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その第一村人、謎につき・4

 アドミラという名前の少女に迷宮の場所を教えてもらった私は、手書きの地図を頼りに迷宮に向かいました。

 このあたりに迷宮があるなんて知らなかったから、生まれたばかりの迷宮だろう。アドミラさんもこの迷宮を見つけたのはつい最近だと言っていたから、まず間違いなと思います。


「……せめて食費と家賃分くらいは働いて返さないといけませんね」


 私はそう頷き、地図を再確認する。

 地図には迷宮の内部の罠や出現する魔物について、ベビースライムのいる部屋までですが詳しく書かれていました。

 出現する魔物はゴブリン、クレイゴーレム、リザードマン、ベビースライム。リザードマンは数は少なく、ほとんどがゴブリンかベビースライムだけ。

 まぁ、ベビースライムがいる部屋も入り口から歩いてニ十分くらいの場所ですから。迷宮は入り口付近の魔物は弱く、奥に行くにつれて強くなるというのが常識です。しかも迷宮の奥に行くほど魔物も強くなり、ボス部屋の手前ではリザードマンですら、地上のオーク並の強さを持つこともあります。

 少し前の話ですが、中堅クラスのパーティが冒険者ギルド(冒険者に仕事を斡旋する施設)の依頼を受けて六人で迷宮を探索していたそうです。ワイバーンをも倒したことのあるそのパーティは、あろうことか迷宮のボス部屋手前の部屋で一匹のゴブリン相手に三人殺されて逃走した記録もあるほどですから。

 まぁ、それはかなり昔からある迷宮だったそうなので、このような生まれたての迷宮なら問題ないでしょう。

 地図通りに進むと、目的の迷宮の入り口が見えてきました。

 中には光魔法で作られたらしい光球が浮いています。迷宮ではこうしたもので明かりを照らしている場所も少なくないのですが、中には冒険者が入ると急に光が消え、暗闇の中でも動ける魔物たちが一斉に襲い掛かってくるという罠もありますが、アドミラさんから貰った地図によるとそういう罠はなさそうですね。

 それにしても、なんでしょう。妙ですね。迷宮の入り口部分は元々避難所だったのでしょうか? 藁で編まれた敷布団などもあったり、空の箱が転がっていたり、誰かが住んでいたような形跡もあります。

 まぁ、迷宮の入り口が安全地帯なら、安全地帯にキャンプを張る冒険者も珍しくはありませんが。

 さらに奥に進み、一本道の通路を進みます。

 すると、早速魔物の気配が――ゴブリンです。

 最初にゴブリンですか――この雰囲気、昔聖騎士だったころを思い出します。

 こうしてよく魔物と戦いましたっけ。

 私は腰の細剣を抜きます。

 狭い道での戦闘は突きによる攻撃が一番有効だと、よく司教様に言われましたね。私は真面目で愚直だから、その剣でまっすぐ突き進めと。

 魔王を倒してからも毎日突きの稽古は怠っていません。私の練習の成果、見せる時です。

 と私が突き出した細剣を――

「……へ?」

 ゴブリンは持っていた木の棒でたたき落としました。

 しまった――


   ※※※


 迷宮に入ったラズベリーの様子をスクリーンで観察していた俺たちだったが、思わぬことが起きた。

 ゴブリン相手にラズベリーが苦戦していたのだ。

 武器を叩き落され、拾う暇も与えず後退させられている。

「どういうこと!? ゴブリン一匹くらい、盗賊でも軽くあしらえるのに」

「ポイントだけ見れば妥当かもしれんが……んー、聖騎士というのはやっぱり嘘だったのか?」

「タードの知り合い説が強くなったわね」

「なんで嘘つきだと俺の知り合い説が強くなるんだ?」

 そう悪態をついたとき――ラズベリーの様子が変わった。

『仕方ありません――幸いここなら誰も見ていないでしょう』

 と独り言を言った。

 その直後だった。


 警告音が鳴り響いた。

 俺の迷宮領域には、一日あたりのポイントが100以上の侵入者が入ってきたとき、警告音が鳴り響くように設定している。

 そして、そのポイントの主が、スクリーンの中のラズベリーだった。

「タード、見て!」

「見てるよ……なんてこった……」

 ラズベリーのポイントは872ポイント/日。

 ポイントだけならムラサメやアドミラの8倍くらいはることになる。

 そして、彼女の風貌も大きく変わっていた。

 まず、両腕の肘から先が太くなり、桃色の毛が覆っていて、さらに爪も厚く長くなっている。そして、スカートの中からは尻尾のようなものが見え、耳が頭の上に移動し、まるで犬のようになっている。

「獣化――半獣人か」

「半獣人って、確か獣人の血を残した人間よね。変身することでかなり強くなる希少種――」

 シエルが生唾を飲み込む音が聞こえてくる。

 それからは一瞬だった。彼女の爪が、手が、腕がゴブリンの腹を貫くまでは。

 地竜やソルベほどではないが、間違いなく今の俺たちが敵にしていい相手ではない。

「でも、タード。この強さなら、彼女が聖騎士だったって言うのも本当なんじゃない?」

「いや、逆だ。あいつが聖騎士だなんてありえない――」

 俺はスクリーンを睨みつけるようにつぶやく。

「半獣人は本来絶滅しているはずの生き物なんだよ。教会によって皆殺しにされたんだからな――一体、過去の亡霊が何をしているんだ、こんなところで」

 スクリーンの向こうでは、迷宮の奥へと進む無垢そうな笑顔のラズベリーが映っていた。

現在の課題 (クエスト)

・ラズベリーをもてなそう

・ダンジョンプレバトルの準備をしよう

・2500ポイントを使ってタードを強化しよう

・リザードマンスポーンを設置できるようになろう

・一年後の新人戦に備えよう

・冒険者を迎撃できるようになろう

・妖刀ムラサメの解呪をしよう

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