第四話 ティティアンリターン
「何が起こったの??あれ、なんだか・・・机も椅子も本棚もおおきくなってる!!」
あわてて周囲を見回してみる。机や椅子だけではない。楓ちゃんも、彩先輩も、チャチャちゃんも、わたしよりも1回り小さいパフィンちゃんも、
明らかに私よりも身長が大きくなっている。小型犬であるパピヨンのパピちゃんまで大きくなっている。
「鈴ちゃん、そのかっこう・・・」
彩先輩が動揺した様子で話しかけてくる。
「か、か、か、か、か」
プルプルと震えるみんな。そして一斉に、
「「「「かわいいーーーーーっっっっ!!!!!!」」」」」
みんなが一斉に抱き着いてくる。ちょっと待って!!苦しい!!!一体何があったの??
「ちょっと苦しいよーっ!!みんな何があったの??誰か説明してちょうだいよぉ!!!」
「ごめんごめん、いっせいに抱き着いたら苦しいよナ。でもあまりに可愛かったからナ」
パフィンちゃんが謝ってくる。
「鈴ちゃん、んーと、何から説明したらいいのか・・・そうだ鏡、家庭科室から全身鏡もって来るよ、ちょっと待ってて!」
そう言うとチャチャちゃんは部室の外に出て、全身鏡を持って戻ってきた。
「さあ見てみて・・・自分の姿を・・・」
わたしの前に鏡を立てる。
パピヨンそっくりの大きな耳。
白と茶色の二色の髪。
手と足もパピヨンそっくりの体毛。
学校の制服を子供用にリデザインしたかのような服装。
顔は、わたしのままかな?
小さくなった体。身長は小学校低学年くらい、1メートルくらいだろうか??
これは、認めざるを得ない。
「わたし・・・パピヨンになっちゃったの???」
「そう、鈴はニホンゴでいうハンギョジンになってしまったんだヨ・・・・」
パフィンちゃんが涙を流しながらうなずく。
え、魚なの?犬だよね?
「これは・・・このノートは・・・ショッカーの新兵器??」
家がネットカフェで、サブカルに詳しい楓が分析する。
「ショッカーって何!?」
そんなこんなで、しばらくみんなで話しあった結果、
【動物を見ながらこのノートにスケッチをすると、その動物(というか動物と人間の中間のような姿)に変身できる】
という仮説が立った。
「わたしそういうマンガ読んだことあるよ!女の子のえっちなおしりを描くのがとっても上手な漫画家の作品!!」
「ああ、あのマンガかぁ。あのノートの最後の使い方は感動的だったねえ」
楓と彩先輩が語っている。みんな小学生の頃から仲が良く、ネットカフェに入り浸っているので昔のマンガに詳しい。
「それにしても可愛いなぁ。このままパピちゃんと一緒にお持ち帰りしたいナ」
「ペットショップに売ったらいくらになるかな?億万長者になれるかな?」
ちょっと!
「ところでそろそろ最終下校時刻だよ・・・これどうやったら元に戻れるの・・・?わたし一生このままなの・・・?こんな姿じゃおうちに帰れないよ・・・・わーん!!!」
この先の事を考えると、思わず悲しい気持ちになり泣きだしてしまった。
泣き叫ぶわたしをみんながなだめながら、彩先輩が思いついたように発言する。
「鈴ちゃん、返信するときにエボリューションって叫んでたよね。エボリューション進化って意味だから、元に戻るには・・・」
「リターン?」
さっと単語が出てくるところはさすが二年生だ。
「試しに言ってみなヨ、ダメで元々、ダメだったらウチでずっと飼ってあげるから」
「もう!他人事だと思って!」
ティティアンノートを手に取り、元に戻りたいという思いを込めると、また自然に言葉が出てくる。
「ティティアンリターン!!」
再びノートが宙に舞いあがり、激しく回転をして、わたしの身体が光に包まれる。
光が収まると、わたしの姿は元に戻っていた。鏡で確認してみてもどこにも変身前と違いは無いようだ。
「え、これでいいんだ」
なんだかちょっと拍子抜けした気分だった。
そして、
「「「「ノート貸してっ!!わたしもやるーっ!!!!」」」」
他の四人でノートの奪い合いになったのでした。
一応主人公周りの設定を。
飛鳥川 鈴 本作の主人公。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。
絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。
下連雀 彩 中学2年生 しっかり者の優しい先輩キャラ。
燕昇司 楓 中学1年生 家はネットカフェチェーンを経営している。昔のマンガなどに詳しい。
馮 佳佳 中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。料理が得意。お金が好き。
パフィン・アルエット 1年生 外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。