。犯人が分かるのも時間の問題である。
マックスは、すべての部屋を調べていた。流石に大富豪の家というだけあって、部屋が多い。しかし、風呂場とマーク警部がいるリビングは調べなかった。いや、調べることができなかった。何故かというと……
リビングを退室するマーク警部とマックスが鉢合わせになった。マークは愛用の帽子を深く被り、
「何故、ここにいる?」
マックスは、まずは挨拶と思い、
「警部とは、約3年ぶりですね」
と言うと、マークは激怒し、
「気安く言うな! 行くぞ、ポリスン・ハード」
と、言って去る警部とその部下ら。三年前……、それは、忘れたくても忘れられない事件があった年……。
マーク警部は近くの喫茶店へ行った。
「警部。今後の捜査は……」
部下のポリスン刑事が言うが、マーク警部は聞いていない。三年前の事件を思い出してしまっていた。
「警部、どうかなさいましたか?」
マーク警部が我に返った。ポリスンは珈琲を飲み、続けて、
「退室のときに会った人、知り合いですか?」
「いや」
「じゃぁ……」
マークは机を叩き、
「私の名誉に泥を塗った、裏切り者だ!!」
「う、裏切り者……ですか」
「ああ、三年前の事件でな」
「三年前といいますと、僕の記憶の中で鮮明に覚えているので、どこかの新聞にどでかく載っていた"冤罪!罪なき人を追い詰め!"という記事で、あるホテルでの殺人事件ぐらいしか……」
そこまで話したとき、マーク警部は平常心でいられなかった。
「あれは、ヤツが仕組んだんだ! 私に……」
マーク警部は喫茶店を飛び出した。
「け、警部!?」
ポリスンは急いで代金を支払い後を追う。
三年前の事件、それが全てを変えてしまった……
事件は解決していた。結局、マックスはこの事件に首を突っ込まず、マーク警部とポリスン刑事らが解決させた。真相は、他殺に見せかけた次男のリークの自殺。リークは一年前に長男を殺害していたため、リーク自身が自ら罪から逃れようと己を殺めた。聞き込みなどにより、リークは多額の借金をしていた。そのため、金に困って長男を殺害して父親の遺産を全額奪う気だった。しかし、罪の意識のほうが大きかったんだろう。
自殺でこちらの事件は幕を閉じた。
To be continued…
その後の『黒雲の剱』や『紅頭巾』では、三点リーダーのみですが、『メイズ・ラビリンス』はダッシュ記号を多用してました。ただ、ブログ掲載の修正で、ダッシュ記号の一部を三点リーダーに修正してました。その修正も約9年前で記憶に無いけど……。
初の小説を挑むときに、なぜこの題材にしたのかは、あまり憶えてないです。ちなみに、その前は漫画を描いてたけれど、人物の絵が描けなくて小説に転身しました。その漫画というのが、『エトワール・メディシン』の前身となる作品です。もはやジャンルも違うし原型が無いけど。
さて、12月1日はブログの開設日(15日にサービス終了で閉鎖になりますが……)で、自分の作品を初めてネットに公開した日なので、記念日として去年に引き続き、全作品が更新されます。
なお、本日より『路地裏の圏外 ~MOMENT・STARLIGHT~』が連載開始です。『メイズ・ラビリンス』からマックス探偵が登場です。そちらもよろしくお願いします。