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第十八話 おねえちゃんの決意

目の前に信じられない光景が広がっていた。


 ガードレールに激突してきたのは――オートバイ。


 そのオートバイからガソリンが漏れて、火がついている。真っ赤な炎と、真っ黒な煙を上げて。


 オートバイに乗っていたライダーは、ぶつかる直前にオートバイから投げ出され、ガードレールに引っかかっていた。


「あ…ああ…!」

 

 突然の出来事に、わたしたちはその場から動けなくなっていた――ただ一人を除いて。



 「おねえ……ちゃん?」


 放り出されたライダーの元へ、いち早く駆けて行ったのは、優衣おねえちゃんだった。


 

 「みんな、この人を安全な場所に運ぶから手伝って!!坂の下にいると漏れたガソリンが垂れてくる!!」

地面を見ると、徐々にわたし達の方まで火の手が迫ってきている。



 「あっ…!う、うん!」


 漏れたガソリンは道幅の半分ほどを塞ぎ、そこにも炎が引火している。坂の下にいるのは危ない。



 「私は右わきを持つから、楓ちゃんは左わき、彩ちゃんは右足、チャチャちゃんは左足、パフィンちゃんは頭を支えて、鈴は腰を下から持ち上げて!!」


 わたしたちは油とゴムとプラスチックと金属の燃える匂いの充満する煙の中を突っ切るようにして、ライダーさんの身体を持って、坂の上の安全な場所へと運ぶ。


 「よいしょ……よいしょ……」

 

 どこかケガをしているかも知れないので、なるべく揺らさないように、慎重に。


 そしてライダーを安全な場所に運ぶと、ゆっくり静かに地面に寝かせる。すかさずお姉ちゃんがスマホで電話をかける。



 「もしもし、救急ですか、神奈川県三浦市〇〇町〇〇番地の坂の上で、オートバイのガードレール激突の単独事故です……」


 そしてライダーのヘルメットのバイザーを上げたり、手首に指を当てて意識や呼吸、脈拍を確認している。


 「性別は女性、意識はありません、呼吸、脈拍はあります。外傷は……左腕、左大腿部に大きめの擦過傷があります。それに伴う軽度の出血あり、打撲、骨折の有無や内臓の損傷は外見からは確認できません!」


 「オートバイは激しく炎上、救急車、消防車の同時手配をお願いします!」



 てきぱきと適切な報告を、119番当てにするおねえちゃん。


 ……ああ、すごい。これがいつもはポワポワふわふわしているおねえちゃんなの??


 ……あっ、そうか、獣医さんとはいえ、おねえちゃんはお医者さんの娘なんだね。



 「ふう、これでできることはやったわ……」


 おねえちゃんは張りつめた糸が切れるようにうなだれて、大きく息を吐く。

 


 「優衣さん、すごい……」


 「コレが高校生…スゴイでス!」

 

 「カッコイイっすよ優衣先輩!」


 「すごいです!私の中で一気にあこがれの先輩に昇格です!」


 彩先輩、パフィンちゃん、楓ちゃん、チャチャちゃんが一斉に賞賛する。


 「い、いえ…私はただ、看護学校への進学を希望してるだけの、ただの高校生だよぉ。それにまだ、救急が来るまではこの人を見ていないとぉ―」


 そんな事を言っていると、



 「う、うう、ん……」


 転倒したオートバイのライダーが、小さく声を上げた。


 「あ、あれ、私は、確かバイクの前輪がパンクして、ガードレールに…」


 声を上げながら立ち上がろうとする。そして真っ赤な炎を上げるオートバイの方を向く。しかし、


 「あっ、いてて!」


 どこか痛かったのか、軽く悲鳴を上げる。


 「動かないで下さい!大きな擦り傷がありますし、どこを打っているか分かりません、救急車の手配はしてあります。じっとしていて下さい」


 「残念ですけど、オートバイはもう……」


 おねえちゃんが話しかける。


 ライダーは真っ赤に燃えるオートバイを見ながら、しばらく動けなかった。

 

 そして本当に残念そうにつぶやく。


 「ああ、いい写真が撮れたんだけどな……。あの様子じゃ、もうカメラもダメかな……」


 「そうだったんですか……」



 バイクと一緒に燃えているくくりつけられた革製のバッグを見ながら事情を察し、空気が重くなる。


 「あのバイクの横に付いているバッグの中にカメラがあるんですね。もしかしたら、まだ間に合うかも」



 おねえちゃん!?



 「鈴、ティティアンノートを貸して。チャチャちゃん、ナタの代わりに持ってきた中華包丁を貸して」

主人公周りの設定ですー。


飛鳥川(あすかわ) (りん) 本作の主人公。フォッサ女学院中等部生物部に所属する中学1年生。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。

絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。ペットはフクロウのスピックスコノハズク「スピピ」


下連雀(しもれんじゃく) (あや) 中学2年生、生物部。しっかり者の優しい先輩キャラ。ペットは三毛猫の「マーブル」


燕昇司(えんしょうじ) (かえで) 中学1年生、生物部。家はネットカフェチェーンを経営している。

昔のマンガなどに詳しい。ペットはウサギのネザーランドドワーフ「キャラメル」


(フォン) 佳佳(チャチャ) 中学1年生、生物部。中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。

料理が得意。お金が好き。ペットはヨツユビハリネズミの「小太郎」


パフィン・アルエット 中学1年生、生物部。外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。

日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。ペットはパピヨン犬の「パピ」


飛鳥川(あすかわ) 優衣(ゆい) 鈴の姉。フォッサ女学院高等部の高校2年生。ちょっと天然の入った性格。

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作者のもうひとつの作品、
スキル「世界の妹」を修得したら異世界で若おかみになっちゃった!
も宜しくお願いします!!
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