第八話 早速ピンチ!
…やばい!どうしよう!
ガチャリ。
ドアノブを回す音が鳴り、ドアが開く。普段から部屋の鍵をかける習慣がなかったし、お姉ちゃんが部屋に入ってくるのも普通のことだったので、完全に油断していた。
部屋でえっちな本を読んでいて、突然お母さんが入ってきた時の男の子の気持ちってこんな感じなのだろうか??
わたしたち五人は、予想外の出来事に微動だにできないでいた。ドアが開き、お姉ちゃんが入ってくる。
「クッキー、ここに置くわね……?」
一瞬にして沈黙が走る。そして、
「かわいいーっ!何このぬいぐるみたち?いつ買ったの?」
え、勘違いしてくれてる?そりゃそうか、姿形だけでなく体の大きさも変わっちゃってて、まさかこれが楓ちゃんたちが変身した姿だとは思わないだろう。
「でも、あら、確か楓ちゃんたちが遊びに来ていたはずなのだけども」
「あっ、ほら、ちょっとみんなで動物のスケッチをしてて!鉛筆とか持って来るの忘れちゃったから、コンビニに行って来るって!」
「おかしいわね?玄関にみんなの分の靴があったわよ?」
「う、そ、それは…」
どうしよう、ごまかしようがない。
その時、パピヨンの動物少女になっていたパフィンちゃんがくんくんと鼻を鳴らしながらクッキーに近づいていく、ちょ、動いちゃダメだって!
飛び級で中学に進学しているとは言え、まだ10歳のパフィンちゃん。精神年齢もそれ相応で、目の前のクッキーの魅力には逆らえないのでした。
そういえば時刻もちょうどお昼時、12時だ。お腹が減ったのだろう。
「このぬいぐるみ、動いた!?よくできてるのねー、どこで買ったの??」
「え、そ、それは」
「ソ〇ー?犬型ロボットとか作ってるわよね??高かったんじゃない??」
「え、ま、まあ、そんなとこ」
もぐもぐ、ボリボリ。クッキーを食べ始めるパピヨンになったパフィンちゃん。もう!!
「それにしても変ねぇ。みんな靴を残してどこに行っちゃったのかしら??」
「え、そ、それは、みんなで一緒にトイレに」
「パフィンたちはね、動物に変身したんデース!」
隠す気も何もなく、無邪気に言ってしまうパフィンちゃん。
「うう、我慢できない……は、は、はっくちょん!」
ポリポリポリポリ!
我慢できずに甲高い声でクシャミをしてしまうハリネズミのチャチャちゃんと、足で耳の後ろを掻きだしてしまう三毛猫の彩先輩。もうダメだー。
「変身ってまさか…これはどういう事なの??これは本当に楓ちゃんたちなの??」
「うぅ…」
もう本当の事を話すしかない。玄関に残ったままの靴と、しゃべったり物を食べたりする変身後のみんなとを矛盾なく説明するアイデアがない。
「お姉ちゃん…この事はだれにも話さないって、約束してくれる?」
そう言って、この「ティティアンノート」を手に入れた経緯から話し始めるのだった。
主人公周りの設定ですー。
飛鳥川 鈴 本作の主人公。フォッサ女学院中等部生物部に所属する中学1年生。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。
絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。ペットはフクロウのスピックスコノハズク「スピピ」
下連雀 彩 中学2年生、生物部。しっかり者の優しい先輩キャラ。ペットは三毛猫の「マーブル」
燕昇司 楓 中学1年生、生物部。家はネットカフェチェーンを経営している。
昔のマンガなどに詳しい。ペットはウサギのネザーランドドワーフ「キャラメル」
馮 佳佳 中学1年生、生物部。中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。
料理が得意。お金が好き。ペットはヨツユビハリネズミの「小太郎」
パフィン・アルエット 中学1年生、生物部。外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。
日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。ペットはパピヨン犬の「パピ」
飛鳥川 優衣 鈴の姉。フォッサ女学院高等部の高校2年生。