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そのアイドル、我々の宝につき・2

 ゴブリンたちによる即興バンドとは全然違う、プロの演奏家に交じり歌うミミコ。

 リーダーらしき男の指揮の元、

『L・O・V・E・LOVELYMIMIKO!』

 と色ガラス製ペンライト(光魔法補充式)を持って声援を送る親衛隊。

 そういう細かいルールはわかっていなくても、ミミコの音楽に拍手をしたり足でリズムを取るファンの皆。

 役割はそれぞれ違っていても、会場はひとつになっていた。

 いきなり三曲連続歌い終えたミミコは額の汗をぬぐって手を振った。

「みんな、今日はミミコのライブに来てくれてありがとーっ!」

 というミミコのあいさつに、まるで怒号ではないかと思うほど大きな声援が会場を包み込む。

 そして、ミミコは俺たちを見つけて手を振った。特にアストゥートに向けて。

「アストゥートさんも来てくれてありがとうっ! ミミコの音楽を最後まで聞いていってね」

 と手を振ると、会場から笑いが起きた。

「……一体、なんです? これは」

 明らかにおかしな周りの反応に、アストゥートは戸惑いを見せた。

 俺は次の音楽がはじまる前に、アストゥートにネタ晴らしをすることにした。その方が面白そうだから。

「お前がミミコを攫おうとした理由を、ミミコの合成能力目当てじゃなくて、熱狂的なファンによる暴走ということで片付いた。前回のライブでミミコが言ってたぞ。『アストゥートさんは行き過ぎたところがあったけど、ミミコがデビューする前からのファンだからみんな今度会ったときは暖かく迎えてあげてね♪』ってな。長い台詞だったから覚えさせるのに苦労したうえ、勝手に内容変えやがったけど、まぁそういうことだ」

 本当はミミコの熱狂的なファンだった、ということだけを伝えさせるつもりだったのに。

「一体、何故そのようなことを……私への嫌がらせですか?」

 屈辱だと思ったのだろう。

「一石三鳥だろ? 風鬼委員からしたら、これにより今回の事件が風鬼委員全体の責任ではなく、アストゥート個人の暴走であることが証明できた。俺やミミコからしてみれば、お前が熱狂的になるくらいにミミコの歌が魅力的だったという宣伝にもなって、アイドルデビューされる時客を集めやすくなった。それにお前にしてみても、ロリコンという不名誉な称号が隠れていいじゃないか」

「不名誉などではありません。私は誇りを持って女性の一番美しい時間は十二、三歳までだと断言します。私が彼女の熱狂的なファンだと言われるほうが不名誉です」

 とアストゥートが言ったところで、ライブの檀上にダンジョンボスと魔物二体の組が十組上がった。

 それにアストゥートは驚きを隠せないようで、

「……まさか」

 と呟いて固まった。

「そのまさか――公開合成だよ。ミミコが魔物の合成能力を持っていることは今やこの町にいる多くの人が知っている」

「何故そのようなことを――」

「決まっているだろ。隠そうとしたら暴こう、奪おうとする人間が現れるのは当然だ。それなら機会を平等にし、誰もが合成屋を利用できるようにする。今は宣伝のためにライブ中に公開合成にしているが、今後は合成屋を開き、そこでミミコに合成させるつもりだ。お前は知らないかもしれないが、ミミコの合成には合成メダルっていうものが必要で、その合成メダルはミミコの主になった俺だけがポイントで購入できるようになっていた。だから、ポイントでそのメダルを買って、お金を貰って合成をすればいい。勿論手数料はいただくが、膨大な額にするつもりはない。五パーセントってところだ」

「…………わかりませんね。手数料を取っても彼女を守るための警備費用、奪われた時のリスク等を考えると莫大な利益が約束されているとは思えませんが」

「警備に関しては確かにネックだったが、それは問題ない。ガガオドンの配下が交代で行ってくれる。無料でな」

 ちなみに、店についてはガガオドンから貰った五千万シールを使って既に用意している。今は内装を整えているところだ。

「それに、これはあいつの願いなんだよ」

 そう、これはミミコの願いだ。

 あいつは俺ひとりじゃない。みんなのアイドルとして生きたいって願っている。

 だから、俺はそれを後押ししてやるだけだ。

「だから、お前も合成屋に顔を出せ。客としてなら丁重に扱ってやる」

「……それは助かります」

 そう言うと、アストゥートは立ち上がった。

「最後まで見て行かないのか?」

「ええ。また今度は大事な食糧かのじょたちを連れて来ようと思います」

 とアストゥートは柔和な笑みを浮かべたのだった。


 そして、ライブが終わった後、アドミラはミミコのいる楽屋に行き、他の客は帰り、俺とガガオドンはふたりになった。

「なかなかのライブだった。合成屋は予定通り明後日開店でいいのだな?」

「もちろんだ。警備のほう頼むぞ。もしもミミコに何かあったら賠償金は5000万じゃ済まないからな」

「それこそ無論だ。私が全力を尽くして彼女を守ろう。そして、君は莫大な財産を得られるわけだな」

 とガガオドンが言ったので、俺はニヤリと笑った。

 誰が無償で人助けなんてするか。そもそも、従業員の給料を払うのに僅か五パーセントの手数料でやっていけるわけがない。

 合成メダルの値段は青いメダル(N)が千ポイント、銅のメダル(R)が五千ポイント、銀のメダル(SR)が二万ポイント必要だ。金色のメダル(SR)もあるのだが、それは俺にも買うことはできない。

 つまり、メダル(N)による合成手数料は五十ポイント、二千五百シールということになる。

 合成の時間やミミコの体力を考えると、一日に五十組の合成が可能。全部ノーマルメダルだった場合、約十二、三万シールしか儲けが出ない。

 十分かと思うかもしれないが、家賃やミミコの食糧などを除き、純利益は協賛しているニキティス、リッシュ、シルエッタの四人で割ると、ひとり頭の儲けは一日二万五千シール程度にしかならない。

 だが、ミミコの合成屋を俺ひとりでするのは危険だ。ひとりで利権を牛耳るということは周囲の妬みを買いやすくなる。かといって手数料をこれ以上高くしても同じ結果を産む。

 ならば、簡単に金を稼ぐ方法は――そう、メダルを売ればいい。

 メダルをポイントで買えるというのは事実だが、それ以前にメダルはミミコが生み出すことができる。

 そして、貰った5000万シールのうち、約1000万シールを【合成メダル自動生成スキル】強化に費やした結果、二日あたり(正確には50時間あたり)のメダル生成数が、

【メダル(N)二十枚 メダル(R)十二枚 メダル(SR)三枚 メダル(SSR)一枚】

 となった。あとが販売するメダルの中に、自動生成したメダルを混ぜて卸せば、メダルの原価分は俺の丸儲け。

 五十時間あたり、手数料抜きで十万ポイントプラス金色のメダル(SSR)一枚が手に入る。

 二日で十万ポイントとか、大儲けにもほどがある。二百日ほど(ミミコたちが)頑張れば1000万ポイント、つまりアストゥートから貰った賠償金五億シールが再び俺の手に入るってことだ。

 そのあたり、ガガオドンも気付いているかもしれないが、

「手数料くらいじゃ大した金額にもならないよ」

 と俺はいつもの通り笑ったのだった。

現在の課題 (クエスト)

・2500ポイントを使ってタードを強化しよう

・リザードマンスポーンを設置できるようになろう

・一年後の新人戦に備えよう

・冒険者を迎撃できるようになろう

・妖刀ムラサメの解呪をしよう

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