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そのメイド、農女ツンデレにつき・2

 再度、クワメイドの姿をみる。膝上までのスカート、強調されている大きな胸、金髪のツインテールの髪、全てがマーベラス。加えて美人。

 にもかかわらず、持っているのはクワ。土を耕すクワだ。

 クワメイドだ。

 なんたるアンバランス――ウエディングドレスを着た女性が両手に斧を持って走っているような違和感がそこにある。

「なぁ、なんで人間の言葉しゃべれるんだい?」

 クワメイドが俺から距離を取って尋ねた。

 どうやら警戒しているらしい――全く、最弱スライムに何を警戒しているというのか。

「前世は人間らしいからな……記憶はないけど」

「どうやってここに? 誰も入れないはずだけど」

「質問は交互にしようぜ。次は俺の番だ」

 こっちだけ情報を搾取されるのは癪だからな。

「いいよ、なんでも聞いて」

「なんでクワを持ってるんだ?」

「……最初の質問がそこ?」

「当たり前だろ! 重要なところだ」

「ここの畑、全部あたしが耕してるんだよ……また面積増やそうかと思ってね」

 まぁ、それは予想できたが、全部こいつひとりでしているのか。

「じゃあ、次はあたしの質問だね。どうやってここに?」

「俺のスキルによるものだ」

「なんてスキル?」

「次は俺の番だ――3サイズは?」

「はっ? なんでそんなこと」

「なんでも聞いてって言ったのはお前だろ?」

「先に聞くこともあるだろ? 名前とか」

「名前なんて個人を認証するための記号に過ぎないだろ」

「……何があったんだい、あんたの人生に」

 悪いが俺は生まれて一カ月。人生を語るほど生きていないよ。

「で、3サイズは?」

「……はぁ、87、55、85だよ」

「Fカップか?」

 彼女が巨乳の部類なのは見てわかった。

「それは質問かい?」

「いや、見ただけでわかってるからそれはいい。というより3サイズも見立て通りだ。で、俺の名前を聞くのか?」

「そうだね、次にあんたがあたしの名前を聞いてくれるっていうのなら質問するよ」

「よし、それでいい」

「じゃあ聞くね。っていうより、スライムに名前なんてあるの?」

「あぁ、俺には名前はあるぞ。じゃあ、次は俺の質問だな。今の下着の色は――」

「ちょっと待って、今のは質問じゃないし、それに次はあたしの名前を聞くって約束だろ? なんて下着の色なんて聞いているんだよ」

「それはお前が俺の名前を聞いたらお前の名前を聞くって約束だろ? お前の質問は俺に名前があるのか? だから、さっきの約束は無効だ」

「さすがにそんな屁理屈子供でも納得しないよ。あとさすがに下着の色とかセクハラ質問は無しにしないと、あたしもいい加減に怒るよ」

「ちっ、シエルならきっと騙せたのに」

「誰だか知らないけど、その子にちょっと同情するよ」

 クワメイドはシエルに対して哀れみの言葉をかけた。

 すごいな、会ったことのない人にまで不幸だってわかってもらえるとは。

「俺の名前はバス・タードだ」

「本名? あ、今のは質問カウントしないでよ」

「本名だよ。俺のパートナーのシエルに付けてもらった」

「……さっきの同情は無しだね。そっちも大概だ」

 そして、今度は会ったこともない相手に大概と言われるシエル。さすがは不幸の権化だな。

「じゃあ、クワメイドの名前は?」

「クワメイド……あたしの名前はアドミラ・シオンだよ。種族はニンフ」

「ニンフ!? シルキーじゃないのか? あ、これは質問じゃねぇからな」

「シルキーって、家事妖精のことかい? 違う違う、あたしは正真正銘のニンフだよ。ここにいるのはあたしだけだよ」

 くそっ、やっぱりデマ情報じゃないか。

 ニンフって言えば、歌と踊りが大好きな精霊級の魔物じゃないか。

「じゃあ次はあたしの質問だね。タードのスキルって――ってどこに行くんだよ!」

「用も済んだから帰る……興味なくなった」

 クワ持ってるし、シルキーじゃないし、なんか口調もがさつだし、シオンって名字だけどシエルと被るから面倒だし……ん?

「シオンって、もしかしてガラド・シオンの縁者か?」

 俺はふと何かを思い出し、そう尋ねた。

「え? ガラドを知ってるの?」

「いや、知らん。帰る」

「ちょっと待ってってば! そうだ、夕ご飯食べていかないかい?」

「いらない。帰って草でも食ってる」

 はぁ、せっかく来たのに損したわ。

 シエルの牛乳はお預けだな――というか、腹いせに牛乳じゃなくて臭いと評判のケンタウロス牛乳でも飲ませるか……いや、あいつならそれでも喜んで飲みそうな気がするな。

 そうだ、土産といって草を持って帰ろう。うん、それがいい。

「そうだ、この辺に美味い草でも生えてないか? シエルに土産で持って帰る……げっ」

 振り返ると、アドミラが泣いていた。

 俺が振り返ったのに気付いて慌てて涙を拭くが、ばっちり見た。全てが手遅れだ。

 こんな涙を見てしまったら、

「まぁいいや、帰ろ!」

 別にどうでもいいや。

「えぇぇぇぇっ! ここはあたしの涙に気付いて帰るのを辞めるところじゃないの? いや、泣いてないけどさっ!」

「泣いてないんだろ? なら帰るよ」

「どれだけ帰りたがるのさ!」

「そんなに俺に帰ってほしくないのか?」

 と俺はやれやれとため息を漏らした。

「ちょっと、夕食を作りすぎたから、もったいないってだけで」

「あぁ、確かに、ゴミが出るのはもったいないよな。なら、こうしよう」

 と俺は笑みを浮かべて、

「帰ってほしくなければ金目の物を寄越せ。もしくはその胸を触らせろ」

 と交渉に打って出た。


 結果、屋敷の調度品をいくつか貰うことになった。

現在の課題 (クエスト)

・アドミラの料理を食べよう(new)

・アドミラの話を聞こう(new)

・金目の物を貰おう(new)

・謎のメイドから話を聞こう(complete)

・1500ポイントを使ってタードを強化しよう

・シルキーを仲間にしてメイドにしよう(failure)

・キラーアント対策を練ろう

・リザードマンスポーンを設置できるようになろう

・村を作ろう

・冒険者をおびき寄せる餌を用意しよう

・ムラサメを強化しよう

・一年後の新人戦に備えよう

・冒険者を迎撃できるようになろう

・妖刀ムラサメの解呪をしよう

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