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その白い花、約束につき・4

 触手、溶解液、接着粘液、超硬化、自切、。そのすべてを駆使し、俺はあるものを作っていた。

 触手を伸ばして、超硬化で硬めて自切で切断。面倒なので卵を白身と黄身を分けずに食べ、また触手を伸ばしてと繰り返す。そして関節部分は固めていない触手を用意し、接着粘液でつなぎ合わせ、細かい部分は溶解液で溶かして調整。

 そして俺が作り出したのは、騎士の鎧のようなパーツの数々だった。


 徹夜で寝ずに作ったからな。なかなかの出来栄えだ。

「ん、タード、できたの? ……うわ、半透明の鎧って気持ち悪いわね」

「スライムの鎧だ。弱点は炎と溶解液。あとハンマーでたたかれたりしたら衝撃はもろくらうから脳震盪とか起こすかもしれない。剣や槍に関しても関節部の脆い部分を狙われたら厄介だ。つまり、鎧としてはそこそこいいけど弱点だらけ……でも、魔法に関してだけ言えば無敵だ。これならあの結界を抜けられる」

 以前、シエルが言ったアドミラを結界から出す方法――俺が吞み込んで外に連れ出すという方法を鎧という形で再現してみた。

「じゃあ、早速ダンジョン領域の追加をするぞ」

「ねぇ、タード。十五万ポイントって凄いのよ……そうだ! 村の結界手前までキラーアントに穴を掘らせて、その穴までダンジョン領域を拡張してから、そのアドミラの村をダンジョン領域にすれば五万ポイントで済む――」

「一体どれだけ時間がかかると思ってるんだ! 俺は一刻も早くあの胸をもみしだきたいんだ。それに、ゴブリンの村、あとその間のアドミラの村の入り口になる場所は元々ダンジョン領域に設定するつもりだったんだよ。ゴブリンの監視と侵入者の察知はどっちも必要だからな」

「……わかったわよ――で、私はこれを着て移動すればいいのね」

「あぁ、それを着て移動しろ」

「ねぇ、タード。これって胸のところがかなり大きいんだけど、どうして?」

「アドミラが着られるサイズに設定しているからな、当然の処置だ」

「うそ、アドミラってこんなに胸が大きいの? タード二人分くらいなら入りそうなんだけど」

 とシエルは言って、胸の部分を強く握った。

「これでも少し窮屈かもしれんぞ」

 一応、あいつから聞いた3サイズを元に計算しているけど、服の厚みとかもあるからな。

 あいつから3サイズを聞いたのは、セクハラ目的もあったが、最初からこの服を作るためだ。

「……なんで同じ女性なのにこんなに不平等なのかしら」

「お前が不幸だからじゃないか?」

「……そうね、私ってやっぱり不幸」

 まぁ、こいつの場合は単純に栄養不足って可能性も強いんだけどな。草しか食べてないし。


 ダンジョン領域の拡張はダンジョンボス部屋のスクリーンから行うことができる。

 ただし、拡張するときに一定(ゴブリン程度)以上の強さの者がいると、領域設定することができない。大勢の人が住む町までダンジョン領域を伸ばし、町ごとダンジョン領域に一気に飲み込む、ということはできないわけだ。

 ゴブリンの村は、ゴブリンが俺の部下であるということもあり簡単に拡張できた。

 村の入り口付近にはワイルドボアがいたため、先にムラサメを派遣して退治させ、またもダンジョン領域に設定。

 ただ、やはりアドミラの村には、アドミラがいるから領域設定ができない。あいつを配下に加えるか村の外に出さないといけないようだ。

 ということで、森の入り口でシエルにスライムの鎧を着させ、ムラサメを持たせて移動させた。俺が頭の上に乗るのもわすれない。

 ただし、頭全体を覆う兜の部分はぎりぎりまで着けさせなかった。本当は途中まで着けて移動していたんだが、

「ねぇ、タード……これ、呼吸用の穴ってあるの? さっきから息苦しいんだけど」

「ほとんどないから窒息するかもな」

「それを先に言ってよっ!」

 と言って結界があるところまで兜を着けずに移動した。

 そして、結界の手前までたどり着く。

「そういえば、シエル。転移魔法は使えるようになったのか?」

「ぎくっ」

「使えないのか」

「く、空間魔法は使えるわよ。ただ、どうしてもね。そもそもタードの理論が正しいって証明はどこにもないわけで――」

「自分の実力の無さを俺に押し付けるな」

「……はい」

 とシエルは項垂れ、そして兜を着けて結界の中へと入っていった。


 結果的に言えば、スライムの鎧は結界を通り抜けることができた。

 関節部に小さな隙間があったから、もしかしたら無理かもしれないと思ったが、やってみるもんだ。

 そして、村に入り、シエルは兜を外した。

「うわ、本当に村ね――いい香り……自然と一体化している感じがするわ。あ、タード、あそこに野菜が実ってるわよ! 食べていいのかしら」

「アドミラが育てているんだ。勝手に食べようとするなんてお前は泥棒か」

「うっ、そこまで言わなくてもいいじゃない」

 シエルは反省したようで、小さな声で「ごめん」とつぶやく。

 ちなみに、俺はこの村にきてアドミラに会う前からトマトを勝手に食べていたのだが。

「あ、でも、タード。泥棒と言えば――」

 とシエルが言ったときだった。


 そいつが走ってきた。血相を変えて。

「よぉ、アドミラ。元気にしてたか?」

「元気にしてた? よくそんなことが言えるな! 返せっ!」

「返せって、何をだ?」

「花の種だよ! 持って言っただろ!」

 とアドミラは、初めて会うはずのシエルのことには目もくれず、俺につかみかかる勢いで言った。

「あぁ、あの花の種か? あれなら売ったよ。全部売っぱらった」

「売った? あの種を――あれがなかったらもう花は育てられないんだ――わかってるのか? あんたも言っただろ、あの花が好きだって」

「ん? 言ったな。でもあれは嘘だ。あんな花、好きどころか大っ嫌いだよ」

 と俺が言ったところで、アドミラはとうとう俺を掴み上げた。

「男への義理か? あんな花に縋り付いて情けない」

「お前に何がわかるっ! あの花は――」

「あの花について、お前は知らないんだろ」

 と俺が言うと、シエルは俺の言葉を止めようとしたが、俺は言った。

 それがどれだけアドミラを傷つけることになるのかを知りながら。

「あの花は麻薬の材料なんだよ」

現在の課題 (クエスト)

・シエルを結界の中に連れて行こう(complete)

・アドミラを結界から出して、胸を触ろう

・2500ポイントを使ってタードを強化しよう

・キラーアント対策を練ろう

・リザードマンスポーンを設置できるようになろう

・村を作ろう

・冒険者をおびき寄せる餌を用意しよう

・ムラサメを強化しよう

・一年後の新人戦に備えよう

・冒険者を迎撃できるようになろう

・妖刀ムラサメの解呪をしよう

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