第二話 ティティアンノートとの出会い
「声がするのは・・・この・・・本?」
かすかな声を辿りながら聞き耳を立てて声の発生源を探すと、棚に明らかに一冊だけ、雰囲気の違う本があった。
まるで吸い込まれるようにその本を手に取ると、まるでファンタジー映画に出てくる魔導書のような表紙に、
【Titian note】という文字が。
「ティティアンノート??この本から・・・・声が??」
中身をパラパラとめくってみると、1ページ目に説明書きが。
【実物の動物を見ながらこのノートにスケッチをすると、不思議なことが起こるであろう】
豪華な表紙の割に、書いてある文字はそれだけ。2ページ目以降は白紙で、500ページくらいありそうだ。
「ハードカバーだし、ノートというより辞書みたい」
その本を手にしてから、不思議な声は聞こえなくなった。
「本当にこの本から、声がしてたのかな?」
そんな疑問を抱きつつも、この本が絶対に欲しいという衝動に駆られたわたしはとてもドキドキしていた。
「なに・・・?この感覚・・・・?」
本のどこを見ても、著者も出版社も値段もバーコードも書いていない。かなりしっかりした作りなのに。
「この本、中に何にも書いてないけど、でもなんだか絶対に欲しいんです!もしも値段が高かったら、ここでバイトしてでも払いますから!」
それから私は楓ちゃんのお父さんに、この本を売ってもらえないか交渉をしてみた。
「あれ、こんな本仕入れた覚えないなぁ、、、おかしいなぁ、、、、いいよ、この本、タダであげる」
この本に全く見覚えが無いと首をかしげた楓ちゃんのお父さんは、あっさりとこの本をくれることとなりました。
「と、言うわけでもらっちゃったんだけど」
部屋に戻り、みんなにノートを見せてみる。
「ふーん、何か不思議な雰囲気の本だね!!動物を描くと不思議な事が起こるか・・・早速明日の放課後、やってみようよ!!」
好奇心旺盛な楓ちゃんが真っ先に食いついてくる。
「なんだか楽しみだね~」
部の中でも屈指のしっかり者キャラの彩先輩もまんざらでもない様子。
「動物を描いたら、宝の地図が浮かんでくるとか!?異世界に召喚されちゃうとか!?そしたら現代知識で無双しようよ!!」
一緒に来ていた中国系のクラスメイト、
「馮 佳佳」(フォン チャチャ)ちゃんも乗ってきた。
「そしたらお宝ゲットデース!洋服いっぱい買えまース!毎日パーティーでース!!大型犬も飼いたいデース!!」
両親の仕事の都合で4年前にアメリカから来た、1年生だけれども飛び級で2歳年下の
「パフィン・アルエット」ちゃんもノリノリだ。
「一見なんの変哲もない紙に見えるけど・・・冷静に考えれば、ほら、あぶり出しとか、なんかそういう科学的な仕掛けがあるんだと思うな」
楓ちゃんがまっとうな意見を言う。
そんなこんなで盛り上がりながら、時刻は18時を回り、みんな家路につくのであった。
「ただいまー!!」
家に帰ると7時近くなっており、お母さん、高等部二年生のお姉ちゃん、小学3年生の妹が出迎えてくれた。
お父さんは仕事でまだ帰ってきてないようだ。
あの本の事、話そうかな、どうしようかな?まあ、あしたみんなで実験してみてからでいいか。
ああ、明日が楽しみだな!