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プロローグ
7月15日、本日も晴天なり。
夏休みを目前に控えた高校生たちはうだるような暑さにも負けず、残る10日ほどの学期をまるでないもののように、8月末までの予定をきゃっきゃと考えあぐねていた。
対して俺は夏のうだるような暑さに負け、机に突っ伏し木の無機質な冷たさを求める。
俺はいたって平凡で、どこにでもいる普通の人間だ。一般的な家庭に生まれ、それなりの教育を受け、似たような友人に囲まれ、何気なく恋をして、悲しい時に涙を流し、楽しいときは声をあげて笑う。
だから怯えていた。この日常がいつか崩れてしまうかもしれないという恐怖に。
それは音もなく忍び寄り、気づいたときにはもう普通はなくなっているのだ。
「西高から転入してきました、有瀬祥子です」
俺の初恋は、4年ぶりに俺の前に姿を現した。