長い長い〇〇
「助けていただきありがとうございます」
金髪長耳の少女が馬鹿丁寧なお礼とともに頭下げた。
「あなた方がいなければ死んでいたとこれでした」
ヤマキはテンプレだ、と思った。
「あの、もしよろしければお礼をした・・・大丈夫ですか?」
ミズカは、気持ちが悪く話を聞くどころじゃなかった。
「もう・・無理、っう・・・」
口に手を抑えながら小走りで草陰に向かい身を隠した。
「あの・・彼女本当に大丈夫ですか?」
「多分、大丈夫かな?」
苦笑いでヤマキは答えた。
ヤマキ達が今いるのはエルフの森。
エルフの村に行く時以外通らないため魔物が多く危険な森であった。そんな森の中、ヤマキ達は魔物に襲われている少女見つけ、ヤマキが『閃光』で魔物を一瞬で倒したのだが、問題はヤマキが倒した魔物がマグベアー(あとで少女から聞いた)という熊に似た魔物だったため、死体がとてつもなくグロくそれを見たミズカが気持ち悪くなり今に至る。
(ミズカさんには少しきつかったかな)
ミズカがグロいのが苦手ということはヤマキは知っていたが、今の今まですっかり頭から抜けていた。
(しかし、困ったなー)
ビギナでは薬草の採取の時に出てくるスライムくらいしか倒していなかったため、死体も残らなかったため問題なかったが、今後は今のような死体が残ることが多くなる、その度にミズカがダウンしてしまうことになってはミズカの精神がもたないと、そこまでヤマキが考えていると、少しぐったりとした様子のミズカが戻ってきた。
「ミズカさん大丈夫?」
「ヤマキ君、大丈夫」
少しぐったりしてるが大丈夫そうに返事をした。
「あっ、私水持ってますよ口ゆすぎに使いますか?」
「いいんですか?」
この世界では飲料水は貴重で、口をゆすぐためには使わない。森の中ならなおさらだ。
「はい、もちろんいいですよ、どうぞ」
ミズカは少女から水の入った木の入れ物受け取り、また草陰に向かった。
「所で、えーとヤマキさん?はどうしてこんな所を通ったんですか?この先は小さい村しかないですよ?」
ミズカが向こうに行くと話を振ってきた。
「その村に行きたいんだ」
「珍しいですね、エルフの村ですよ?何にもないですよ」
「エルフをまだ見たことないからね、エルフがいるだけで充分だよ」
「ますます珍しいですね」
少女が珍しがっているとミズカが戻ってきた。
「お水、ありがとうございます。えーと・・」
「あっ、すいません、まだ名乗ってなかったですね」
名前がわからず困っていると少女は察したのか自己紹介を始めた。
「私の名前は、ジャルナクリトロ・ルーファクロ・スシャドローウ・ヴァ・ミュラナージシシカ・ロッドセナユウチューナ・ギショーリューク・アサギ・オカイガタ・ニセヤヤココナ・エルナです、よろしくお願いします」
長い長い名前を笑顔で。