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第十九話 しっぽふりふり

 「包丁!?何に使うの??」


 「ティティアンノートで変身した時に、人間に無い部分を使えば、ひょっとしたら……!!」


 「おねえちゃん、これノート」


 わたしからノートを受け取ると、おねえちゃんはコツメカワウソが描かれたページを開く。


 「ティティアンエボリューション・コツメカワウソ!!」


 ティティアンノートが宙に舞いあがり、おねえちゃんがカワウソの動物少女に変身する。


 その様子を見ていたオートバイのライダーは、何も言う事が出来ないでいた。


 すると、その尻尾に鞘から抜いたチャチャちゃんの中華包丁をロープでしばりつけ、尻尾全体にペットボトルの水をかける。そして、尻尾だけを左右にぶんぶんと振る。



 「あ、ひょっとして……!」


 「優衣先輩の考えてる事、わかりました!使って下さい!!革を切るなら、勢いとスピードをつけてスパっと!!」


 「ありがとうねチャチャちゃん、大切な包丁を」



 老舗の中国料理屋の跡取りとして産まれたチャチャちゃんは、物心ついたときから料理の修行をしている。


 あの包丁は、チャチャちゃんが産まれた記念に伝統工芸士に打ってもらった一点もので、すごく大切なものと聞いたことがある。


 そして、おねえちゃんが燃えるオートバイに近づいていく。そして体をハンマー投げの選手のように回転させて、尻尾にくくりつけられた中華包丁を勢いよく横一文字に革製のサイドバッグへと振るう。




 スパッ――!!



 「あつつ……!!」



 ゴロゴロッ。



 バッグの表面の革が裂けて、中身が地面へと落ちる。



 「「「「「やった!!」」」」」

 


 そして今度は尻尾を小刻みに振るい、包丁の側面や背を使ってバッグの中身を次々にわたしたちの方へとはじき飛ばしていく。



 「あつつ――!!げほっげほっ!!」



 炎に近づき、煙を吸い込んだおねえちゃんがむせ返りながらこちらに戻ってくる。少し尻尾の毛がこげていて痛そうだ。



 「ふう、ふう、何とか――。あの、この中にカメラはありますかぁ!?」


 おねえちゃんがオートバイのライダーに尋ねる。


 「あ、あります、これです!大切なものなんです!ありがとうございます―!!」


 そう言いながらカメラ用やレンズ用のケースを抱きしめながら、ライダーがおねえちゃんにお礼を言う。


 そして、



 「次は、これがうまくいくか――ティティアンリターン!」


 おねえちゃんの身体が光に包まれ、変身がとけていく。それに伴い、中華包丁とそれを縛っていたロープも地面に置かれる。


 人間の姿に戻っていくおねえちゃん。それを見て再び驚くオートバイのライダー。そしておねえちゃんはお尻のあたりをさすっている――。



 「おねえちゃん、やけど、しっぽが、熱そうだったよ、大丈夫!?」

 

 「うん、ほとんど何ともないみたい――いちかばちかだったけどね。人間に無い部位なら、少しくらいやけどやケガをしても、変身が解けたら無かった事にできるんじゃないかなって」


 おねえちゃんは軽く笑いながら続ける。


 

 「でも完全じゃなかったみたい。少し尾てい骨のあたりがヒリヒリするけど」


 そう言っておしりを指さす。



 「優衣さん!」

 

 「優衣先輩!無事でよかったです!」


 「見事な一撃です!!」


 「優衣はジャパニーズサムライでース!!!」


 みんなでおねえちゃんの無事を確認する。



 「あははぁ、チャチャちゃんが日ごろ欠かさず包丁の手入れをしてるからできたんだよ、貸してくれてありがとね」


 「この包丁は、住友金属のカウリXハイスピード粉末焼結合金を、ダマスカス状に重ね打ちして鍛え上げた特注品です!!カニでもハタでも切れないものなどあり得ないです!!でもまさか、こんな使われ方をするとは思わなかったけど」


 包丁自慢をするチャチャちゃん。そして、



 「さあ、ここは私にまかせて、みんなはひとみちゃんの捜索を再開してちょうだい」


 おねえちゃんが本来の目的を思い出させてくれる。そうだった、わたしたちは行方不明のひとみちゃんを探しに来たのだった。目の前で交通事故を初めて見て、すっかり頭から吹き飛んでいた。



 そういえば、ひとみちゃんの匂いは――


 ん?



 匂いは――



 何も感じない。感じるのは、あたりに充満する煙と油とゴムとプラスチックと金属の焼ける匂い。



 「あ…あ、パフィンちゃん、におい、わかる?」


 こちらを察した様子で、パフィンちゃんは首を横に振る。


 

「ワタシも、全然わからないでス。刺激臭をマンセイテキに吸ってたせいか」


 犬の動物少女にに変身している私とパフィンちゃんは、もう一度鼻を効かせてみる。だめだ、ひとみちゃんの匂いがまったくわからなくなっている。



 「だめだ……どうしようおねえちゃん、においが全くわからなくなっちゃった!!」

 

 

 そうしていると、坂の下の方から徐々に、救急車と消防車のサイレンが聞こえてきたのだった。

主人公周りの設定ですー。


飛鳥川(あすかわ) (りん) 本作の主人公。フォッサ女学院中等部生物部に所属する中学1年生。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。

絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。ペットはフクロウのスピックスコノハズク「スピピ」


下連雀(しもれんじゃく) (あや) 中学2年生、生物部。しっかり者の優しい先輩キャラ。ペットは三毛猫の「マーブル」


燕昇司(えんしょうじ) (かえで) 中学1年生、生物部。家はネットカフェチェーンを経営している。

昔のマンガなどに詳しい。ペットはウサギのネザーランドドワーフ「キャラメル」


(フォン) 佳佳(チャチャ) 中学1年生、生物部。中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。

料理が得意。お金が好き。ペットはヨツユビハリネズミの「小太郎」


パフィン・アルエット 中学1年生、生物部。外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。

日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。ペットはパピヨン犬の「パピ」


飛鳥川(あすかわ) 優衣(ゆい) 鈴の姉。フォッサ女学院高等部の高校2年生。ちょっと天然の入った性格。


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作者のもうひとつの作品、
スキル「世界の妹」を修得したら異世界で若おかみになっちゃった!
も宜しくお願いします!!
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