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その作戦、初期投資必須につき

 混沌の町に同盟メンバーをいつものカフェの個室に集めた。

 今回は私的な用事なので自由参加にしたのだが、いつも通り、ダンジョンフェアリーのニキティス、リッシュ、シルエッタ。そしてボスモンスターである竜人ドラゴニュートのマーレ、動く鎧(リビングアーマー)のアレキサンダー、レインボーバードのレイも揃っている。

 こいつら、実はかなり暇なのかもしれないと思った。

「みんな、よく集まってくれたが、先にリッシュ、ダンジョンプレバトルについて確認したいんだが、いいか?」

「え? うん、私はいいけど」

 とリッシュはニキティスとシルエッタを一瞥した。

 その話についてはふたりは部外者であり、時間を取らせることに対して申し訳ないという気持ちがあったのだろうが、ニキティスは無言で目を閉じて、シルエッタは笑顔で頷いた。

「安心しろ、すぐに終わる質問だ。ダンジョンプレバトルには録画機能があるんだよな?」

「ああ。ダンジョンプレバトルは練習試合、自分たちの欠点について調べるのが目的だからね。そのバトルの内容を映像として残すことがオプションで可能なんだよ」

「確か、その映像って一般公開も可能なったな。そのオプションには申し込んでいるのか?」

「もちろんだよ。あれは追加ポイント無しでできるサービスだからね」

「よし、それがわかったらこっちの問題はクリアだ。さて、三人に集まってもらったのはこれが用意できたからだ」

 と俺はストーンゴーレムの核を三つ、テーブルに置く。

 それが何なのかは三人にはすぐにわかったようだ。

「ストーンゴーレムの核かい、これ?」

「あぁ、手に入れた」

「わかりましたわ。それをいくらで買えばよろしいですの?」

 とニキティスは物分かりのいい態度で言う。

 だが、俺は笑顔で首を横に振った。まぁ、首というか体全体なんだけど。

「お前は何もわかってない。俺が売りたいのはこんな安物のゴーレム核なんかじゃない」

「どういう意味ですの?」

「俺がどうやってこのゴーレム核を手に入れたか? そして、それに伴う俺の計画の協力者になって欲しい。報酬を支払うのは俺の方だ」

 と俺は三人に語った。

 ミミコについて。そして吸血鬼アストゥートについて。

 リッシュとシルエッタの表情が暗くなるが、ニキティスとマーレだけはどこか嬉しそうに見えた。

「つまり、ミミコというミミックを守るために、わたくしたちに風鬼委員を敵に回せとおっしゃいますのね。確かに、魔物の合成は魅力ですわ――」

「某も強い相手と敵対する喜びはございます」

 実は血の気の多いマーレはもう戦う準備満々といったところだ。

 だが、またニキティスは勘違いしている。

「バカ言え、相手は何世代も先輩のダンジョンボスだぞ。しかも、この前俺の屋敷に来たときは太陽の光を浴びても全然平気そうだった。おそらく、ポイント強化でほとんどの弱点を克服し、さらに魔法や肉体、全てにおいてかなり強化を行っている。昨日今日ダンジョンを作り始めた俺たちが協力したところで勝てる相手じゃない」

「あなたらしくない意見ですわね」

 ニキティスが不機嫌そうに言った。

「客観的に、そして主観的に見た事実だ。勝てない相手は勝てないよ」

「それでは、あなたが頼みたいというのは何ですの? まさかそのミミコというミミックを身元の割れていない私たちの誰かにあずかって欲しい――とでも言うんじゃありませんわよね?」

「おぉ、ニキティス、三度目の正直だな。正解だ。お前たちにミミコを預かってほしいって思っている」

 と俺が言うと、ニキティスはテーブルをバンっと叩いた

「あなたこそ風鬼委員を舐めていますわ。魔物を預かるということは、リッシュとのダンジョンプレバトルを利用して引き渡すのでしょう?」

「おぉ、その通りだぞ」

「風鬼委員を舐めているのはあなたのほうですわ。そんな小細工すぐにバレますわよ」

 とニキティスが怒り、黙っていたリッシュとシルエッタも頷いた。

「ニキティスの言う通りだよ、タード。風鬼委員の情報網はおそらくダンジョンフェアリーだけではなく、ダンジョン管理委員にも及んでいる」

「無茶だと思うよ」

 風鬼委員の情報網の恐ろしさはこっちも理解している。

 ミミコが俺の迷宮にいる可能性が高いということ、そして俺が中毒性の高い白い花を売ってポイントを稼いだことがばれている時点で。

「あぁ、すぐにミミコがどこにいるかはバレるだろうな。でも、それでいいんだよ――」

 と俺が言ったところで、シエルが個室に入ってきた。

「みんな、ごめん、遅れて。タード、アストゥート様に手紙を送って来たわよ。ミミコは私たちの迷宮にいるからって」

 とシエルが言ったことで、三人が混乱したようだ。

 俺の迷宮にミミコがいることを伝えたら、自分たちにミミコを預ける理由がない。

 三人は混乱から立ち直ると、大声で笑った。

 そして、俺を見て言う。

「悪いこと考えていますわね?」

「悪いこと考えているね?」

「悪いこと考えているんだね?」

「悪いことを考えていますね?」

 ニキティス、リッシュ、シルエッタに加え、マーレまでもが同じ内容の質問を俺にぶつけた。

「お前ら、一体俺をなんだと思ってるんだ?」

 まるで俺の発現が全て悪いことみたいに言うな。

 むしろ、いいことの方が多いだろ。でもまぁ、

「確かに今回は悪いことを思いついたがな」


 そして、俺は作戦の内容をすべて三組のダンジョンフェアリーとダンジョンボスに作戦の概要を伝えると、

「なるほどね、そりゃとんでもない案だ……私たちには利益しかないや」

 とリッシュは呆れて笑う。

「でも、それにはある程度の初期投資が必要になるんじゃない?」

 とシルエッタが俺の目論見について問いかけると、

「それも含めてこのスライムは企んでいますわ」

 ははは、バレたか。

 生憎、俺たちはほぼ無一文だからな。

「わかりました、そちらは私たちがなんとかします。あなたはなんとしてでもそのミミコというミミックを守りなさい」

「ふたつだけ言わせてもらうよ。ミミコはミミックじゃない、ミミッコだ。それと――さすがにヤバイと思ったらミミコを見捨てるからそうなっても怒るなよ」

 という俺の言葉を果たしてこの場にいる皆は信じたかどうか。

 ただ、

《…………うむ》

 今まで無言を貫いていたアレキサンダーが、空気を読まずにそう頷いたのだった。


 ちなみに、ストーンゴーレムの核は三人に提供。

 もちろん、ひとり1000ポイントで売ってやった。

 これを売る目的で来たのではないが、無料で譲る気は毛頭ない。

現在の課題 (クエスト)

・ミミコをアストゥートから守ろう

・ダンジョンプレバトルの準備をしよう

・2500ポイントを使ってタードを強化しよう

・リザードマンスポーンを設置できるようになろう

・一年後の新人戦に備えよう

・冒険者を迎撃できるようになろう

・妖刀ムラサメの解呪をしよう

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